絵の具のお話です。水で溶いて描いていく絵の具には、水彩絵の具とアクリル絵の具の2種類があります。両者の違いは、顔料を支持体に定着させる固着材にあり、水彩絵の具はアラビアゴムを糊分としているのに対して、アクリル絵の具はその名の通りアクリルを糊分としています。水彩絵の具は乾いても水に溶けてしまいますが、アクリル絵の具は乾くと水に溶けないという性質があります。
一方、絵の具の塗りによっても、2種類のものがあります。それが透明水彩か、不透明水彩かということです。どちらも基本的な作り方は変わりませんが、透明水彩は透明度を上げるために、顔料を少なくしてアラビアゴムの量を多くし、不透明水彩は不透明にするために、顔料比率を高めてアラビアゴムを少なく配分して作られます。この顔料の比率の違いにより、絵の具の塗り、すなわち表現が変わってきます。
透明水彩は、色を重ねて塗ると、下の色が透けます。にじみやぼかしといった手法を活かすことができ、緻密で繊細な表現に向いています。
これに対して不透明水彩は、色を重ねて塗ると、下の色が隠れます。にじみやぼかしは少なく、均一でマットな塗りの手法による、重厚で力強い表現に向いています。これはアクリル絵の具についても当てはまることです。
英語では、透明水彩絵の具のことをWater Color、不透明水彩絵の具のことをGouacheと呼び、特に不透明水彩絵の具はこの「グアッシュ」という名前が日本でも広く定着しています。アクリル絵の具の場合も、透明アクリル絵の具はそのままAcrylic、不透明アクリル絵の具はAcrylic Gouacheとなります。
では、中学生の時に美術の授業で使っていたポスターカラーは、どこに分類されるのでしょうか。結論から言うと、不透明水彩絵の具になります。ただし、グアッシュよりも安価な顔料や固着材を使用することで、低価格となっています。学生の美術教育や大量使用が必要なポスター、アニメーション制作などに適しています。しかし、安価な材料を使用しているため、耐久性は低く、永続的に保存したい1点ものの美術作品の制作には向いていません。自分の作品を後世に残したいと思うのであれば、使わない方がよいでしょう。
もう一つの疑問は、小学生の図工の授業で使っていた「ぺんてるエフ」や「サクラマット」などの水彩絵の具は、透明と不透明のどちらに分類されるのかということです。こちらも結論から言うと、どちらにも当てはまるということになります。水の量を調整することによって、透明水彩のようなにじみやぼかしを活かした表現も、不透明水彩のような厚塗りの表現も、どちらも可能になっているのが、これらの水彩絵の具の特徴です。初等教育において、いわばオールインワンの水彩絵の具を使用することで、幅広い表現を身に付けられるようになっているわけです。
以上をまとめると、絵の具は下のようなマトリクスに分類されます。
絵の具のチューブを見てるだけで、あれこれと創作意欲が湧いてきます。どんな絵を描こうかと、わくわくしてきます。それぞれの画材の特徴を最大限に活かした表現をしていきたいものです。
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