タブロー画>Tableau

タブロー画について

タブロー(Tableau)とは、フランス語で絵画のことです。さらに詳しくは、板やカンヴァスに描かれた絵画を指し、額縁に入れてさまざまな場所に展示できるという点で壁画と異なる形式になります。

また、もう一つの意味として、習作と区別し、画家の意図や描写の完結した作品を指すこともあります。

簡単にいうと、油彩画やアクリル画などいわゆる「洋画」のことですが、より適切に言い表すことができるため、このカテゴリーに「タブロー画」という用語を使用しています。

さて、私が初めて油彩画を描いたのは、中学3年生の時でした。幼少の頃から油彩画が身近にあり、自分もいつか描いてみたいと憧れを抱いていました。その時の感動を、当時次のように記しています。

この日、僕は人生で初めて油絵というのをやった。戸惑いながらも何とか見よう見まね、そして自分の感性を頼りに色をぬった。やはり最初は上手くいかない。でも、僕はこの油絵の魅力にとりつかれてしまった。これだったんだ。僕が探し求めていたものは。これから油絵を本格的にやりたい。藝術家として。

2000年5月15日の日記

このように衝撃的な出会いであった油彩画ですが、中学時代の作品は2点だけで、本格的に描くようになったのは高校生になってからです。芸術科目で美術が設置されていないため、美術の教員がおらず、まったくの独学でしたが、技法書を読んだり、画集でさまざまな画家の作品を見て真似たりしながら、高校通算で11点の油彩画を描きました。

大学時代は、油彩画制作が最も充実していました。入部した美術サークルは、講師がいたり全体練習を行うなどのアカデミックなものではなく、自由に制作する活動方針だったため、相変わらず独学による自分勝手な油彩画でしたが、それでもこの時期に自分の作風を確立することができました。大学通算では26点の油彩画を描き、点数が一気に増えました。それを可能にしたのが、マツダの「クイック油絵具」という油絵の具です。乾燥に時間がかかるという油彩画の弱点を打ち破り、描いた翌日にはほぼ絵の具が乾いて、重ね塗りを躊躇なく行えるのは革新的であり、水彩画や素描と変わらないペースで次々に油彩画を描いていきました。

社会人になってからも、自宅で何点か油彩画を描いていましたが、狭い室内だとにおいがこもってきつく、汚れを気にしながら制作しなければならない、絵の具や油の後始末が大変であるなど、アマチュア画家の多くが直面する困難のため、2年ほどで油彩画の制作は断念してしまいました。

代わりに見出したのが、アクリル絵の具です。大学生の時も、看板やプラカードなどの製作の際に使用していましたが、自身の創作方法として本格的に取り入れたのは2013年からです。この画材の特徴はなによりも速乾性にあり、制作ペースが大幅に上がりました。油絵の具の持つ色の深さも捨てがたい魅力ではありましたが、アクリル絵の具の明るくマットな仕上がりとなる色の塗りも、新たな味であると気付き、以来制作を続けています。

私のタブロー画の作風は、ムラやかすれのない均一的な色の塗りと、くっきりと太い輪郭線によって明確にされた形に大きな特徴があります。写実的でない、すなわち現実非再現的でイラストタッチな絵画は、技巧的に優れたものでは決してなく、子供じみた塗り絵のように稚拙で未熟な落書きです。それでも、自分自身がこの作風に満足し、美味い絵であると感じているので、これからもこの作風で描き続けていきたいと思います。

中学時代

tbl001《観葉植物とボウル》2000年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

記念すべき油彩画第一作。私のタブロー画はここから始まりました。

油彩画の制作で形をとる場合、鉛筆や木炭で描線を引くのではなく、溶き油を多めに使ってサラサラと絵の具を垂らす「おつゆがき」という方法があると知り、とても驚いたことをよく覚えています。この作品も、イエローオーカーの絵の具で「おつゆがき」して鉢植えの観葉植物とボウルの線を引き、乾かしてから色を重ねていきました。形の複雑なモティーフだと難しいので、最初はこれくらい単純なものがちょうど良いでしょう。

とはいえ、デッサンもまともにできない下手くそな中学生が、いきなり油絵を描くのはとてもハードルが高く、すぐに壁にぶち当たってしまいます。そこで、同じモティーフをまずは水彩で描いてみることにしました。当時はそれを「修行」と呼んでおり、形や色使い、タッチや構図などがつかめていいのではないかと考えたのです。当時の日記を読んでみると、下手くそがそれなりに試行錯誤、創意工夫してなんとか油絵の具という未知の画材を使いこなそうと奮闘していた様子がうかがえます。

wgd116《観葉植物とボウル》2000年、水彩/紙、38.0×27.0cm

油絵が納得いかなかったので、もう一度感性を鍛えようと、デッサンをした。よく見て描くという行為を考えたらあまりしていなかった。とてもいい経験になった。

2000年5月18日の日記

昨日のデッサンに色をつけた。今までのように絵の具をそのままたたきつけるのではなくて、水で溶いてうすくうすくつけていった。作品の雰囲気でタッチをかえるのはいいことであろう。

2000年5月19日の日記

昨日の絵に、今度は少しこく溶いた絵の具をぬっていく。あせる必要はない。ただたんたんと心に映るままにぬればいい。

2000年5月20日の日記

少し前に描いて途中だった観葉植物とボウルの絵に手を加えた。九分完成といったところだ。目の前にあるモデルに、自分の思った色を出し、画用紙にそれを写していく。色は2つ。本物と似ているか否か。似ていればそれまでで、そうでなければ、似るまで色をぬる。心のままにぬる。迷いも捨ててぬる。何もかも忘れて、目の前のモデルだけに集中して、ぬる。

2000年6月5日の日記

再び油絵に挑戦。今度は水彩画での「修行」が効果的だったのか、なかなか順調なすべり出し。これが油絵なのか。

自分の道具で絵を描いたり、箱に入れたり、片付けたり、準備して、いっぱしの画家気どりである。でもそれでいいんだ。僕は藝術家だと思い込むことが大切なんだ。

2000年6月12日の日記

油絵をやるが、葉と鉢のタッチが違ってしまった。アンバランスでいやだ。

2000年6月19日の日記

そして油絵は完成した。初めてにしては上出来だと思う。バックの色を最後に思い切ってブルーにしたのがいい。これからも油絵を描いていきたい。

2000年7月10日の日記

水彩画ではグリーンだった背景の色を、油彩画では濃く深いブルーに変更することで、観葉植物の葉の明るさが際立つなど、「修行」の成果が出ています。

中学生のうちに油絵を描きたいという願いを叶えられたということで、この作品はとても大切なものです。

tbl002《自画像》2000年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

油絵の二作目。静物画の次は人物画、自画像に挑戦しました。教則本を読んで、「フィキサチーフ」というものをスプレーしてコーティングすれば、鉛筆や木炭などで描線した上に油絵の具を塗れるということを知り、早速試してみたものです。

人物画、しかも鏡を見ながら描く自画像ということで、とても難しかったです。特に、立体感のある鼻が上手描けなくて、何回も何回もやり直しました。この人物画における鼻という難問には長らく苦しめられ、そして後に、「鼻を描かない」という省略法を獲得することとなります。

自画像を描くことにした。さあやるぞと始めたが満足がいかない。油絵がこんなにも難しいとは。

2000年9月18日の日記

自画像が描けない どうしても描けない
鏡を見るのが恐い
鏡の中で笑っても
そのすぐ後ろにいる悪魔の存在に
怯えている
悪魔のせいで僕は鏡の中の自分を
凝視できない
だから自画像が描けない
たとえがんばって鏡を見つめても
筆を握る手は悪魔に掴まれて
思うように描けない

「自画像が描けない」『第2冊ノート』より

キャンバスの前では正直でなくてはならない
今までの過去を全部さらけ出さなくてはならない
でも嘘つきな僕は
キャンバスの前でも嘘をつく
嘘でごまかそうとする
つくり笑いばかりする
だから僕は
自画像さえ描けない

「嘘つきな絵かき」『第2冊ノート』より

今日は何とか自画像が描けた。自分をよく見つめたからかもしれない。肌の色も1つ1つが納得のいくものになった。少しずつ絵の中の人物が僕になっていく。それを自分自身で行うのだ。これほど楽しいことはない。油絵がますますおもしろくなってきた。

2000年9月19日の日記

中学3年生の9月というと、そろそろ進路相談や受験などの話題が本格化する頃で、悩みや不安も増えてきます。そのような時に、鏡の中の自分をよく見つめ、対話し、向き合い、その姿を描いていくという行為は、とても重要なものだったのではないでしょうか。

中学時代は結局油絵を2点しか描けませんでしたが、この作品は卒業アルバムのポートレートのような、思い出を焼き付けたものとなりました。

高校時代

tbl003《菜の花が広がる季節》2001年、油彩/カンヴァス、31.8×41.0cm

高校に入学して初めて描いた油彩画です。春のなんともいえないふわふわした雰囲気を風景として表現したかったのでしょうか。写真からスケッチしたものです。

wgd108《菜の花が広がる季節》2000年、水彩/紙、27.0×38.0cm

前年に同じ構図で水彩画を描いており、その「修行」の成果を発揮しました。

tbl004《ラベンダーの海》2001年、油彩/カンヴァス、31.8×41.0cm

高校に入学して二作目。ゴールデンウィークが明けた頃から描き始めたと記憶しています。ラベンダーの紫色が思うように塗れず、苦戦しました。前作が菜の花、今作はラベンダーとうことで、時期の違いを空の色で表現しています。

tbl005《つつじヶ丘公園》2001年、油彩/カンヴァス、31.8×41.0cm

高校に入学して三作目。地元の観光名所である「つつじヶ丘公園」を描いたものです。これにて、「風景画三部作」が完成しました。黄色、紫、ピンクと色彩のバランスもとれています。

この頃は、厚塗りの筆致で花を表現しようと試みています。

tbl006《猫》2001年、油彩/カンヴァス、45.5×38.0cm

実家で飼っていた猫を描いた作品。「風景画三部作」を描き終えた後の7月頃から夏休みを挟んで9月に完成させたものです。後ろ足の形が不自然で、三毛の色とフローリングの床の色が同化しており、色彩表現でも拙さが出てしまっています。

tbl007《巨木が倒れる時》2001年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

2001年9月11日、アメリカ同時多発テロが発生。ビルが炎と煙をあげて崩れゆく映像を見て何かしなければという衝動に駆られて、急いで絵を描きました。前作のtbl006《猫》を完成させた後の9月末くらいから描き始め、その間にも、米軍はアフガニスタンへの報復を開始してと、状況は刻一刻と変化していきました。その年の11月にあった市の美術展に出品しましたが、田舎では誰も見向きもしませんでした。

当時はTwitterもinstagramもFacebookもYouTubeもありませんから、新聞記事の写真を基にしたのですが、手前の建物や植え込みの描き方が上手に処理出来ていないため、ツインタワーの巨大さが全く表現できていません。思い切って前景は省略して、双子のビルだけを描くべきでしたが、これは技巧的な出来栄えは度外視して、とにかく今起こっている出来事を記録に残さなければならないという思いで描いたものです。それほど衝撃的な事件でした。

タイトルの「巨木」はアメリカのことを指していて、ビルの崩壊に超大国という巨木が倒れる様子を重ね合わせています。その後のアメリカの混迷、凋落を予言しています。

tbl008《いつかきっとエジプトへ》2001年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

市の美術展と高校芸術祭への出品を終えた後、12月に描いたものです。ムラやかすれのない均一で平面的な色の塗りと、黒く太い輪郭線という、後の私の作風となる特徴が、早くもこの時期に見られます。

中学生の時の美術部にエジプトが好きな後輩がいて、ツタンカーメンのイラストを描いてプレゼントしたことがあり、それを基にしています。タイトルもその後輩の将来の夢に由来します。イラストを油絵で描くとどうなるかという試みであり、それまでの写実的な風景画とは全く異なる、実験的要素の強い作品です。

この作品で手ごたえを感じ、後にtbl0《苦い夏》tbl013《自画像》を描くようになり、そして、大学時代以降の作品へと展開していきます。そのような意味で、これはとても画期的な作品となっています。

tbl009《自画像》2002年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

中学以来2年ぶりの自画像です。2002年に高校2年生となり、自分を見つめたいと描きました。相変わらず鼻の描き方が下手で、唇もひん曲がっています。頭の上部が途切れているなど、構図への意識も低く、呆れてしまいます。

文化祭の様子、1番右に加筆・修正前の本作が展示されている。

なお、本作は、初出品となったその年の文化祭の後、背景の色をピンクからオレンジに変え、肌の色も濃くするなど、加筆・修正を行っています。今見ると、変更前の方が良いように感じられ、余計なことをしたものだと後悔しています。

tbl010《苦い夏》2002年、油彩/カンヴァス、53.0×45.5cm

高校2年生、17歳の夏、世間一般の基準からすると青春真っ盛りの時期に描いた作品です。

制作のきっかけは、この年の5月頃、散髪に行って髪をつんつん立たせたら、クラスメイトから「パイン」と馬鹿にされたことです。

髪を思い切り短くして
新しい靴を買って
外見が変われば
きっと中身も変われるはず

2002 5 19

「CoyaNote2002017」『第3冊ノート』より

眉をひそめると
そこに痛みが走る
首筋には血の塊が
全てこの長くてうっとうしい髪のせいだと
散髪に行った

「散髪に行くのは解決になるのか」『第3冊ノート』より

上記に掲載したテキストにあるように、本人としては気分転換やイメージチェンジのつもりで行ったことが、嘲笑やイジリの格好のターゲットとなってしまったのです。

また、当時自分の絵の下手くそ加減に嫌気が差しており、自己に対するやり場のない憤りを自虐的に描きました。

写実的な表現が出来ないと嘆いてたところ、とある雑誌の挿絵を見て、絵はなにも本物そっくりに描かなくても良いということに気付き、前年のtbl008《いつかきっとエジプトへ》で掴んだ手ごたえを展開させたものになります。パイナップルとスイカで人体を構成させる手法は、当時読んでいただまし絵に関する書籍の中で知ったアルチンボルドの影響が大きいです。

自分の顔にナイフやフォークを突き刺し、パインと罵られた髪を切り落としてしまいたいという自己嫌悪が表われています。苦いだけで楽しくない青春や夏もあるという絶望をタイトルに込めました。

高校時代の代表作となるものです。

tbl011《最近の高校生》2002年、油彩/カンヴァス、45.5×38.0cm

ここは異常で狂った雄猿の集まる所
どの猿も馬鹿みたいにキーキーうるさく騒ぐ
黙れ 黙れ 黙れ 黙れ 黙れ
全員今すぐに消えろ
猿はみんなズボンのスソをまくり上げて
毛深くて太くて汚いスネを見せている
首輪のように色とりどりのタオルを巻いている
はがれ落ちる皮のようにシャツを出している
そして日本人であることのアイデンティティーを捨てるように
髪を茶色や金に染めている
馬鹿な猿どもには
エサを与えるな
雌猿との接触も断ち切れ
そうすればあのクソザルは
いずれ死ぬ
みにくい死体となる時も
きっと騒ぐだろう
騒ぐな 黙れ
○○高校の最低下等クソザルども

「CoyaNote2002055」『第3冊ノート』より

学校で傘をパクられた怒りから、ウェイウェイとオラついているスクールカースト上位の陽キャを揶揄した作品です。

上記のとおり、ズボンのスソをまくり上げて毛深くて太くて汚いスネを見せ、お洒落だか血行促進だか知らないが、ネックレスやブレスレットを身に着け、穴なし無調整のカジュアルベルトとスニーカーソックスで剥がれ落ちる皮のようにシャツの裾をズボンからはみ出させ、授業中でも平然と携帯電話を使用し、くちゃくちゃとガムを噛んでは道端に吐き捨て、缶ジュースの飲み残しをまき散らし、髪を茶色や金に染めている姿を、醜く描きました。スクールバッグの描写には特に力を入れました。

当時流行していた耳に引っ掛けるタイプのイヤフォンはMDウォークマンに繋がっており、90年代J-POPを聴いているのでしょうか、手にしている電話はスマホではなく当然ガラケーです。時代を感じさせますね。

tbl012《彼岸花》2002年、油彩/カンヴァス、45.5×38.0cm

小学校の国語の教科書に載っていた『ごんぎつね』に出てくる彼岸花のことがずっと気になっていて、いつか描きたいと思っていました。花びらの部分、茎の部分、それぞれ色の塗り方に苦戦し、結局立体感のないのっぺりとした描写になってしまいました。背景の処理の仕方も雑で、描くたびに自分の無能さにいら立っていたことを覚えています。

tbl013《自画像》2003年、油彩/カンヴァス、27.3×22.0cm

高校3年時唯一の作品。コンプレックスを抱いている鷲鼻と極太眉毛は前年の自虐絵画tbl010《苦い夏》にも見られますが、本作ではそれらをさらに強調するために横顔にしています。どうせ写実的な表現など出来ないのだからと端から諦めて、肌はパイナップルのような色にして、黒々とした太い輪郭線を引いてあります。tbl008《いつかきっとエジプトへ》tbl010《苦い夏》で獲得した表現手法を、さらに先鋭化させています。

受験勉強などで忙しく、これが高校時代最後の作品となりましたが、その後の展開を予言する作風です。

大学時代

tbl014《夕焼け空》2004年、油彩/カンヴァス、33.3×24.2cm

大学に入学し、美術サークルに入部して初めて描いた油彩画。赤と青の対比がポイントです。

さっそく絵の続きをやった。前回よりもこんもりと厚めに絵の具をぬったら、青い空と木はそれらしくなった。あとは夕焼け空をどうするかだ。

2004年6月7日の日記より

tbl015《河口湖》2004年、油彩/カンヴァス、27.3×41.0cm

美術サークルで河口湖に合宿に行った際に描いたもの。初めてP号カンヴァスを使用してみて、F号とは異なる慣れない比率に戸惑いました。橋桁や山の部分の描写が悲しいほど拙いです。

それで、部室で描いたのだが、やはりうまくいかない。もう油絵はやめてしまおうかと思ってしまう。

2004年10月10日の日記

部室で油絵の続き。やはりうまくいかない。せっかくいい色ができても、上からなぞってその色を消してしまい、なだらかで何のおもしろみも美しさもないのっぺりとした色にしてしまう。

2004年10月11日の日記より

中途半端になっていた油絵を強引に完成させた。不満な部分がいくつもあるが、時間という制約には勝てない。

2004年10月23日の日記より

tbl016《オーロラ》2004年、油彩/カンヴァス、24.2×33.3cm

サークルでサンシャイン60のプラネタリウムに行った際に観た映像がモティーフ。グラデーションがきれいに塗れずに、がたがたしていて全く神秘的なオーロラではありません。

練習室を借りて作品を描いたのだが、描く前の方がよかったような気がする。描けば描くほど、描きたいものから遠のいていくような気がする。

2004年11月15日の日記より

tbl017《冬の並木道》2005年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

1月下旬から2月にかけての寒い時期の戸山公園を描きました。冬枯れの、葉が一枚もない裸木の並木道と、そこを散歩する歩行者の風景を描きました。木だけだと絵に締まりがないので、人物を小さく描くことで、相対的に木を大きく見せています。寒さで人物の頬が紅くなっています。

wgd152《冬の並木道(色鉛筆Ver.)》2005年、色鉛筆/紙、26.0×18.5cm
wgd153《冬の並木道(水彩Ver.)》2005年、水彩/紙、26.0×18.5cm
wgd154《冬の並木道(点描Ver.)》2005年、水彩/紙、26.0×18.5cm

油彩画の前に、色鉛筆や水彩による「修行」をしました。

スケッチした時は風が強くてとても寒かったのですが、冬の存在を全身で感じられてなかなかよかったです。また、この絵をスケッチしている時に、「木の描き方」を発見しました。今後に応用していきたいです。

戸山公園に行って、なにか絵になりそうな風景はないかとさぐり歩いたが、なかなかめぐり会わなかった。そのかわり、枯れ木をスケッチして、前から描きたかった題材と組み合わせてみた。いろいろとかなり手こずったけれど、とりあえず完成というか、下描きはできた。木というものは、数学の時間にさんざんかいた樹形図をもとにすると描けると今日気づいた。それだけでも、寒い中公園でスケッチした意味はある。ウダウダしてないで、外に出るべし。

2005年1月30日の日記より

部室で、一昨日ペン入れまで終わっていた絵に、色鉛筆で彩色した。やはり彩色するとなかなかよい。ちょっとしたタブローになった。冬の並木道とでも題をつけようか。

2005年2月2日の日記より

今日も部室で、冬の並木道の別のタッチでの制作。トレーシングペーパーの表と裏をまちがえてしまったので、もうコピーができない。

一つは点描風のタッチ。原色を点で打っていって、なかなかよかったが、次の段階で別の色を打つと、どうも点描らしさがうすれてしまった。混色の仕方、どれくらい余白をつくるか、点の打ち方に研究の余地がある。

もう一つはサラッと引いた、透明水彩風のもの。こちらも余白部分が残ってしまった。いずれにしても、これは準備段階にすぎず、もっとすごいのを描きたい。

2005年2月3日の日記より

部室で、6号キャンバスに《冬の並木道》の鉛筆描きをした。木の感じや散歩人の感じはなかなかよくできたと思う。フィキサチーフもかけてきたので、明日久し振りに油絵を描いてみよう。そして今作から、新たな表現技法としての「点描」に挑戦してみたい。そしてその技法を、油絵での主流にしてみたい。点描をする際のポイントは、なるべく小さく細かく打つことだろうか。とにかくやってみよう。夜に鉛筆デッサンをやってみたが、こちらはやはりうまくいかず。

2005年2月26日の日記より

部室から油絵の道具を持ち出して、練習室を借りて、昨日鉛筆描きをした絵に彩色を始めた。今年初の油絵、久し振りの油絵である。冬に油絵を描いたことは、今までなかったはずだ。描き方も今までとはちがって、まず大まかに色をおつゆ描きでベタぬりして、次に原色で点を打っていく点描法をやってみた。最初のうちはだんだんよかったのだが、最後の方になると点が大きくなって、もはや点描でなくなってしまった。何がいけなかったのか。研究しないと。

2005年2月27日の日記より

2日続けて練習室を借りて、油絵の続き。もはや点描ではなくなってしまったが、くじけずに原色をトントンと打っていく。キャンバス上で色が混ざり合って、なんともいえない色になっていく。地面や空はなかなかの感じになったが、ビルはもうちょっと改良が必要。木の枝が見えなくなってしまうぐらいびっしり点というか色を打ってしまったので、最後に一気に木を描いていこう。

2005年2月28日の日記より

一日のインターバルをおいて、再び油絵を描く。人物は、単体としてはとてもよい感じの色になったのだが、背景とどうにも合わないので、変えてしまった。しかし、とても参考になる色であった。

木の枝の復権を開始した。しかし、どうも雑になってしまって、木の上昇するような感じができなかった。次回手直しをして、完成させよう。やはり思っていた通りにはできなかった。

2005年3月2日の日記より

今日も練習室を借りて、《冬の並木道》をどうにか完成させた。最後の方はもういやになって適当にやったような感じだ。当初思い描いていたタッチとは、まったく異なるものになってしまった。絵の具は相変わらず混ざってにごるし、いいことないね。もはや作品とも呼べそうにない。激しい自己嫌悪。ヘタクソ。再び、絵を描く気が失せてしまう。

2005年3月5日の日記より

tbl018《孔雀》2005年、油彩/カンヴァス、45.5×53.0cm

僕はもう絵が描けなくなってしまったのか?本当に何を描いていいのかが分からない。何を描いても、そこに意味を見出せない。こんなものを描いて何になるというのだ。もう本当にだめだ。

2005年5月11日の日記より

絵の家庭教師の子どもが描いていて、おもしろそうだからクジャクを描きたくなったのだが、どうもうまくいかない。小学生についに負けるのか。

2005年5月20日の日記より

そして突然孔雀を描こうと思いつく。授業で孔雀明王という、なかなかおもしろいものをやったから。すぐに感化される単純なやつ。

2005年5月21日の日記より

10号キャンバスにクジャクの絵を描き出す。なかなかよい。色がとてもカラフルでよい。改善すべき点はまだまだたくさんあるが、とりあえず一枚描くものが決まると、とたんに生き生きとしてくるものだ。今日の僕は生きている。

2005年5月25日の日記より

クジャクの絵を描いたが、やはり描けば描くほどダメになっていく。そしてもはや最後まで描き上げる気力が失せてしまう。もう本当にだめだ。

2005年5月28日の日記より

油絵は一応完成したが最悪のできでもはや立ち上がれない。

2005年6月1日の日記より

この頃はスランプというか、何を描けばよいかわからない状態に陥っていて、この孔雀というモティーフに辿り着くまでに何回もカンヴァスに描いては塗りつぶしてを繰り返し、ようやく完成させた作品です。アルバイトをしていた絵の家庭教師先で、生徒が「動物園で見た孔雀の絵を描きたい」というリクエストを受けて指導をし、そこから自分でも描いてみたものです。また、大学の授業で「孔雀明王」というものを学び、造形的な興味を持ったことも影響しています。

羽を広げた孔雀の力強い姿を表現しています。青と緑それぞれの孔雀が映えるように、背景とうねりの紋様の色のバランスを整えています。流れるような羽の動きとその後ろの筆致に、苦しみの痕跡がうかがえます。

tbl019《御茶ノ水駅》2005年、油彩/カンヴァス、24.2×33.3cm

モデルとなった風景

JR中央線御茶ノ水駅の風景を描いたもの。普段の生活圏内にはなく、大学のサークルで江戸川の花火大会に行く中に乗り換えで立ち寄った際に見た光景がなぜか気になり、描きました。

川の水面の様子や、特徴的な形をしている鉄橋の隙間からのぞく風景などに力を込めました。遠景のビル群を実際にはないようなビタミンカラーで塗ったら、全体的にほんわかしたファンシーな雰囲気になりました。

バイトのあと、部室へ行って、久し振りに油絵をやる。以前に買った、水で溶かせる油絵の具Duoというのを試してみたが、とてもよい。準備、後片付けが楽だし、汚れないし、水彩感覚で描ける。それでいて、油絵のタッチも出せる。どうしてもっと早くから使わなかったのだろう。これなら短時間でたくさんの作品ができそうだ。

2005年9月25日の日記より

なお、tbl019《御茶ノ水駅》tbl020《奏でる》tbl021《赤バッテン》の3作では、画材として、水で溶かせる油絵の具「DUO」を試験的に使用しました。確かに溶き油特有のきついにおいはせず、道具の後片付けも楽で当初は気に入っていましたが、肝心の発色や絵の具の塗りの様子が満足いかず、その後定着することはありませんでした。

tbl020《奏でる》2005年、油彩/カンヴァス、53.0×45.5cm

モデルとなった写真

アコースティックギターやブルースハープ、タンバリンなど自分の愛用の楽器をモティーフに描いたもの。モデルの写真では展覧会のチラシが貼られてありますが、サックスを吹く人に変えてコンサートのポスターに仕立てました。ただし、実施に演奏したことのある人の話によると、サックスの持ち手が逆さまだそうです。

ギターのボティーの色のグラデーションに苦しみました。また、影を描いていないため、モティーフが接地せずに浮遊しているように見えてしまっています。静物画の描き方に難があります。

tbl021《赤バッテン》2005年、油彩/カンヴァス、60.6×50.0cm

モデルとなった写真

普段使っているリュックを描いたもの。大学生というとPORTERの黒とオレンジのバッグを使ってる人が多いですが、私は同じ𠮷田カバンでもLUGGAGE LABELの方を愛用してました。ゴツいフォルムと、そしてこのバッグのシリーズを指す代名詞の「赤バッテン」と呼ばれるマークが気に入ってました。

黒光りするバッグの色彩を描くのが難しそうだと最初は思っていましたが、実際にやってみると意外とうまくいきました。モデルをよく見つめることが大事です。また、画面を縦4×横4の16マスに分割し、それぞれのマスの中の形に集中し、線をパズルのように繋げて全体的に1枚の画面にまとめるという手法をとったところ、複雑な形をしているカバンも歪むことなく、バランスを保ってしっかりと描くことができました。以降、この手法はタブロー画制作で欠かせないものとなりました。

白シャツとブルージーンズに、赤バッテンを背負って写真を撮った。それを現像して、世界堂で12号もの大きなキャンバスを買って、下描きをした。なかなかよい。明日からさっそく色をぬっていこう。

2005年10月5日の日記より

tbl022《海辺で読書》2006年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

モデルとなった写真

大学の美術サークルの合宿で、千葉の岩井海岸に行った際の光景です。海辺の階段に腰掛け、脚を組んで紫煙を燻らせながら読書する友人の姿が絵になると描きました。海岸での喫煙はやめましょうね。

ジーンズが、どうやっても求める色にならなくて苦労しました。また、スニーカーの描写があまりにも貧弱です。海のグラデーションはそれなりにうまくできたのではないでしょうか。

また、本作よりマツダの「クイック油絵具」を使用するようになりました。24時間で筆触可能なくらいになる速乾性は画期的で、これにより制作時間の大幅な短縮と作品の量産が可能となりました。大学時代の油彩画のうち、約7割が3年生の時に描かれたものになります。

tbl023《未熟の海》2006年、油彩/カンヴァス、33.3×53.0cm

モデルとなった写真

tbl022《海辺で読書》と同様、千葉の岩井海岸での風景を描いたもの。夕日が沈む瞬間の空の様子がとても美しく、真冬の2月ということで凍てつく寒さの中見た幻想的な情景が目に焼き付いています。しかし雲がうまく描けていません。

油絵を始める。海景用の横長のM型キャンバスに、軽く線を入れて、イエローオーカー一色で下塗りをする。水墨画みたい。なかなかよいかんじ。明日さらに進めよう。

2006年8月2日の日記より

タイトルの「未熟の海」とは、大学受験に挑む高校3年生の時の悲壮な決意と覚悟を、成功する確率の低い中航海に進む船になぞらえて詠んだテキストに出てくる「未熟の港」からインスピレーションを得ています。

希望観測船「みらい」を
未熟の港から出した
絶望的な大海原へ
わずかの道具で挑む
目的地に辿り着ける可能性は
三十パーセント未満
大いなる波に
呑み込まれてしまうのか

「CoyaNote2003064」『第4冊ノート』より

tbl024《卵の天使》2006年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

制作過程1 2006年9月2日
制作過程2 2006年9月3日
制作過程3 2006年9月4日
制作過程4 2006年9月6日
制作過程5 2006年9月7日
制作過程6 2006年9月8日
制作過程7 2006年9月9日
制作過程8 2006年9月11日
制作過程9 2006年9月14日

誕生日にサークルの会員のみんなからプレゼントしてもらった村山由佳の『天使の卵』という小説の中に、ある絵が登場します。それをこんなもんかなと、自分なりにイメージして描いたものです。

小説だから、当然絵については文章でしか言及されていないわけで、どのように解釈するかは人それぞれですが、色は記述に忠実に従いたいと考えていました。

言葉によって言及されているだけのものを、絵画というビジュアルな形体で表現するという試みは、なかなか興味深かったです。

tbl025《紅葉燃ゆる》2006年、油彩/カンヴァス、31.8×41.0cm

モデルとなった写真
制作過程1 2006年9月15日
制作過程2 2006年9月16日
制作過程3 2006年9月17日
制作過程4 2006年9月18日

箱根へ紅葉を見に行った時の風景を描いたもの。

手前だけでなく、奥の山も紅葉じゃないとやっぱり秋らしさは出ない。ということで、真っ赤に燃やしました。でも、手前ほど目立ってはまずいので、ほどほどに。画面の手前のものほどしっかりと描き目立たせて、奥のものはややぼんやりと描く。これは空気遠近法という描き方です。

tbl026《働き盛り》2006年、油彩/カンヴァス、18.0×14.0cm

制作過程 2006年9月25日

サラリーマンの悲哀を描いてみたかったのです。同名の長いテキストも残しています。

それまで、大学時代はオーソドックスな作風で描いていましたが、本作で初めて輪郭線が登場します。いろいろな作品を描いているうちに、高校時代のスタイルで描いてみたいと思うようになったのです。手始めに一番小さなF0号のカンヴァスで、実験的に描いた作品になります。

tbl027《hear the swedish wind sing》2006年、油彩/カンヴァス、27.3×22.0cm

モデルとなった写真
制作過程 2006年9月25日

この年の秋にスウェーデンへ留学に行った友人をモデルに描いた作品です。送別会でプレゼントした、国旗入りのスウェーデンカラーのアディダスジャージを気に入って、ブログのプロフィール画像にしてくれました。彼のブログのタイトルをそのまま作品名に使用しました。村上春樹が好きな友人は、同氏の小説『風の歌を聴け』をもじったのでしょうか。彼の留学中のブログを通して、IKEAの存在を知りました。まだ日本に上陸する前のことです。

tbl028《もふもふの天使》2006年、油彩/カンヴァス、24.2×33.3cm

制作過程 2006年9月25日

ラッコの可愛らしさを表現したかったのです。

tbl029《升目Dear富士》2006年、油彩/カンヴァス、24.2×33.3cm

制作過程 2006年9月25日

ちょうどこの頃、伊藤若冲のブームが起こっていて、彼の作品の特徴である「升目描き」を取り入れてみたものです。画面に1cm間隔でグリッド線を引き、1つの升目を1色で塗るという手法を採りました。結果的に、モザイク画やドット絵のような雰囲気となりました。

タイトルもこの描き方から来ていて、「富士山は日本人にとって最大のマスメディアだ」などと述べてこじつけ、意味不明なものとなりました。

tbl030《Trick or Treat》2006年、油彩/カンヴァス、45.5×38.0cm

大学の後期の授業が始まってすぐ、10月上旬に1週間くらいで完成させました。均一で平面的な色の塗りと、黒々と太い輪郭線、人体のプロポーションはデフォルメされ、目や口といった顔のパーツを点と線で表現するなど、現実を再現することを放棄した、イラストのような作風がここで確立されました。

これは自分でも大変満足のいく仕上りで、また、留学生をはじめサークルの多くのメンバーからも好評で、大学時代を代表する作品となりました。

tbl031《屹立》2006年、油彩/カンヴァス、53.0×41.0cm

制作過程 2006年10月23日

あることがきっかけで、着物に憑りつかれるようになり、雑誌や書籍など着物本を買い漁りました。翌年には大学で開講されている「きもの学」という授業を履修するまでになります。それはのちに、coc034《春》coc035《夏》coc036《秋》coc037《冬》coc038《きみのきもの》の連作、coc039《彩り模様》といった切り紙絵作品へと発展していきます。

この作品では、目の描き方うまくいかず、何回もやり直し、しまいには目の部分の絵の具層をナイフでえぐり取って修正しました。

tbl032《扇子・紅》2006年、油彩/カンヴァス、53.0×45.5cm

制作過程 2006年10月23日

こちらの作品では、扇子を持つ左手の形がおかしくなっています。着物の花柄は、形を切り抜いた型紙を作って、ステンシルのようにして塗りました。一つ一つ手描きしていくよりも、うまくできたと思います。

タイトルは、扇子を持っている紅の色の着物の女性と、芸術の神様にセンスをくれないかなとお願いすることを掛け合わせています。

tbl033《花傘》2006年、油彩/カンヴァス、60.6×50.0cm

制作過程 2006年10月23日

この作品でも、傘を持つ手の形がおかしいです。また、傘の形も歪んでいて、見ていて気持ちの悪いものです。

tbl034《まどろみ》2006年、油彩/カンヴァス、27.3×22.0cm

tbl030《Trick or Treat》で獲得した手法をさらに先鋭化させた作品。均一で平面的な色の塗りと、黒々と太い輪郭線はそのままに、使用する色の数を少なくし、構図もより単純化することで、さらに軽妙な雰囲気に仕上がりました。

ちなみに、構想段階では、バーのカウンターで水割りを飲みながら突っ伏して泣いている女性を描くつもりでした。結果的には、変更してよかったです。

tbl035《寂しい風》2006年、油彩/カンヴァス、31.8×41.0cm

11月も半ばで秋も深まった頃に描いた作品。物悲しい季節の寂しい雰囲気を表現しました。輪郭線は描かないとどうなるかという効果を試しています。風に吹かれてたなびく髪とマフラーを強調するために、より細長い比率のM号カンヴァスにすればよかったと今更ながら思っています。

ちなみに、2023年に公開された映画『ミステリと言う勿れ』のビジュアルイメージが、なんとなく似ているように思われるのは、まったくの偶然でしょう。

tbl036《今年の冬はタートルネックセーターを着よう》2006年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

wgd188《今年の夏はポロシャツを着よう》2006年、水彩/紙、41.0×31.8cm

同年の夏に制作したwgd188《今年の夏はポロシャツを着よう》と対をなす作品。女の子がタートルネックセーターの襟を掴む仕草が好きで描きました。

最初は黒髪にしていたのですが、セーターの色と同化して、忍者のように頭巾をかぶった姿となってしまったため、慌てて髪の色を変更したという裏話があります。

tbl037《幸せの配達人》2006年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl030《Trick or Treat》の続編のような作品。季節の行事をテーマとしており、女の子の顔の造形もよく似ています。

tbl038《秋の憂い》2006年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm
tbl039《冬のうねり》2006年、油彩/カンヴァス、38.0×45.5cm

tbl038《秋の憂い》
tbl039《冬のうねり》

油彩画は、イメージを描く表現主義的な抽象画の段階にまで突入しました。それぞれ、秋の物憂げな寂しさ、冬の厳しい寒さを色で表現しています。ここから先に、さらなる展開があったかもしれませんが、院試のための受験勉強や卒論で忙しくなって油彩画の制作はここで途切れてしまい、社会人になるまで4年間の中断を挟むこととなります。

社会人第1章(2010年8月~2015年6月)

tbl040《OLランチへ行く》2010年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm
tbl041《とりあえず、ビール》2010年、油彩/カンヴァス、24.2×33.3cm
tbl044《オフィスの女神たち》2011年、油彩/カンヴァス、53.0×45.5cm

tbl040《OLランチへ行く》
tbl041《とりあえず、ビール》
tbl044《オフィスの女神たち》

社会人になってから初めての油絵は、やっぱり「はたらくこと」をテーマとすることにした。「はたらくこと」がテーマだけど、まあ男を描いても仕方ないのでOLさんたちを登場させたわけです。お仕事をがんばってる女性へのエールにでもなればいいです。

相変わらずの作風だけど、なにせ久し振りの油絵だったから悪戦苦闘した。描き方を忘れていて細かいミスを何回も繰り返して、そのたびに心折れそうになった。途中で何度も放置した。それでも、何回も絵の具を重ねていくうちに色がくっきりとしてきて、そして輪郭線を描き込むと、対象はぐっと前に出てくるように存在感が出て、画面にあの雰囲気が生まれたのだ。作品がぐっと引き締まるこの一瞬の喜びを味わいたいがために、油絵を描いているのだろう。

奇しくもスタートから10年になる今年、2010年に再び油絵を描くことになったのだ。

前回が大学3年の時の12月展だから2006年、かれこれ4年ぶりの油絵である。久しぶりというか、あまりにもブランクが空きすぎていて、かなりのことを忘れてしまっていたが、

スモッグを着て絵筆を持ち、溶き油で絵の具を混ぜ、イーゼルに架かるキャンバスに向き合うと、不思議とあの頃の感覚がよみがえってきたのだ。上手くいかないこともたくさんあって、疲れたりいらついたりもするけれど、それでも一度知ってしまったら、油絵を描くことはやめられない。油絵を描けるうちは、なんとかなるような気がする。

tbl042《愛を描く》2011年、油彩/カンヴァス、41.0×31.8cm
tbl043《愛を抱く》2011年、油彩/カンヴァス、45.5×38.0cm

tbl042《愛を描く》
tbl043《愛を抱く》

tbl045《ロボット》2013年、アクリル・ペン/カンヴァスボード、18.0×14.0cm

tbl045《ロボット》

tbl046《ねこ》2013年、アクリル/パネル、36.4×51.5cm

実家猫のみぃちゃん

tbl047《Say-Là》2013年、アクリル・ペン/カンヴァス、53.0×45.5cm

tbl048《deux poupées de Say-Là》2013年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×72.7cm

tbl049《横顔/正面顔》2013年、油彩・クレヨン/カンヴァス、33.3×24.2cm

tbl050《菜の花畑》2013年、油彩・クレヨン/カンヴァス、38.0×45.5cm

tbl051《深海》2013年、油彩・クレヨン/カンヴァス、60.6×50.0cm

tbl052《Kiss on the Pumpkin》2013年、油彩・クレヨン/カンヴァス、53.0×65.2cm

tbl053《Astrogation》2013年、油彩・クレヨン/カンヴァス、60.6×72.7cm

wgd264《Astrogationのための習作》2013年、鉛筆/紙、26.0×37.0cm
wgd265《Astrogationのための習作》2013年、鉛筆/紙、26.0×37.0cm

tbl054《喜びを分かち合う》2013年、アクリル・ペン/カンヴァス、65.2×80.3cm

tbl055《うつ病のわたし》2015年、アクリル・ペン/カンヴァス、27.3×22.0cm

社会人第2章(2018年5月~2023年10月)

tbl056《春の嵐》2018年、アクリル/カンヴァス、38.0×45.5cm

tbl057《頭痛に悩まされる男》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、22.0×27.3cm

頭を抱えるスーツを着た男。頭痛に苦しんでいるのか、それとも悩み事があるのか。

この男には、私の身代わりに痛みを背負ってもらおう。もう偏頭痛や悩み事とはおさらばだ。悪魔祓いのように描いた絵である。

tbl058《33歳のやまとうた》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、53.0×45.5cm

tbl059《井の頭公園でボートに乗った思い出》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl060《すみぺ人形》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl061《すみぺ二人》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、45.5×53.0cm

tbl062《少女》2018年、アクリル/カンヴァス、33.3×24.2cm

tbl063《ハートの髪型の肖像》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、33.3×24.2cm

tbl064《秋を奏でる楽隊と葉っぱ》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×50.0cm

 チェロのボディって、黄色と茶色の2種類あってそれが葉っぱのように見えたことから描いたものです。楽器を全面的に出すため、演奏者は匿名性をもたせるために黒い棒人間になっています。少しでも秋らしさを感じていただけたら幸いです。

tbl065《トナカイ》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl066《クリスマスに乾杯》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、24.2×33.3cm

tbl067《謹賀新年》2018年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×50.0cm

tbl068《シャツとランドリー》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、33.3×24.2cm

tbl069《彼女はドーナツを持っている》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×50.0cm

tbl070《彼女の横顔》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×50.0cm

tbl071《彼女は本を持っている》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、112.0×145.5cm

tbl072《彼女は前髪を気にしている》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、112.0×145.5cm

tbl073《秋三葉》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、31.8×41.0cm

tbl074《ピエロ》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、45.5×38.0cm

ピエロに潜む狂気を表現したかったのです。お道化た顔の裏側にある悪魔の存在を。

tbl075《デブ・デブ夫の肖像》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、45.5×38.0cm

tbl076《片想い》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×50.0cm

tbl077《失恋》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×50.0cm

tbl078《トロンボーン》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl079《文芸》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl080《日本舞踊》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl081《好奇心》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl082《ジャンボリー》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl083《テンプレート》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl084《優越感》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl085《金融》2019年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl089《着衣のマハCoya風味》2020年、アクリル・ペン/パネル、33.3×19.0cm

tbl090《てへぺろ》2020年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl098《鬼は外、福は内》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、45.5×38.0cm

tbl099《36歳の自画像》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

tbl102《夏の風に吹かれて》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm

《そんなあざみに騙されて》シリーズ

tbl087《そんなあざみに騙されて1》2020年、アクリル・ペン/カンヴァス、80.3×80.3cm
tbl088《そんなあざみに騙されて2》2020年、アクリル・ペン/カンヴァス、41.0×31.8cm
tbl096《そんなあざみに騙されて3》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、80.3×60.6cm
tbl097《そんなあざみに騙されて4》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、80.3×60.6cm
tbl100《そんなあざみに騙されて5》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×45.5cm
tbl101《そんなあざみに騙されて6》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×45.5cm
tbl103《そんなあざみに騙されて7》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×45.5cm
tbl104《そんなあざみに騙されて8》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×45.5cm
tbl105《そんなあざみに騙されて9》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×45.5cm
tbl106《そんなあざみに騙されて10》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×45.5cm
tbl107《そんなあざみに騙されて11》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×45.5cm
tbl108《そんなあざみに騙されて12》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、60.6×45.5cm
wgd280《そんなあざみに騙されて13》2021年、色鉛筆/紙、18.2×12.8cm
wgd325《そんなあざみに騙されて14》2021年、水彩・ペン/紙、31.8×41.0cm
coc047《そんなあざみに騙されて15》2021年、グアッシュ・紙・切り紙絵/紙、25.7×18.2cm

十干シリーズ

tbl110《癸》2023年、アクリル・ペン/カンヴァス、27.3×27.3cm

十二支シリーズ

tbl086《子》2020年、アクリル・ペン/カンヴァス、27.3×27.3cm
tbl095《丑》2021年、アクリル・ペン/カンヴァス、27.3×27.3cm
tbl109《寅》2022年、アクリル・ペン/カンヴァス、27.3×27.3cm
tbl111《卯》2023年、アクリル・ペン/カンヴァス、27.3×27.3cm

社会人第3章(2023年11月~)