写真:Photograph

写真について

現代の美術を考える際に、写真も欠かせないカテゴリーでしょう。

家に一眼レフカメラ(EOS1000 QDS)があったため、小さい頃から写真を撮ることが身近でした。旅行に行った際には記念撮影だけでなく、気に入った風景や事物を切り取っていました。フィルムの枚数にも限りがあるため、今のように気楽に何枚も撮るわけにもいかず、よく吟味して慎重に、そして丁寧に写真を撮影していたような気がします。

高校の修学旅行では、他の生徒が使い捨てカメラでピースをしながら記念撮影する中、大きくて重くてゴツい一眼レフを首からぶら下げ、お城や寺社仏閣、紅葉の写真ばかりを撮っていて変人扱いされました。

デジタルカメラの登場は、画期的な出来事でした。手軽に使えるデジタル一眼レフの嚆矢となったEOS Kiss Digitalを購入したのは、発売翌年の2004年12月。撮影した画像をディスプレイですぐに確認でき、失敗したらすぐに削除できるという、今となっては当然のことも、当時は世界がひっくり返るくらいの衝撃だったのです。以来、手ブレやピンボケ、フィルムの残り枚数も気にせず、本能に従ってとにかくシャッターを切り続けました。

掲載した作品のうち、2002年までの写真は撮影フィルムをスキャンしてデジタルデータ化したものです。フィルムが劣化して薬品が溶け出す、いわゆる「ビネガーシンドローム」の懸念があり、今後も継続してフィルムのデータ化を進めていきたいです。

メーカーが次々と生産を終了し、今やフィルムで写真を撮影するのは一部の専門家以外困難になっています。デジタルの方が色鮮やかできれいであり、実用面でこれからフィルム写真が復権することはおそらくないでしょう。フィルムにしか出せない独特の色合いや味わいも過去の郷愁の彼方へと遠ざかると思うと、寂しいものがあります。

誰もがスマートフォンで手軽に高画質の写真を簡単に撮影でき、補正や加工も容易に行えるなど、写真のそしてイメージのあり方も大きく変容を遂げています。そのような時代において、写真を撮るとはどのようなことか、頭の片隅に置きながらこれからも撮影を続けていきたいです。