版画:Print

版画について

版画作品の数は、多くありません。学校の授業で制作したものがほとんどです。不器用なため彫刻刀を上手く使えず、またバレンやプレス機などの道具もないため、自主的に版画を制作することは難しいです。

そして、目の前の造形を完成させることに夢中で、刷り上がった時の図像を想像する力が欠如しているため、版画が苦手なのだと感じています。多版多色刷りなど、とてもではないですができないです。

原初的な手法としては、紙版画が挙げられます。プリミティブに回帰する創作の一つとして、なにかの機会があれば一度制作してみたいと考えています。

なお、作品番号のうち、枝番1は版画作品に、ここに掲載していない枝番2は原版に付してあるものです。連作を示しているわけではありません。

prt001_1《おおきなかぶ》1992年、紙版(タック式色版画)/紙、25.4×35.4cm

prt001_2《おおきなかぶ 原版》1992年、紙、25.6×35.4cm

「タック式色版画」という、水で濡らした紙に原版の色を写し取る手法で制作したものです。小学校低学年でも簡単に版画が出来るのですが、完成した図像は版がずれたのかぼやけたものとなっています。むしろ、原版の方がよっぽど力強い表現となっていて、これは幼稚園時代に制作していた切り紙絵の影響が出ていると考えられます。紙を切って貼る原版を、切り紙絵のように捉えて制作していたのではないでしょうか。

prt003《読書感想文で賞をもらった思い出》1994年、紙版/紙、39.1×27.1cm

前年に読書感想文で入選し、授与された賞状を掲げて喜んでいる姿を描いたものです。賞状の部分のみ、質感の異なる紙を使用することで、他とは異なる特別なものであることを表現したかったのでしょうか。

prt004_1《手ぶくろを買いに》1995年、木版/紙、22.5×33.0cm

新見南吉の『手ぶくろを買いに』の一場面を描いたものです。背景の木に注目。手前の木は大きく、奥に進むにつれて小さく描くという線遠近法が用いられています。学校の授業ではなく、本を読んで独学で知り、早速絵の中に取り入れてみたのですが、先生からは「何だ、この木の描き方は」と否定され、貶された記憶があります。

prt005_1《うんどうぐつ》1996年、木版/紙、26.0×36.0cm

奥にある靴の方が大きく描かれており、逆遠近法のような歪んだ表現となってしまっています。むしろサイズや種類の異なる別々の靴を片方ずつ並べたのではないかと考えた方が自然に見えます。

なおこの3年後にprt007《体育館シューズ》でも靴をモティーフに版画を制作しています。靴紐の重なり具合や、結び目、リボンの輪っかなど、造形的に面白い部分が多数あり、また履いていた者の面影も感じさせるなど、靴は絵になる魅力があるのでしょうか。それを全く上手に処理できていないです。

prt006_1《四小かるた 絵札》1997年、木版/紙、7.3×5.2cm

prt006_3《四小かるた 読み札》1997年、墨/紙、7.3×5.2cm

小学校6年生の時の作品。図工の授業で、卒業にあたって学校を題材にかるたを作ることになり、制作したものです。この頃から、モダニスム建築に関心を寄せていたわけではありませんが、「モダン」という言葉が気になっていたことは確かです。

なお、制作の翌年(1998年2月)から郵便番号が7桁に変更されるため、実際の景色にはそれを告知する立て看板やポスターがあり、当初はそれも描いていましたが、先生に削除されました。作品の中に時代を反映させることができずに、残念です。

prt007《体育館シューズ》1999年、ドライポイント/紙、38.0×27.0cm

中学校の美術の授業で制作したもの。版をニードルで刻むドライポイントという手法に挑戦しました。紙版画や木版画のような面的表現ではなく、線を重ねる「ハッチング」によって陰影や立体感を出すというものですが、全く上手ではありません。

prt008《東大寺菩薩像》2005年、墨・拓本/紙、50.0×34.0cm

本作は厳密には版画ではなく、拓本になります。

大学の授業で、拓本をテーマに発表をすることになり、自分で実際に拓本を採ることにしました。キャンパスの正門脇にある石碑など、対象はいろいろありましたが、初めてのため汚してしまうおそれがあり、それならばと原版を自分で彫ってその拓本を採りました。

墨やタンポの扱いに悪戦苦闘し、水張りさせた紙が乾くタイミングを計るのも難しく、最初はムラやにじみだらけで上手くいきませんでしたが、何回か試行錯誤を繰り返すうちに、次第にコツを掴むようになりました。墨を打ち重ねていくと、次第に図像がはっきりと浮かび上がってくる様子は、炙り出しのようでとても興味深かったです。

完成した図像は似ていますが、版画と拓本は原理が全く異なるものです。版画は原版の上に墨やインクを直接載せて図像を摺り取るのに対して、拓本は紙を挟んで図像を写し取ります。そのため、拓本は原版が汚れず、また仕上りは原版と同じで鏡像にはなりません。このことを知らずに、拓本を版画と勘違いして、石碑や墓碑に墨を塗って汚してしまう「拓本公害」の被害が各地で見られます。発表では、この点も強調して説明し、内容の濃いものとなりました。

タンポ
画仙紙
制作過程1 2005年11月30日
制作過程2
制作過程3
制作過程4
制作過程5
制作過程6
制作過程7
制作過程8
制作過程9