第2冊ノート(2000年8月~2001年6月)

2000年

絵を描くためには

絵を描くために必要なのは
才能ではない
覚悟だ
絵を描くためには
心の中に隠している
嘘も本当も罪も貢献も
全てを出さなければならない
何もかも画用紙に描かなければならない
嘘は青で
本当は赤で
罪は陰影で
貢献は明暗で
全てを出すということは
傷つくことである
悲しいことである
悔しいことである
恥ずかしいことである
しかし全てを出さなければ
絵は描けない
全てを出す覚悟を
絵を描く覚悟を……

今はまだ絵を描けない
絵を描くのが恐い
全てを出すのが恐い
もう少し時間が経って
覚悟ができた時に
絵を描きたい

戦場へ

今日で夏休みも終わり
明日からまた
戦場へ行かなければならない
心の傷も癒えないままの
戦線復帰
いつまた負傷するか分からない

短い夏休みの間に
僕は何をしただろうか
何もしなかった
他の兵隊達は
次の出兵のために
冬の大戦に備えての
訓練をしていたのだろう
だが僕はその訓練をしなかった
何の技術も習得せずに
戦場で生き残れるはずもない
おそらくすぐに傷つくだろう
二度と這い上がれないくらいどん底へ
転がり落ちるかもしれない
それでも僕は
たった一つの本当に小さな
もしかしたら見えない希望の光を
それだけを頼りに
たった一人で闘う
そして……勝つ

欲望

もしも欲望にとりつかれた時は
目を閉じる
視界をなくせば欲望などおきない
話し声など聞こえもしない
そしてその暗闇の中から
一筋光が見えた時
その光に望みを…

僕を語る

僕を語るのはよそう
僕なんてものを他人に語ったところで
どうなる
僕は僕の中に隠しておいて
誰にも見せないでおこう
大切なものは
たった一人で深く眺めよう

何もするな

売名行為などしてはならない
自分をよく見せようなどと
考えてはいけない
カッコつけるための行動ほど
醜いものはない
何もするな
僕は僕でいる

無題

もう誰も信じない
誰も僕を分かってくれない
奴らを侮蔑しろ
あんなバカな連中に
僕が分かるはずもない
絶交だ 会話なんてしたら
僕がダメになってしまう
つながりを断ち切れ

今僕には何が必要なのか
何が僕を分かってくれる
愛なんてものはない
欲望に身を任せても
結局は自分を傷つけるだけ
だとしたら
僕は何をすればいい

絵だ 絵を描くことだ
誰にも邪魔されず
何にもとらわれず
あらゆる欲望を
あらゆる邪念を捨て去り
絵を描きたい
たった一人で絵を描きたい
絵と真剣に向き合いたい

でも僕には絵を描く時間がない
奴らが僕から絵を描く時間を奪った
何もできないで 今日も終わる

絵を描くということは本当に大変なことだ
苦しいことだ 悲しいことだ
真剣に取り組まなければ
絵なんて絶対に描けない
だとしたら今の僕は絵が描けない
僕はまだ真剣に絵を描く覚悟がない
絵を描く大変さ 苦しさ 悲しさから
逃げようとしている
絵を描くことをためらっている
そんな僕に絵なんて描けるはずない

明日からは 絵と真剣に向き合いたい
絵を描くことだけを考えたい
何とか 絵を描く覚悟を
絵を描く決意を

無題

今日久し振りに絵を広げた。今まで眠っていた感情がそこではきらめいていた。とたんに絵を描いた時のあの気持ちが戻ってきた。そしてこの絵に感心してしまった。

それは決してうまいという意味ではなく、どうしてもこの絵を描かずにいられないあの痛いまでの感情が伝わってきたからだ。この絵を見ているとその時の傷が再びうずく。

今また同じ様な絵を描いても、決してこのような絵は描けないだろう。あの時だけの感情を形として表現できたこの絵は僕にとって大切なものである。

原点

久し振りにスケッチブックを開いて
鉛筆一本で絵をいやクロッキーを描いた
スケッチブックを開いたとたんに
あの何とも言えない緊張感に襲われた
鉛筆を握った時にはもう
気分は高揚していた
この気持ちがある限り
僕は絵を描いていけると思う
この気持ちが
僕の絵を描くための原点だ

誰も分かってくれない

分かってくれない 分かってくれない
誰も僕のことを分かってくれない
僕の苦しみも 悲しみも 喜びも 愛も
奴らには感情がないのか
奴らの心は痛まないのか
     叫ばないのか
     泣かないのか
     笑わないのか
     一つの小さなことに
     感動し
     一つの小さなことに
     震えないのか
誰も僕の心を分かってくれない
僕が必死に表しても伝わらない
誰にも届かない
誰も分かってくれない

CoyaNote2000009

欲望があっては絵なんて描けない

自画像が描けない

自画像が描けない どうしても描けない
鏡を見るのが恐い
鏡の中で笑っても
そのすぐ後ろにいる悪魔の存在に
怯えている
悪魔のせいで僕は鏡の中の自分を
凝視できない
だから自画像が描けない
たとえがんばって鏡を見つめても
筆を握る手は悪魔に掴まれて
思うように描けない

嘘つきな絵かき

キャンバスの前では正直でなくてはならない
今までの過去を全部さらけ出さなくてはならない
でも嘘つきな僕は
キャンバスの前でも嘘をつく
嘘でごまかそうとする
つくり笑いばかりする
だから僕は
自画像さえ描けない

CoyaNote2000010

今日はなんとか自画像が描けた
自分でも驚くほどの絵が
それはやはり正直になったから
僕という人間をさらけ出したから
僕は自画像が描けた
直感でこの色だと
分かった
絵の中の人物が
少しずつ僕になっていく
その行為は僕自身がする
絵の中で自分を創るのが
自画像である

CoyaNote2000011

僕はさあ描くぞというやる気と、どうしても描かなくてはいけない感情で、絵を描いている。

CoyaNote2000012

描けば描くほど 真実から遠のく
描けば描くほど 僕が僕でなくなる

できない

できない できない できない
僕はもう 詩を創ることも
     絵を描くことも
そして 生きることもできない
何もできない

CoyaNote2000013

誰にも分かってもらえないような話なんかするな

水彩絵の具

箱を開くと鈍色に輝く絵の具達
赤 白 青 黄色 緑
どれもが自分を強調して
そこで静かに眠っていた
僕に使われるのを待っていた
時にこの絵の具は鈍色に光る弾丸である
僕は筆のピストルにいくつもの弾丸をつめ込んで
乱射する その血が絵となる
時にこの絵の具はやわらかで温かな毛布である
僕は美しいものカワイイもの好きなものをこの毛布で
優しく包むように抱きしめるように描く
守る 僕に守られたものは画用紙の中で生き続ける
悪魔と天使 怒りと優しさ
二つの感情を二人の僕を
この水彩絵の具は表現するだろう

女性の肖像画

女性の肖像画をじっと見つめてはならない
じっと見つめられると女性は恥ずかしがってしまい
その美しさを絵の中に隠してしまう
女性の肖像画は遠くからそっと見守るように

CoyaNote2000014

悲しくて悲しくてやりきれない
もう誰も信じられない
何もできない
心が壊れてしまいそうだ
たった一人で思い切り泣きたい
だが
涙を溶かし込むベッドがない

卒業写真

良く映ることよりも
自分らしく映ることが大切
三年間生きた中の
たまたま今日という日を
切り取っただけなのだから

CoyaNote2000017

時間が奪われていく
僕の時間が奪われていく
創作をするための貴重な時間が
感情を出すための大切な時間が
勉強という悪魔に奪われていく
次々と積み上げられる膨大な情報
知識の羅列 難解不読の暗号
全てをこなさなければならない
全てに勝たなければならない
僕は戦うことに疲れ果て
戦いに時間を奪われて
創作ができない
感情が出せない
波にのまれる
時間に流されて
何もできないまま 何も残せないまま
何も創れないまま 何も考えられないまま
とんでもない場所へ行ってしまう

メガネ

今まで滑稽だと思ってずっとかけてなかったメガネ
新しく作った
今までのとは全く違う小さくて洒落たもの
このメガネをかければ滑稽ではないだろうか
それはどうか分からないが
今のところは気に入っている
青いメガネ

CoyaNote2000019

今日のことは全て忘れよう
何もかも全て
そうしなければ
生きていけない

CoyaNote2000020

自信やプライドを壊すために
僕は学校へ行くのか
僕という存在を否定されるために
僕は学校へ行くのか

CoyaNote2000021

髪を切るということは
一番簡単な変身だと思う
それはつまり今までの過去を捨てる
必要なものだけを残して
全く新しい自分になる
鏡の中の僕は
もう今までの僕ではない
今日髪を切った僕は
新しく生まれ変わった
変身したのだ

芸術家は爪を伸ばしてはいけない
爪を伸ばした芸術家に
創作ができるはずない
芸術家にとって自分の中にある感情を
実際に形にするのは表現するのは
自らの手である
芸術家は心で感じて
手で描く
手こそが芸術家にとって
最大の武器である
その手にとって一番の邪魔は
爪である
切っても切っても伸びる爪は
指をつき出て出しゃばる
表現したい手を爪のせいで動かせないことになってしまう
現実の汚れを食べてぶくぶくと太る爪によって
創作ができなくなってしまう
だから切るのだ 深爪するぐらい切るのだ
指先の境界線から越えた爪は
厳しく処刑する
奥にもっと奥にまで切り込む

芸術家に爪など必要ない
ギターを弾く時に邪魔
絵を描く時に邪魔
詩を創る時に邪魔
とにかく邪魔だ
爪を切れ 爪を切れ 爪を切れ
芸術家になりたいのならば
爪を切れ

CoyaNote2000022

傷つくために学校へ行くのか
傷ついて何になるのか
痛む傷を誰が癒してくれるというのか

CoyaNote2000023

何かから逃げるように僕は走った
後ろから追ってくる者などいるはずもないのに
僕は逃げた
何もかもが嫌になってしまった
学校には悪魔しかいない
悪魔の城であった
僕は城から抜け出して
必死に走った
走った 逃げた
振り向かずに逃げた
途中 何度も僕の心を惑わす者が現れた
その見かけだけの華やかさに
不安定な心は引きこまれてしまいそうになる
だがその邪念によって傷つくのは目に見えている
だから僕は首を何度も振って
目をつぶって捨て去るように逃げた
走った 逃げた
肉体の限界に達するまで
走った

学業特待入学願書

こんなうすっぺらな一枚の紙切れを
どうしてこんなにも大事に書かなくてはいけないのか
氏名 生年月日 出身中学校 現住所
こんなありふれたものを
どうしてこんなにも入念に検査するのか
僕という存在を証明するものを
どうして一発で書かしてくれないのか
僕の名前を書くということは自分の魂をそこに刻むこと
そんなことにどうして練習をしなくてはいけないのか
人生に下書きや練習なんてないはず
自分という真っ白な紙の上に書く言葉を
消すことはできないはず
だからこそ自分の言葉に責任と誇りを持って生きている
だったら自分の人生を決める願書も
取り戻しのできない責任のある言葉で書きたい
一度しかない人生を進むための願書なのだから
一度しかない言葉を刻みたい

でもそんな思いとはまったく逆のことを
僕は今やろうとしている
すでに願書に下書きをしてしまった
そして厳しい検査も通り抜けて
今まさに書こうとしている
それはとても簡単なことだ
ただなぞればいい 言葉を何の感情も持たずに書けばいい
でもそれはとても空しい
僕という存在をコンピュータにデータ入力しているよう
文字を書いているのではなくてぬり絵をのようにただ塗っているよう
決められたレールの上を裸足で歩いているよう
感情を捨てて言葉を書くなんて僕にはできない
僕は人間である

でもそんな抵抗を声に出しても現実は厳しい
僕は願書を書かなくてはいけない 生きるために

CoyaNote2000024

やはりそうだ そうだったんだ
絵を見るときに 描く時に
コンタクトレンズなんてしていてはダメだ
眼鏡なんかかけていてはダメだ
たとえ見る力の弱い目でも
裸のままの目で絵を見つめなければ
本当の絵など見えない
レンズで絵を遮断された目に映るものは
レンズによってごまかされた映像
嘘の映像なのだ
美術の世界に嘘などあってはいけない
いつでも真実を いつでも本当のことを
傷ついても現実を描かなければならない
だから僕は絵を見る時は 描く時は
裸のままの目で真実を見る

古い傷を現実で覆い隠して
ずっと見ないようにしていた
しかし僕は確かに罪を犯したのだ
消すことのできない過去
忘れかけていた頃に突然やって来て
僕を苦しめる
僕は頭を抱えて
痛む 痛む 叫ぶ 悩む 悔やむ

CoyaNote2000025

箱を開けて取り出したブルースハープは
機械のように冷たい
感情を持たない人間のように
音に感情がない
ただ音の高さがあっているだけの音
僕の温もりでブルースハープをあたためて
音に感情を入れる
少しの微熱をもったブルースハープは
哀しいまでに感情的な音色を歌う
僕の心をそのまま表現する
もっとあたためようと両手でブルースハープを包むと
その痛いほどの感情が手に伝わる
手は震える

CoyaNote2000026

正しいものなんて何一つない
自分が良いと思っていたものが
誰かの一言で壊されることなんて
あたりまえのようにある
だから何も信じない方がいい
たった一つの正しさにすがりついても
すぐに振り落とされてしまう

CoyaNote2000027

僕を不安にさらさないでくれ
大人達よ
口ではきれいごとを言っておきながら
目の前で残酷なことをして
僕が傷つくのを見るのが
そんなに楽しいか
でも大丈夫さ
僕は中途半端な大人の攻撃にやられるほど
弱くないさ

CoyaNote2000028

もっと自分をよく見つめなければ
それには時間がなさすぎる
もっと時間を もっと時間を
もっとチャンスを もっと出会いを
もっと場所を もっと感情を
もっと もっと もっと もっと愛がなければ

CoyaNote2000029

時計の中にある1から4までの時間は
僕のものだったんだ
誰にも使わせたくなかった
でも8から12までの時間を
生き残るために必死に使ったら
僕に残ったのは疲労だけだった
疲労は僕の体を侵して
僕の時間を一気に食べてしまった
もう僕に時間はない

CoyaNote2000030

テストにおいて満足できるのは「完璧」だけであり
その他の全ての中途半端は「絶望」でしかない
明日からの僕に「完璧」はない
僕は「絶望」と戦わなくてはいけない

学業特待入学試験

明日はもう試験なのである
とにかく金のかかる私立高校で
今回もしかしたら金を使わずに入学できるかもしれない
それを決めるための試験である
しかしその壁はとても高く
簡単にはいかない
学校では知りえない
不可解な記号
それに勝たなくてはいけない
他人を蹴落とさなくてはいけない
そこではみな兵士である
各々秘密訓練を受けて
準備はもうできているだろう
僕の知らない技で武器で
僕を攻撃してくる
僕はやられる

バスに収容された兵士達は
一つの戦場に集められ
配置につく
チャイムが勃発の合図
いっせいに攻撃が始まる
わずか五十分間の短期集中戦
その時間で僕の人生が決まる
生きるか 死ぬか

CoyaNote2000031

心を捨てて僕は試験を受けた
そう僕という存在を否定してまで
自分の心があっては試験に合格できない
心も何もかも捨てて
機械になるんだ
データーを打ち込むだけの
機械になるんだ
試験はマークシート方式だった
そう最も僕が機械にならなければいけない
試験であった
脳の中のデーターを
手と鉛筆というプリンターを使って
きれいに丁寧にはみ出さないように
決められた道通りにプリントするだけ
そこには感情などない
自分の考えを書き込む場所などありえない
ただ当たっているか間違っているかの二つだけ
なんて反人間的な反芸術的な試験だろうか
こんなもので僕の人生が決まってしまうだなんて

CoyaNote2000032

心を捨てろ 何も考えずにただ詰め込めばいい
客観性を持って重要語句をメモリーすればいい
腕と鉛筆をプリンターにしてデーターをそのまま
プリントアウトすればそれがその機械の性能として評価される

学業特待入学試験合格発表

勝った 僕は勝った
人生のレースの第一コーナーで
他人を蹴落として
自分の保険を手に入れた
安全なイスを確保した
そう僕は戦地から無事帰還し
多くの敵を倒した勲章として
合格のメダルをもらったのだ
数少ない人間にだけ与えられる
名誉
うらやむ周りの声
その声の聞こえが実に心地良い

だが油断はできない
すぐにまた別の戦争が始まる
僕はそこへ出兵する
保険があるからと気を抜いていると
いつどこで不意撃ちされるか分からない
常に気を張っておかないと
そして僕はこの戦争にも勝って
より多くの勲章を手に入れなくては
もっともっと他人を蹴落とさなくては
生きるために

CoyaNote2000033

この試験の向こうにある幸せのために
僕は勝たなくては
たった一度の勝利ぐらいで安心せず
もっと自分をがけっぷちにまで
追い込まなくては
あと一歩下がれば落ちてしまいそうなところまで
追い詰めて
そしてそこから勝ち上がって
幸せを手に入れなくてはならない

CoyaNote2000034

勝った また勝った ついに勝った やっと勝った そして勝った
僕はもう一つの戦争にも勝った
他人を蹴落とし安全なイスを
しかも今回は僕がより多くの敵を倒した特別の勲章として
免除という待遇がついた
他の兵士が嘆いているのを尻目に
僕だけが喜んでいられる

CoyaNote2000035

さあ全ての準備は調った
順調に着実に一つ一つ勝ち進んで
僕は今戦うための原点に立った
受験票の青い剣と赤い剣の
二つを持ち
いよいよ大戦に挑む
負ける気はしない
二つの剣は自信となって
僕の腕の中でしっかりと握られている

通知表

明日はいよいよ通知表が配布される
僕の人生を大きく左右する
大事な大事な評価たち
僕の命よりも大切な数字
身長を10cm縮ませてもいいから上げたい
限られた数字
まあ人が評価するものだから
テストの点数で全てが決まる
私立学業特待生入試よりは
よっぽど人間的であろう
しかしその中にも厳しい競争が
戦争が起きている
一つでも上にいかなければと
他人を蹴落として上に登りつめて
裏で工作をして 賄賂を出して
評価を上げるためだったら何だってする
感情なんて捨てて
それだけに専念する
そしてそういった涙ぐましい努力の結果に
一喜一憂して
そうして僕の人生を
機械の性能をチェックする検査員にムリヤリ決められる
自分の人生は自分で決めると言っておきながら
生徒達の人生を掌の上に乗せて
好きに決められる 自由にいじくり回せる
気に入らない生徒を堂々といじめられる
そんな学校の中で僕が僕でいるのは
本当に大変だ
さあ明日の通知表で
僕の人生は決まる

CoyaNote2000036

僕はもう死んだに等しい
僕の人生は残酷な大人によって
ムリヤリ決められてしまった
もうどうすることもできない
こんな数字では今度の大戦に勝つなんて
とうていできない
なにせ今度の戦争は今までのものとは
わけが違う
選び抜かれた高性能マシーンばかりが集うのだ
その中で一つでも欠陥があったなら
その機械はたちまち落とされてしまう
使えない道具はすぐに捨てられる
僕はもはや生きられない
生きる道をふさがれてしまった

CoyaNote2000037

さあ冬の夜空を見ようじゃないか
カーテンなんかで美しい空をふさいではいけない
窓を開けて外に出て
空を見よう
美しい星達の無言の輝きに
自分の悩みをあずけてみよう
視界を少しだけ曇らす白いため息に
どうかこの曇りが早くなくなりますようにと
早く一刻でも早くまた夜空が見られますようにと
なんだか寒さが快くなってきた

CoyaNote2000039

今日はクリスマス・イヴだという
恋人達が一年で最高な愛を告白できる
でもそんな日にしか告白できないようでは
聖なる夜の力を使わなくては愛も見せられないようでは
人を本気で好きにはなれない
こう思うのはおそらく僕だけで
プレゼントをあげたい人に届かないから
悔しくて言っているだけだろう
もしも僕のそばに好きな人がいてくれたら
僕は今日という日の聖なる力を使って
プレゼントを愛をその人にあげていたというのに
どうして
どうして
どうして
どうして
どうして

カズー

最高だ 自分の独り言がメロディーになるなんて
僕の心にふっと浮かんだ
たった一つ二度とないメロディーを
いとも簡単に演奏できるなんて
こんな楽器があっただなんて
音がまたいい トランペットにも負けない
切ない音 この音を
僕だけのメロディーを奏でるなんて
こんな楽器があったとは
これで僕はずっと音楽をやっていける
カズーは最高の楽器だ
心にある一つのメロディーを
歌うこと そう歌うことで
曲になるのだ
そこには奏法の難しい楽器や
読むのが難しい楽譜もいらない
ただ歌とカズーとそして心があれば
曲は歌は創れるのだ
これこそが僕の音楽だ

CoyaNote2000040

楽器屋の中は僕の心をくすぐる
宝物でいっぱいだった
その中で自分を抑え込んで
冷静に自分の必要な物を見つけるのは
大変だ
それだけ興奮してしまった

CoyaNote2000041

帰る時土手の上で川に向かって
トランペットを吹いている人がいた
夕日を背にして力強くメロディーを奏でていた
いいなと思った
誰にも見せたくない自分の気持ちを
高みから川に向かって叫んでいるようだった
太陽を背に そう太陽に見守られながら
誰にだってあるはずだ 一人になって
思い切り叫びたい 楽器を弾きたい
自分の気持ちを表現したい時が
そんな時は高い所から
どこか自然に向けて
母なるものへ向けて
その気持ちをメロディーにして
そっと あるいは力強く
奏でたい
その時のメロディーは
音楽的ではなく感情的に
心に響くのだ
僕も今夜あたりベランダから
夜空に向けてブルースハープや
あるいは詩を朗読してみたい
自然という聴衆にだけ
自分の気持ちをそっと表現したい
あるいは今日買ったこのカズーで……
そんなことを思いながらカバンに少し触れて
自転車をこぐ足に力を込め
帰り道を急いだ

CoyaNote2000042

誰とも顔を合わせずに一人で気兼ねなく帰るために
少し遠まわりをした
かなり険しい道もあったが
おかげでいい光景にあった
夕日が向こうに見え
空はうっすらと青く
そして無言のままの土
こんな光景の真ん中を
自転車で走れば
ふいに感情的な気分になれる
同じ街の中なのに
いつも通る道とは
まるで別世界に迷い込んだような
そこは不思議な場所だった

CoyaNote2000043

クリスマスという日に少しでも外に出て
その空気に触れて
何かを掴むことができた
街という目に見えない巨大な存在の中で
僕という人間の心の中に
そっと一つ生まれた感情が
のちに芸術として形になるのだから
寒さはその証だと思えた

CoyaNote2000044

ああ悔しい さっき最高のメロディーが生まれたのに
自分の心の中にあった感情が
カズーを通してメロディーとなって
心に響いたのに 一度しかない感情だから
もう二度と同じメロディーを創ることはできない
音楽とはたった一度の感情を
即興が創る芸術なのだ

CoyaNote2000045

ああ悔しい もしもカメラがあったら
あのトランペット吹きの青年を
たった一人で川に向かって
トランペットを吹くあの青年を
撮っていたというのに
自分がいいと思うものを
その一瞬のきらめきを
永久に残せるのが
カメラなのだ
今度からはカメラを持ち歩こう
僕は写真芸術家だ

CoyaNote2000047

小学校の頃は時間の流れがゆるやかだった
しかし今はあまりにもそれが早すぎる
小学校の頃よりも長い時間起きているはずなのに
やはりそれは
時計の中で生き 勉強に追われる生活の中で
時間の流れを感じとる心が
衰えてしまったのだろう
もっと心を鍛えて
時間の中で生きなくては
僕はとんでもない場所へ行ってしまう
ああ あの頃に戻りたい

CoyaNote2000048

今年ももう終りである
本当に一年というのは早い
今年は二〇〇〇年ということで特に騒がれている
世紀末だと
二十一世紀だと
時間という平等で残酷なものを
百年を一束にして積んでいって
今日で二十個目
そして明日には新しい二十一個目の
時間の箱の中に入ることになる
でも僕はそういうのがあまり好きではない
ただ今日から明日へ
それだけでどうしてこうも騒ぐのだろうか
僕にとって大切なのは
激動の百年でも新しい百年でもない
一日一日必死で生きてきた
十五年間なのだ
この十五年間は
人類の二千年間に較べたら
実に短いものだが
この十五年がなければ
僕は今ここにいないのだ

2001年

CoyaNote2001001

新しい年に二十一世紀になったという実感が
まるでない
ただ風が冷たいということ
それだけがこの体で感じている
もはや時間という考え尺度は捨てて
生きられるだけやれるだけ
自分の限界まで
それしかない

CoyaNote2001002

何でもやりとげた時の達成感はいいものだ
僕はあの一瞬の達成感のために
今を生きている
逆にできなかった時の悔しさも
心を強くする圧力だと思って
今を生きている

CoyaNote2001003

ピンと張りつめた空気 静寂感
僕はこの部屋の中でなら
自分らしくいられる
ストーブなどで熱せられてしまうと
本当の自分は溶けてしまう
冷たい部屋の中で
一つ一つ生きて
ため息やそして汗が
快い達成感となる

CoyaNote2001004

ダメだ 今日は何もかもが上手くいかない
やりたいことが見つからない
こんな日々を生きていてはいけない
もっと躍動のあるもっと劇的な
もっと感情的なもっと芸術的な
日々を生きなくては

CoyaNote2001005

表現したいことはたくさんあるのに
僕はどうしてもそれができない
心の中で震えそうな言葉達が
それを文字にした瞬間に
消えてしまいそうで恐い
芸術はたった一瞬しかない
その一瞬に全てを表現しなくてはならない
表現の仕方を間違うと
一瞬を逃せば
それでお終い もう二度と同じ表現はできない
芸術とはそういうものだ
だから僕はいつまでたっても表現ができないでいる
心の中でだけ言葉はあふれてる
いつかきっとこの言葉を最高な形で表現できる
その日が来るまでずっとこの言葉は心に隠しておく

CoyaNote2001006

芸術家は表現をするのにこだわってはいけない
ある特別の日にしか表現できないのは
本当の芸術家ではない
芸術家にとっては毎日が創作の日々である
一分一秒に全てをかける
明日のことなんか考えていられない
そう毎日だ
毎日一日のことだけを考えて
生きろ
創作しろ 表現しろ
時間や場所になんて
こだわるな

CoyaNote2001007

今日を精一杯生きる
それが積み重なって
昨日になりやがて人生となる
ただそれだけだ
今日だ とにかく今日だ
この瞬間を生きる
明日なんて考えてはダメだ
明日なんて考えているから
表現が創作ができないんだ
心の中にあるものを全て吐き出せ
一つも残さず
体で心で
今日という日だけを生きろ

CoyaNote2001008

例えば今日のギターの練習だってそうだ
僕は今日が特別の日だから
ギターを弾いたのかい
違うだろう ギターを弾きたくて仕方なかったから
弾かずにはいられなかったから
僕はギターを弾いた
それにカズーで新たなメロディーも生まれた
表現したいことはたくさんある
芸術家にとって毎日が創作
それに特別なものなんてない
一日を生きるだけだ
明日やその先のことなんて考えず
ただ今日表現できるものを全て表現する
そうやって生きていくんだ
芸術に時間なんて必要ない
必要なのはたった一つ
心 そう何かを感じる心が
表現したいものを全て表現する

CoyaNote2001009

僕は不器用な人間だから
消しごむなんか持っていない
他の上手い人のように
細かいシャープペンシルも持っていない
僕はただ描くしかない
消しごむを持っている奴のように
一度描いてしまったものを
きれいに消し去れない
そのままずっと残ってしまう
僕はそれを消せないから
描いた上からまた描いて
それが気に入らないと
グチャグチャに塗り潰して
真っ黒に汚して
見えないようにして
ごまかすしかない

CoyaNote2001010

僕には余裕がある
大戦に勝ったその報酬としての
束の間の休息
他の兵士達が
紛争に駆り出されるのを
僕は笑って見下すことだってできる
その間にそうほんのわずかな
この瞬間に生きる
全てをかけて生きる
またすぐに今度は史上最大の戦争が始まる
その前に死の前に
せいぜい抵抗して
生きる

CoyaNote2001011

私立高校の
一般試験だとか
単願だとか併願だとか
そんなことは一切僕には関係ない
僕はその前の学特試験で
合格という余裕を得た
余裕を持てなかった人間どもが
今頃になって必死にやっている姿は
とても滑稽である
笑っていられるのはおそらく今のうちだけだ
笑えるだけ笑え

CoyaNote2001012

とにかくやることだ
やらなければ何もない
やったとしても何もない
でもやるしかない

CoyaNote2001013

僕がもしあそこにいたら
きっと息苦しくて仕方なかっただろう
今の場所で一応は満足

CoyaNote2001014

もっと自分をよく見つめろ
僕っていったい何なんだ
僕は僕なのか
僕はどうなんだ
僕はどう生きるんだ
僕は何が欲しいんだ
僕はどうしたいんだ
答えが見たいのか
答えなんてない
それをさがすだけで終ってしまう
僕って何
何なんだ
僕はどうしたい
何をすればどうなれば
僕は満たされる
愛かそれとも他の何かか
とにかく何かが欲しい
何かをしたい
僕 僕 自分とは

CoyaNote2001015

何をそんなに考えているんだ
僕が何をしたっていうんだ
ただ「あゆみ」とかいう文集の
「10年後のぼく」という欄に
「詩人、絵描き、作家」と
書いただけじゃないか
たったそれだけのことで
どうしてそんなにも考え込むんだ
他に書きたいことがあるっていうのか
もう遅いよ 答えなんかない
答えなんか求めようとするから
考えてしまうんだ

CoyaNote2001016

僕が満たされるためには
まずやりたいことをやる
当たり前かもしれないけれど
今の僕は何もかもやろうとしない
やろうと思ってもやらない
もっと思ったことを素直に
動けばいい
僕が満たされるためには
とにかく動くことだ
動けばとりあえず変わる

CoyaNote2001017

――少しは落ち着いたかい。――
うん。だいぶ落ち着いた。
――そうだろう。本を読むと、心は落ち着くのさ。――
今までの悩みがウソのようだよ。
――悩みを解決する答えは本の中にある。
  それを自分自身で探す。
  これほど良いことはないだろう。――
そうだね。
――本を読むってことはだね。一つの芸術なんだよ。
  それもオペラのような総合的な芸術だよ。
  文学の表現を味わい、同時にその言葉から、
  頭の中に情景を浮かべる、つまり絵を描く。
  そしてその時の登場人物の気持ちを表す
  音楽が心の奥の方から響き、
  あらゆるものが表現され、物語は進む。――
だから、本を読むと心が落ち着くんだね。
――そう。これからは毎日本を読もう。――

CoyaNote2001018

今日は何だか何もかもやる気が出ない
空しいだけだ
他人のバカ騒ぎの中に入ってみても
すぐにくだらなくてやめてしまう

CoyaNote2001019

一度チャンスを逃してしまうと
あの美しい星は
もう二度と見られはしない

CoyaNote2001020

水が使えなくなった 蛇口をひねればすぐに水が出る日々の
突然の出来事に人間は結局どうすることもできない
水がなければ何もできない
水がなければ生きていけない
人間は水には勝てないのだ
それなのに人間はその事にまるで気付いてなくて
まるで自分達は水を支配しているかのように
思っている
しかし水は違った
水は人間達に確かに捕まった
しかし奴隷として使われている間も
しっかりと復讐の機会を狙っていたのだ
そして冬の日にそれはいっせいに始まり
人間達はその突然の抵抗に
どうすることもできなくなってしまい
いずれかは死んでしまう

CoyaNote2001021

せっかく今まで上手くいっていた編み物が
少しのミスで全てがだいなしになって
全てを壊さなければならないことはよくある
友情なんてものもそうだろう
今まで上手くいっていた
いや上手く見せかけていた仲が
少しのミスでほころびが出て
そして全てが壊れてしまう

編み物はまたはじめからやり直せばいい
だが友情を直すことはできない

CoyaNote2001022

もう誰も信じない 信じればすぐに裏切られる
もう誰も愛せない 愛せばいつも傷つけてしまう
すぐに他人の心の奥底が見えてしまう

CoyaNote2001023

社会とは何だ 正義とは何だ 愛とは何だ
「本当のこと」とは何だ 「正しいもの」とは何だ
何をすればいい どうすればいい
どこへ行けばいい どう生きればいい
下等生物は今日も退歩しながら
呼吸をしている
僕はどうする

公立高等学校入学者選抜全日制課程前期選抜志願理由書

僕はどうしてこの高校を志願するのだろうか
その理由をたった一枚のうすっぺらな紙の中に
無理矢理押し込めて書かなくてはならない
僕がこの学校を志願する理由はたくさんある
僕の夢を叶えるための通過点として
僕はこの学校を志願する
そう書きたいことはたくさんある
しかし僕はどうしても書けない
自分の気持ちを素直に書けない
僕のこの素直で感情的な志願理由が
悪い印象を与えてしまうかもしれないという虞
僕の書いた理由が厳しい審査にかけられるという事実
そしてこんな志願理由書なんてものはどんなに良いことを書いても
何の意味もない全ては成績だけで決まってしまうという
絶望的な現実
あらゆることが僕に素直に志願理由を書かせようとしない
成績では無理だという現実
どんなに良いことを書いても意味がないというあきらめ
そして不安
僕はどうすればいいのだろうか
もうすぐ提出の締め切り日になってしまう
それまでに自分の気持ちを素直に書けるだろうか
それとも心を捨てて悪い印象を与えないような
月並みな理由を書くのだろうか

生きるためにはどちらをすればいいのだろうか

CoyaNote2001024

心を捨ててマニュアル通りに生きればいいじゃないか
そうすれば安全な未来が待っているんだから
――そんなことができるか
  僕は自分の気持ちに正直に生きたいんだ――
バカだなあ
そんなことをしても何の得にもならない
賢く生きるために気持ちなんてものがあってはダメなのさ
他人に合わせて決して乱れることなく同じ様にしなくては
――そんなことは聞きたくもない
  僕は自分のやりたいことを見つけてやるんだ
  決して満足することなくいつも向上心を持ち続けるんだ――
何言ってるんだよ
ただ与えられた課題をやればいいんだよ
それ以上何も望まないでさ
とにかく型にはまれよ そうしないと生きられないよ

CoyaNote2001025

人間は向上心がなければ
衰退してしまう

CoyaNote2001026

いつも返ってくる度に傷ついてばかりだったテストが
今日はどういうことだか喜びになってしまった
しかしそんなことはどうだっていい

CoyaNote2001027

物事は決して焦ってはならない
落ち着いていつものように冷静に
じっくりとよく見つめて
そして一気にやる
それが生きるということだ

CoyaNote2001028

どうすればいいんだ
僕がもし志願理由書を書いても
「-」になることはあっても
「+」になることは絶対にありえないんだ
そんなことはできない
僕はいつでも前向きに明るい方向に
考えたいんだ

CoyaNote2001029

簡単なことじゃないか 心を捨てればいいんだよ
ただマニュアル通りにはみ出すことなく
目立たず生きればいいんだよ
そうすれば「+」になることは絶対ないが
「-」になることもないんだ
損したくないだろう

CoyaNote2001030

人生とは0から始まってだんだんと増やしていく一つの式だ
多くは「+」となって人生は大きくなっていく
時には「-」のこともあり小さくなってしまうこともある
そしてたまには「±0」も必要だ
大きくならなければ小さくもならない
そういう式があってもいい

CoyaNote2001032

まるで麻薬を打ち込まれたかのように
僕は突然ワークをやり始めた
そして止まらなかった
いや止まれなかった
一度動き出した腕は
ワークが埋まるまで
ただひたすら動いていた
そしてあっという間に
ノルマのワークは終ってしまった
麻薬の後遺症はどうやらなさそうだ

CoyaNote2001033

何をやっても上手くいかず
自分や世の中に嫌気がさす
こんな日は何をしても
どうなっても
僕は結局疲れてしまう

群馬県立高等学校前期選抜試験

希望を持ってはいけないのか
前期選抜試験を受けるというのに
合格することを考えてはいけないというのは
一体どういうことなのか
受けるからには絶対に合格するんだという
そういう気持ちで臨まなければ
合格はないはず
負けると思って戦ったのでは
戦争で勝つことはできないはず
僕はたとえ希望をつぶされたとしても
明日は全力でいく
弱いところや負けるということを見せれば
そのすきをついて敵がいつどこから撃ってくるか
分からない
全ての力をそそいで
つまりは希望を持って
戦う

CoyaNote2001034

他人を蹴落としてでも勝ってやれ
自分さえよければそれでいい

CoyaNote2001035

面接というのは実に人間的である
ただ数字の上に線を引っぱって決めるのではない
僕は人間だ
人間だ

CoyaNote2001036

この試験の向う側には
本当の幸せがある
幸せになるためにも
僕は勝つ

後期選抜入学願書

どうしてまだ負けてもいないのに
次の戦いの準備をしなければならないのだ
僕はまだ負けていない
たとえ可能性が低くても
チャンスがある限り挑み続ける
戦争責任の調印なんて
本当に負けてからすればいい
今はただ不安定な心を
少しでも癒してくれるだけの
優しい言葉が欲しい
そうやって心を強くしておけば
たとえ負けたとしても
そのショックに耐えられる

群馬県公立高等学校前期選抜試験不合格

負けた 僕は負けた
それは初めての敗戦
今までにない屈辱
もうだめかもしれない
立ち直れない

他の人間は勝った
僕だけが一人取り残されてしまった

これでもう卒業の前までに自分の進路を決めることが
できなくなってしまった
勝者のあの見下したような顔
もうこれで戦わなくてよい 遊べるという
安堵の表情
そんな現実の中で僕は
最後の戦いの準備をしなくてはならない

CoyaNote2001037

ほらまたすぐにそうやってためらう
君は本当にやりたいことをやらない
やろうと思うのに
どうしてもできない
何か恥のようなものが
心のどこかにあって
君の体を動かそうとしないのか
そんなものがあってはだめだ
そんなものがあっては
何もできない

CoyaNote2001040

高校生 大人の仲間入り 16歳 でも現実は…

16歳の日々

今日から16歳になった 本当の意味での高校生になったのだろうか
15歳をある意味で特別な限られた神秘的な時間にしていた
15歳ですることには何にでも意味があると思っていた
15歳だから抵抗ができた
何をやっても許される 何をやっても自由でいられる
何をやってもそこに感情がついてくる
それが15歳だった
どれだけ暴れられただろうか
もっと多くのことを考え
もっと多くのことをやり
もっと多くのことを残したかった
しかしそんな輝かしい日々も終り
これからは16歳である
15歳だからこそできたことが
16歳でやっても意味はなくなってしまう
もう何もできない
何をやってもそこには大人という責任がついてくる
許されないことが増える
抵抗も暴れることもできない
そんな中で
16歳の日々は動き出す

CoyaNote2001041

しばらく白紙が続いた理由から書き始めよう。

このノートはずっと中学生の僕がその時々時々自分の思いを書いてきたのだが、僕は中学校を卒業してしまった。そして高校生になってしまった。

この劇的な環境の変化は、とても忙しい毎日を作り上げた。毎日朝早く起きて、満員電車に押し込まれて1時間かけて登校し、そしてそこで6時間、時にはそれ以上ずっと勉強をする。内容はとてもレベルが高く、ペースも速い。周りがみんな敵に見える。そんな生活をずっと続けていたせいで、体が慣れてしまった。毎日毎日勉強の中で、自分の思ったことを書く時間なんてないし、書くようなこともない。

しかし、やはりそれでは何か物足りなくなってきた。当り前である。いくら勉強の毎日でも、そればかりでは仕方ない。中学生の時のようにやらなくてはと思うようになってきた。

そして何よりも、僕は中学生の時と同じように、美術部に入部した。厳しい勉強で疲れた後、重い足を引きずってカギを取って、美術室に行く。しかも部員は僕を含めてたったの三人。一年生は僕だけ。先輩も顧問もほとんど来ない。と、まるで中学校の時と同じような部活である。それでも僕は、1人がもともと好きだから、楽しんでやっている。部活をやっているうちに、再び中学生の時のあの感情が戻ってきた。学校の中で唯一、僕が僕らしくいられる場所なのだ。

そういうわけで、僕は再びこのノートを開くことにした。と言っても、僕はもう高校生である。少しは大人になったつもりだ。だから中学生の時のように、生活の全てを藝術にするようなことはしない。勉強と区別を上手くしていきたい。

いずれにしても、今日からまた、このノートに、時々時々に自分の思ったことを書くことにする。