第4冊ノート(2002年12月~2004年4月12日)

2002年

CoyaNote2002114

一日のうち一回は
空を見上げよう
花を見つめよう
樹木を見よう
その瞬間には
何も余計なことは考えず
ただ目の前にあるものを
形を色をじっくりと眺める
頭の中をからっぽにして
そこに未来なんて描かずに
そこに詩的な要素なんて含まずに

あわただしく流されるように生きている
こんな毎日の中で
主体性に欠き受け身になってばかりで
あらゆることにおいて管理されて
疲れ果てている生活の中で
自由らしい時間を得ても
その過ごし方を忘れてしまい
ただ殺しているだけなら
いっそ空だけを見上げよう
そっと花だけを見つめよう
ずっと樹木だけを見よう

目に見える成果ばかり気にして
何かしなければと焦っていても
仕方ないこともある
心に余裕がないとならない
空や花や樹木で
心を少し落ち着かせる

CoyaNote2002115

ある日突然なんの前触れもなく唐突に
あまり知らないはずの人に声をかけられた
その時どれだけ昔のままでいられただろうか
相手に変わったと思わせないような
こんな奴だったのかと思わせないような
すなわちどれだけ普通に冷静にできたか
これが自分という人間性を見る一つの基準となる
さて今回はどうだったろうか
おかしな箇所はなかったか
よそよそしくはなかったか
言葉づかい 顔 服装 考え方
なにもかもが変わらずに
ずっと昔のままでなければならないのだ
何時 何処で 誰と会っても
これが自分であると示せるように

CoyaNote2002116

花粉が腕についた
臭いの強い色彩が
こすってもなかなか落ちない
美しくない花は
ものを汚すこととなる

黒を封印する

昨年の暮れの今頃に
まず万年筆のインクを変えた
黒から青に
それから少しずつ
黒を封印していった

ずっと黒であった
黒であればとりあえず安心だった
ほかの華やかな色に 彩度のあるものに挑むのが
とても恐かった
もしも失敗したらとんでもない恥をかく
それを避けるために無難な黒にしていた
黒なら成功も失敗もなかった
黒いシャツ ジャケット 靴
黒い文字 財布 マグカップ
なんでも黒であった
黒は基準の色であり
黒は妥協の色であり
黒は逃避の色であった
とにかく黒であった

だがやがて黒に疑いをもつようになった
果たして黒でよいのか 他の色の方がよいのではないか
そう思うとだんだん黒であることが恥ずかしくなっていった
そこで一度黒を封印して他の色に挑むことにした
決して黒を捨てたわけではない
茶色い財布 黄色いシャツ
青いジーンズ 白い鞄
今は少しずつ他の色が増えている
だが決して髪の色を変えることはしない

CoyaNote2002117

クリスマスまでに何かをやらなければ
今年までに何かをやらなければ
十七歳であるうちに何かをやらなければ
そうやって焦るだけで
結局何もできていない
暮れゆく街の赤や緑や白の
華やかすぎる色に追いたてられて
完全に自分の居場所を見失っている
ここはどこなのか
しっかりと自分の色を見つめることから始める
そうすれば必ず何かをできる

CoyaNote2002118

どうしてこれほどまでに空しいのであろうか
話を整理して考えてみよう
12月24日のいわゆるクリスマス・イブの日だった
高校で予餞会というものがあった
そしてなんとそれに美術部が出たのだ
一発芸であった
今年から完全週五日制の授業となり
授業日数の確保と
予算削減のために
毎年恒例の予餞会が廃止された
だがそれに猛抗議する生徒により
しょぼい予餞会が復活することとなった
予算なんて最初から組まれていないので
当然プロの芸人を呼ぶなんてことは不可能
生徒による出し物だけとなった
なんとか盛り上げるために 笑いをとるために
生徒会本部や実行委員は
各部活に出演を依頼したという
請われてそしてまるでいやいやのように
大きな態度で部活動の連中が出るのが
それまでのそして今回の予餞会だったのだ
美術部はどうしたことか自分達から志願したのだ
生徒会本部に予餞会に出たいのだと
おそらくは驚かれただろうが
まあとりあえずは出演が決定したのだ

それから いや出演決定の前から
それなりに準備や練習をやってきた
本番で成功するため
予算はないから賞品など出ない
それでも構わない
ただ美術部の存在を知らしめるため
名誉のために出演したかった

他の部で出演するのは
硬式野球部 サッカー部 ラグビー部
この三部活が今まで予餞会を牛耳っていた
そして今年も
しかし今年はそこに美術部が乱入する
体育会系の男臭い肉体だけの一発芸に
文化部が対抗する
そんな意気込みだったのだろうか
とにかくもうあの三部活だけにいい思いはさせない
美術部の存在を
そして意地を見せてやる
しかしどうにもそう簡単にいかない
リハーサルは結局できなかった
絶対にしてはならない
やってはいけないとおそれていた
ぶっつけ本番であった
そして実行委員や他の部の連中が
こんなことを話しているのが
まるでささやくように耳に入ってきた
「今年の予餞会はいつもの三部活だけが出るの?」
「いや、あと美術部も」
「は!? 美術部!? 何やるの?」
「知らない」
そのまま聞くだけの知らんぷりでいたが
これで闘志にさらに火がついたのであった

そしていよいよ本番
美術部は三番目の出演となった
最高の順番である

一番目はラグビー部
上半身裸でむき出しの筋肉を
これでもかと見せ付けるラガーマンが
一人椅子に座っていた
そしてサンタの格好をしたもう一人のラガーマンが
椅子にいる彼と
共に上半身裸で
オイルを塗り合った
サラダ油を
それだけだった
まるで岩のような筋肉を見せびらかしていた
それでも会場は笑いが出た
これには勝てると思った

二番目のサッカー部は
よくあるふざけであった
体育座りの連中が
一人ずつ作文を読み
その自虐的かつ愚かなる内容に
会場も程度の低い笑いを上げていた
これにも勝てると思った

美術部の番は唐突にやって来た
司会もどう紹介していいかわからず
部活名を言っただけでとっとと引き上げてしまった
会場は美術部の名前を聞いただけで笑い出した
そしてタイミングがずれて登場した
「ジングルベル」をブルースハープで吹きながら
サンタの格好をして
華やかに登場するつもりだった
頭の中では何度もそのイメージを描いていた
だが実際は途中でつっかえ間違えて
会場が笑うだけだった
二曲目の「赤鼻のトナカイ」も
途中で間違えた
三曲目の「きよしこの夜」は
どうにか吹き終えたが
四曲目の「サンタが街にやってくる」では
途中で楽譜を忘れてしまい
何度やっても正しく吹けず
曲として成立できずに
途中でやめてしまった
これには会場から大いなる笑い
そして最後の「歓喜の歌」では
二つの穴をいっぺんに吹いてしまい
重なった音が曲を殺し
結局ろくに吹けないまま
美術部の一発芸は終わった
どれだけ落胆したことであろうか

最後の硬式野球部の一発芸は
もはや書く気にもならない
低俗でくだらないものであったのは言うまでもない

その後三年生がプロレスの覆面をかぶり
空手の型と棒術を披露し
会場は大いに湧き
そして今度は先生方のモノマネで
笑いはピークに達した

やがて先生方の歌になり
最後は三年生代表のお礼の言葉となったのだが
なぜか「一、二、三、ダーッ!!」になり
よくある体育会系のノリで予餞会は幕を閉じた
以上が12月24日の出来事である
そして美術部の一発芸が終わった後から
この空しさはずっと続いている
体育会系の実行委員の中で
まるで他所物扱いされたからか
あるいは手際のとても悪かった
予餞会の舞台裏を見てしまったからか
ブルースハープなんかよりも
体育会系のノリの方がよっぽど受けたからか
とにかくとても空しい
失敗したからか
笑いがとれなかったからか
とても寂しく悲しい
寒気ばかりがする
そして予餞会に出演したことが
まるで感覚のない幻のようなものになってしまった
心がとても空しい

2003年

CoyaNote2003001

名誉や栄光よりも
友情を選ぶなんて
そんなことを言うつもりはない
ただ一緒になった帰り道
寄りたい場所があるので
途中で別れようとしたけど
さよならが言えずに
結局向こうが家に着くまで
共に走って
そしてわざわざ来た道を戻って
用事を済ませたことが
律儀などというものではなく
ただの馬鹿野郎のするものだと
それだけは分かっている
とにかく面倒なことは避けたい
何事もない

CoyaNote2003002

疲れの染みた体を着用して
少し休息をとる
ぬくもりは
けだるさを強調する
そして僕は
読み飽きてくたくたになった
今日の新聞を再び手にとる
何度見ても新しいニュースのない
何度見ても同じことだけの
新聞を投げ捨てて
眠ってしまう

CoyaNote2003003

何でもない平凡な一日の
相変わらずの新聞を
どこかに保存しておいて
何年か経って読み返してみるのが
とてもおもしろい
何でもない出来事が
まるで歴史上の大事件のように見え
その時代を表し
そしてなつかしさに浸れる
それは古くなって
黄ばんでしわの寄った
重要文化財の
あの日の新聞のせいだろう

CoyaNote2003004

カエルを踏んだ時の
断末魔の叫びのような
みにくく低俗な声を出しやがって
この野郎
ただでさえこの声が嫌いなのに
さらに汚すな
黙ってろ

CoyaNote2003005

上手い話には必ず裏がある
一度騙されたら
警戒して二度と他人を信用しなくなる
もう騙されない
もう成功もしない

CoyaNote2003006

ついに御法度に手を出してしまった
それだけはやってはいけない
最大の屈辱を
まるで簡単にやってしまった
もはや信念も何もない
禁じ手すら破る
とにかく一瞬の快楽を味わいたい
たとえその後に
とてつもなく大きな空しさに襲われても
そのためには
何だってやってしまいそうだ
それくらい今は危険な状態である

群青色の恋心

蝉はいつから鳴いているのでしょうか
気がついたらもう鳴いていました
そんな夏の日に
僕は気がついたらもう君を好きになっていました
前からそんな予感がしていたのか
それとも突然なのか
君が目の前に現れたのです
そして笑っていました
それだけで僕はもう好きになっていました
やがて季節が変わっても
君を想う気持ちは消えずに
そしてある冬の日に
僕はますます君のことが好きになりました
理由なんてありません
直感で好きになるのです
君のその可愛い顔が
僕を好きにさせたのです
もう忘れられません
頭の中はずっと君のことでいっぱいになっています
君のその顔が
君のその黄色いマフラーが
君のそのコートが
君のその白い靴が
そして君のその
群青色のスカートが
ずっと心の中に浮かんでいます
できることなら告白したいけれど
絶対にできない
ただ今日も君の姿を見られただけで
嬉しい

CoyaNote2003007

問題です
ここに座っている僕と
向こうに座っている人と
どちらが正しいでしょうか

あちらの人はアルバイトで月に5万円はかせぐそうです
自活しています
派手です

一方僕は自分の手でお金をかせぐことなどできず
一人では決して生きていけません
全身黒で地味というよりもはや存在が消えかかっています

お互いにどうやら高校生らしいそうです
というよりも同い年だそうです

僕は正しくないでしょうか
あちらの人が正しいでしょうか

僕はどうすれば正しくなれるのでしょうか
あちらの人になれるのでしょうか

CoyaNote2003008

与えられた課題をこなすだけで
一日が終わってしまう
冷たい風に吹かれても
ただ寒いだけ
最近では手袋やマフラーが
お気に入り

CoyaNote2003009

100円玉1枚と
誰かのための穴空き硬貨で
これだけの物が買える
本当にこれだけの物が
不安になるほどに
品揃えがいい
そしておもしろい

CoyaNote2003010

休みなく二週間も戦い続ける日々
意義も見出せずに
流す時間
淡々と黙々とこなすだけの課題
眠るだけに費やす束の間の休息
寒さ 疲れ ストレス
喉を襲い
そしてついには
倒れる

CoyaNote2003011

いつものように まるで呼吸でもするように単純に
電車に乗り駅に着きそして歩き出す
すると後方から女の子の話し声がする
「なんでいつもあいつはこの電車にいるの」
「しかも一緒の車両に」
「今度電車変えようよ」
明らかに「あいつ」を嫌う声
もしかしたら自分のことではないかと
不安になる
気味の悪い物体だと思われている
それはおそらく事実だろう
仕方のないこと

そして今日も気味の悪い物体の後方で
女の子達の話し声がする
「いつもここにいるよね」
「さっき目が合っちゃったかも」
「なんか眠そうな顔してたよ」
もはや気味の悪い物体というよりも
嘲笑される物体と化している

これからもずっと
こうして後ろ指をさされるのだろう
それは屈辱だろうか
それは不快感だろうか
それは恐怖だろうか
それは罪だろうか
それは存在価値だろうか

被害妄想

CoyaNote2003012

箱の中に無造作につめ込められた
長さのふぞろいな鉛筆を
見るだけで触れるだけで
とてつもなく感傷的な気分になってしまうのは
なぜだろう

CoyaNote2003013

毎日は消費するためにあるんじゃない
生きるためにある
毎日は無駄にするためにあるんじゃない
何かをするためにある
毎日はやり過ごすためにあるんじゃない
その中で走るためにある
毎日は乗り切るためにあるんじゃない
成しとげるためにある

CoyaNote2003014

数多く「もしも」を作り続ければ
その中のどれかが
実現するかもしれない
そんな可能性の低いことを
しつこいまでに願って
今日も町工場で
孤独にプレス機に向かって
「もしも」を作っている
近々大量に出荷して
結果を待つ
仮定工場商人

CoyaNote2003015

少しずつ人間性を回復してきたようだ
今までのようにただ与えられたものを
受身的にこなすだけでなく
自分から主体的に取り組む姿勢
それが大切である
指示を待って動くのは
機械にだってできるだろう

CoyaNote2003016

「あの頃誇りに思っていたことが、
今ではただの後悔と憎悪になっているんだよ。」

CoyaNote2003017

分かったよ 要するに
僕が濡れればいいだけのことだろう
君の視界から消えてしまえばいいのだろう
誰か一人 たった一人が犠牲になれば
残りの大人数が救われるのであろう
いろいろな言い訳なんて気にせずに
今すぐに
水の中へ雨の中へ
飛び込めばいいだけのことだろう

CoyaNote2003018

どうも口の中が
ネバネバして気持ち悪い
一度喉の奥に
唾液をためて
一気につばとして吐き出した
血の塊のようなつばが
汚く赤黒く
濁った水たまりの中へ落ちた
知らぬ間に
どこかで出血していた
どうりでさっきから
鼻がムズムズしていたはずだ
その後も血をつばにからめて
何度も何度も吐き出した
嫌なことも一緒にそこに混ぜて
全部捨ててしまいたかった
頭痛を連想させるような
生温かくヌルッとした
とても大きな血の塊を
コンクリートの上に叩きつけた

CoyaNote2003019

とても寒くて感覚がなくなり
意識も失いかけた時に
痛みも感じることなく
傷を負い 水のような血を
流れ出すかのように
指にインクが
付着して
心を汚した

CoyaNote2003020

五個で百円という値段で
昨年の夏に買った消しゴム
それが今日とうとう崩壊した
ケースは強化プラスチックではなく
ペラペラの紙
すぐにボロボロになり
印字面はすり切れて
あっという間に終わった

物の値段と品質は
果たして比例するのだろうか
五倍もの値段のする
正規の文具店での
頑丈なつくりの消しゴムを見て
そう疑問に思う

いろいろな種類の消しゴムがある
メーカー 大きさ やわらかさ
軽くなでるだけで消えるだの
マークシート用だの
うたい文句も様々

どれにしようかとあれこれ迷う
手に取ってじっと見る
一応これにしようと決心する
だがすぐには買わない
消しゴム売り場から
一度離れて
ノートなどを見る

買おうとしたものを
すぐに買わずに
一度遠くから眺めて
店内をぐるりと一周して
それから買わなければならない
義務の存在を認識して
それから買うのが
癖である

ふとうつろな眼差しでいると
後ろからフェードインするみたいに
徐々に音量が大きくなって
呼ぶ声がした
ふり返ると
一応中学校の同級生が
久しぶりとあいさつしてくる
ぎこちなく返事をする
それなりに近況報告などの
世間話というものをする
しかしどこかうまくかみ合わない
向こうがあまりに他人行儀なのか
こちらがあまりに無愛想なのか
ズレを感じるコミュニケーション

「どう、高校は」
「まあまあだよ」
「そうなんだ」
「いたって普通さ」
こんな会話が続く
そして文庫本コーナーへ進む
「ここに何を買いに来たの?」
「文房具だけど」
「ここは文庫本のコーナーだよ」
「分かっているよ」
(君に消しゴムを買うところを見られたくないだけだよ)
心の中でだけそう思いつつ
話をはぐらかしては
ふらふらと店内をさまよう
なんとかしてふり払いたいのだろうか

どうしても消しゴムを買うということを
気付かれたくなかった
こういう状況で偶然会ってしまった時に
「消しゴム」という言葉ほど
自分を不利に追い込むものもないだろう
消しゴムを買うということが
どれだけ恥ずかしく醜いことか

向こうがちょっと目を離した隙に
素早く消しゴムをつかんで
レジでお釣りの出ないように買って
まるで逃げ去るように
店を出ていった
なんでこんなことまでして
消しゴムを買わなければならないのか
こんなところで誰かに見られて
会ってしまうなんて
人目を避けてばかりいる
できることなら
周りの人はみんな知らない人であってほしい

CoyaNote2003021

フィラメントの切れかかった蛍光灯
チラチラと点滅を繰り返しては
誰かがモールス信号を送り続けてくる
僕はそのメッセージを必死で受信して
解読しようとしている
「君はもっと素直であるべきだ」
「もっと変わらなくてはならない」
「思い出せあの頃を」
「どうしてあんなことをしたのか」
「あの頃の自分と今の自分はどちらの方が良いか」
「進歩がない」
「もう残された時間はない」

「何をやっているんだ」

メッセージは警告であり疑念であり批判であり同情である
もしかしてそれは
もう一人の僕が心の中から
投げかけているものなのかもしれない
だとしたら
ただの自己嫌悪なだけである

蛍光灯の点滅が
メッセージであるはずがない
ただ寿命が終わりそうなだけ
消耗品の悲しい最期
そんなものに代弁してもらわないと
自分を変えることができないだなんて
僕はなんて愚かなのだろう
まだ蛍光灯を新品と交換していない

CoyaNote2003022

頭痛のする体
けだるさの伴う空気
埃まみれの手
あらゆるものは汚れている

CoyaNote2003023

あれほどまでに軽蔑していた
雨合羽
それでもこれがないと
濡れてしまうのだ
濡れてしまうのは嫌だよな
まるで切りつけるように
乾燥した日の冷たさではない
指の芯に浸み込むような
ずっしりとくる冷たさ
そんなものを避けるためには
やはり雨合羽を着るしかない
あの頃
盲信的なまでに
守り続けていた
正しさは
今となってはもう
ただの後悔 恥
忘れてしまいたい
過去
まるであの頃の自分のような
甘すぎる黄色い雨合羽が

CoyaNote2003024

友人とかいうとても曖昧として
何ともつかみどころのない存在の
その中でも特にいい加減な奴に
秘密らしきものを暴露してしまった
なりゆきまかせというか
こちらはてっきりみんな知っていると思い込み
復習するように話してみると
友人は全く知らなかった
そこからはまるで崩れ落ちるように
秘密を明らかにしてしまった
友人はとても驚いていた

それ以来友人は
秘密を脅しのネタにしては
こちらに迫ってくる
忘れかけて封じ込めたはずの
古傷を
再びうずかせてくる

友人を楽しませるために
僕は事前にしっかりとネタを用意して
様々なネタを小出しにして
そして友人に披露する
友人は時にうけて時にはダメ出しをしてと
なかなか厳しい評価をする
僕はまるで売れない芸人のように
ネタを仕込んでは
今日もまた友人を楽しませるために
ネタを披露する

CoyaNote2003025

与えられたわずかばかりの時間に
ふしあわせを感じてしまう

CoyaNote2003026

暗闇を手さぐりで歩くのが好き

CoyaNote2003027

猫は過去を振り返らないし未来も見据えない
猫は現在を楽しむし現在しか楽しまない

CoyaNote2003028

これから先は我慢くらべ
僕とあいつと
どちらが長く沈黙に耐えられるか
まずはあいつが先制攻撃として
僕のことを無視し始めた
僕は突然の途切れた会話に
不安を感じてしまう
必死に話題をふりまいては
あいつの注意を引き出そうとしてみる
しかし無駄だった
今度は僕が攻撃をと思ったら
時間切れになってしまった
僕は負けてしまった

CoyaNote2003029

あっちこっちに行くと疲れる

CoyaNote2003030

あの冬の
まだ幼い夜に
興奮と喜びを持って
訪ねた場所に
再び来ることになるとは

何も同じものを二つ作ることないのに
わずかの金のために
おしみもせずに行動する

CoyaNote2003031

穏やかな春の日の

CoyaNote2003032

止まることのない
三年間の列車を
降りてしまえば
もう車内を見ることはできない
もう列車とはなんの関係もない
しかしそれでも
列車の中身を
見てみたいのである

CoyaNote2003033

新聞紙やチラシに
切り込みを入れる
大切な現実が
愛しい憧れが
痛々しく切り取られていく

CoyaNote2003034

迷い込んだ路地裏では
まるで街が違う顔を見せる
幸せな人々の影を
代わりに受けているような人々
小汚い連中 飢えた子供達
表の世界と隔離するように
ペンキのはげたフェンスが立ち並ぶ
小さな空間で彼らは
野球をやっていた
きちんと整備されたグランドなんかじゃない
コンクリートが内野
道路が外野
バッターボックスは家と家の狭い隙間
まるで愚痴を丸めたように
形のゆがんだボールを投げるピッチャー
キャッチャーなんていない
打たなければ窓ガラスが割れるだけ
とんでもないストリートチルドレンのゲーム

一度だけ打席に立ってみた
遠近法で迫ってくるボール
安定しない足下
大きく空振りしてしまった
金属バットが壁を叩く
鈍い音とともにバットがヘコむ
そして心までもが大きくヘコむ
力を怒りをどこにも向けられない
煮え切らない思いだけが
暗い影だけがある
このゲーム

CoyaNote2003035

欲しい物は何だ
あれほど憧れ
何度も何度も
それを手にしている自分を
夢に描いて
そして実際に
それを得られると
分かった瞬間に
いざ現物を目の前にした途端に
果たしてそれが本当に欲しい物なのか
分からなくなってしまう
こんなものを手に入れても
仕方ない
意味がないと
思ってしまう
そしてそう思ってしまい
結局手にできずに
帰ってからそれをとても後悔し
更に欲しくなるけれど
もう二度とそれを手に入れることは
できなくなってしまう

CoyaNote2003036

穏やかすぎる春の日差しは
時の流れすら忘れさせる
それはただの魔法
確実に時は過ぎていく
気付いたら
とんでもない場所にいた

CoyaNote2003037

「まあいろいろとあるんですよ」
そう言ってごまかす毎日
あれほどまでに嫌っていたはずの
曖昧で無意味な
「いろいろ」という表現
それを今では自然と口からこぼれてくる
こんな表現は
何も考えてなくて
適当に空白を埋めているような子供か
あれこれと損得を数えすぎて
隠しごとばかりしているような大人が
こぼれ落ちるゴミのように使うものだと
頑なに信じていた
それを今では平気で使っている
まだ子供だからなのか
それとももう大人になったからなのか
「いろいろ」と言う
理由はおそらく
ごまかしたいようなことが
空白を埋めたいようなことが
隠しておきたいようなことが
多いからであろう
あの頃のように
信念だけでは生きづらくなった
人と違うことを好み続けるのに疲れた
月並みな表現を好むようになった
何もなくなった
抱えるものは多くなった
「いろいろとあっていろいろ大変なのである」

CoyaNote2003038

ありもしない翼で
こんなにも高く飛び上がってしまった
あとはもう墜落するしかないのか
あるいはその両腕に
羽根でも生えて
本物の翼で
更に上を目指せるのか
とにかく動かなくてはならないだろう

CoyaNote2003039

幸せについて考える
ゲームセンターにて
まるで狂ったように
格闘ゲームをやっている者も
喉から手が出るほど欲しそうに
ぬいぐるみをクレーンでとろうとしている者も
貨幣価値の全くない
銀色のコインをじゃらじゃらと鳴らす者も
作り物のパンダに乗っかって
ほんのわずかな列車の旅に出る者も
一体何が楽しいというのだろうか
ガヤガヤと騒がしい空気の中で
とても居心地が悪い
そして最も哀れなのは
そんな店内で
景品を補充したり
お金を集めたりしている
このゲームセンターの
店員である

CoyaNote2003040

ほらこんな暗闇では
蛍光灯の光だけで
よけいに明るく感じるだろう
無意味なほどに
まるでそこだけぽっかりと穴が空いたみたいに
光の輪ができて
それがチカチカと点滅すれば
もうどうにもならないくらい
寂しい

CoyaNote2003041

新しい物が手に入ると
何となく気分がよくなる
少しだけ嬉しくなる
そしてそれは幸せになったことなのだろうか

CoyaNote2003042

パンクが怖い
何気なく自転車に乗って
快適に走っていたのに
突然破裂するような
パンという音がして
それから
絶望的に空気がぬけて
それでおしまい
あとはもう
ガリガリにやせたチューブと
重荷となった自転車が残るだけ

CoyaNote2003043

幸せの意味が分からなくなってしまった
目を閉じて耳を塞いで
足早に過ぎ去ってしまいたい
今すぐに逃げてしまいたかった
そういう時に限って必ず
誰かが道をふさいで
邪魔をする
金切り声は
それまで築き上げていた
最後の場所をも壊してしまった

CoyaNote2003044

気まずい空気
聞きたくもない会話が
耳の奥へと侵入してくる
何とか気を紛らわそうと
文字を追う
集中しようとする
誤魔化そうとする
しかし
頭がボーッとして
フラフラ クラクラする
それは空腹のせいか
それとも

CoyaNote2003045

これは何なのか それはどういう意味か
結局何がしたくて 何が言いたいのか

黒くぬった便箋に白文字で書いた手紙

鉛筆をななめに走らせて
便箋を黒くぬっていく
するとそこに
白文字がぼんやりと浮かび上がってくる
あぶり出しのように

昔の自分を思い返すように
心を全く持たずに
ただひたすら
鉛筆を動かす
刻まれた文字が
忘れていた記憶が
思い返されていく

たちまちに
あの日書いたものと
真逆の手紙が書き上がった
白い便箋に黒インクではなく
黒くぬった便箋に白文字で書いた手紙
体裁だけでなく
その手紙に対する
見方までも
真逆である
最高の文章を
自分の気持ちを全て出したはずのものが
今ではただの後悔と
恥と自己嫌悪のつまった手紙になった

そしてこの手紙は
保存しておくべきか とっとと捨ててしまうべきか

人間関係について考えると疲れる

どうしていつも逃げるのだろう
どうしていつも隠れるのだろう
どうしていつも気まずくなるのだろう
どうしていつも消えたくなるのだろう

僕は今日もここにいる
普通にいる
ただそれだけなのに
誰かに負い目を感じてしまったり
劣等感や触れてほしくない過去を
心の中で大きくしてしまう
僕は僕だと胸を張って
堂々と言いたいのに
どうしてもそれができない
これからずっと
この行為を繰り返してしまうのか

友情って疲れる
誰かに合わせようと
無理に笑ってみせたり
沈黙があまりに辛くて
耐えられないからつい
こちらからどうでもいいことを
話しかけてしまったり
そのたびにどう思われているのかを
疑ってしまう
とにかく誰かといると
早く一人になりたくて仕方ない

CoyaNote2003046

なにかとんでもない物を買ってしまった気分だ
お金をドブ川に捨ててしまったこと以下の
最低の行為のような

そんなもの幻影である
ただの歯ブラシセット

CoyaNote2003048

できないことばかり
それが今のあんたさ
できないことだけが
あんたに与えられている
無能な人間

CoyaNote2003049

急げ 焦れ 残された時間はあとわずかしかない

CoyaNote2003050

人の心を鈍くするこんな夕暮れには
何をすればよいのだろうか
誰もが皆同じことを考えていると
疑ってしまう

CoyaNote2003051

脂まみれの手の平は白紙を汚すみにくいまでに

CoyaNote2003052

イーゼルを買った
おそらくこれが最後の道具
そしてこのイーゼルも
しばらくは使わないだろう
それでも買った
頑丈なつくりに
斬新なデザインで
とてもよい
まさか自分への御褒美だなんて
言うつもりでもないが
偽りでも嬉しい イーゼル

2003 5 24

CoyaNote2003053

少し前には意味が分からなかったことを
やっと理解できるようになり
受け止められることができれば
初めて成長したと言える

CoyaNote2003054

今日で十七歳が終わってしまう
明日からはいよいよ十八歳
一途さや僕自身だけでなく
二や三や六や九でも割り切れてしまう
いつでもどこでも妥協し諦めてしまう
そんな人間になるのか
つまりそれは
二の舞を演じ過ちを繰り返し
三日坊主で何事も長続きせず
双六をやるような日々で
九回の裏に逆転されるような
そんな人生なのか
一途さや僕自身はどこへ行った
さようなら十七歳
その一年間に起きたことを
思い返すつもりもないが
響きのよい輝かしい日々であった
絶対的な時間の中で
何をしたのか
一途さや僕自身でしか割り切れないような
素直な数字であったか
そして明日から始まる
新たな割り切れる数字は
一体どんなものだろう
偶然の出来事も奇妙な感覚も持つ
この数字は
さまざまなことを抱えている
今の自分そのものなのか
さようなら十七歳 今日から十八歳

2003 6 6 23:59:59

十八歳になった日に思うこと

今日でとうとう十八歳になった
昨夜あれほど抵抗したが
それもむなしく
時間は流れ
僕に新しい年齢を一つ加えた

十八歳になるということは
十中八九大人になったということか
社会的にもそれなりの制限がなくなり
やろうと思えば運転免許も取得できる
ある程度自由が与えられるのか
しかし自由には必ず責任が伴う
大人になれば当然責任がついてくる
あまり深く素直に受けとめるのがよい

十八歳になった今日の出来事を
何となく書いてみる
まず朝はいつものように起床して
いつもと同じ電車に乗った
午前中は課外授業
午後二時頃に帰宅
それから床屋へ行って
散髪をした
変わりたいなんて願望はなく
いつものような髪型
一応さっぱりした
それから文具店に行き
ずっと前から心のどこかで
少し欲しがっていた
筆箱を見にきた
パステルカラーの鮮やかな水色
とてもきれいでそれでいて
少し水のような憂いを含む
梅雨入りかどうかの微妙な
今日という日にぴったりの色
本革製でつやもよく
肌ざわりもよさそう
とりあえず欲しくなって
買おうと思ったが
いつもの癖で
その時は買わず
誕生日というこの上ないきっかけで
買う決心をした
形が二つあって
どちらにしようか
大いに迷った
前に見た時は
長方形の財布のような形
でも今日は丸筒形の
折りたたみ傘のようなものの方が
何だか気になった
中に入れるペンの種類
運びやすさ
ノートとの相性
ありとあらゆるものを考え
悩み迷い
そして三十分して
やっと決めた
結局後者の方にした
もはや直観であった
レジに持っていく直前まで
かりあげにした後ろ髪を引かれて
それでも買った
あとはもうただ帰るだけのはずだった

帰り道の途中
いつもその子とはこんなふうに
何の前触れもなく偶然に
しかし決められていたかのように劇的に
出会ってしまう
向うの歩道から
こちら側へ渡ってきた子は
中学校の時の美術部の後輩
そして僕がかつて好きになって
今でも心のどこかで好きになっている
女の子であった

今日からおよそ二ヶ月ほど前にも
僕はその子と同じような形で出会った
二年振りに見た時
そのあまりの変わりように驚いた
体がとても大きくなっていた
昔のように小さな体で
無邪気に笑っていたあどけない
まだ小学生が抜け切らない
少女が
歳月を経て立派な姿に成長していた
昔の姿からはとても想像できないような
高校生であった
僕は再会した時
心のどこかにあった思いが
急にふくれあがって
心臓が大きく鼓動し
とにかく必死になって
話しかけてみた
しかしその子はまるで逃げるように
僕の前からいなくなった
未だに打ち明けられない思いは
やり場のない後悔となった
改めて好きな気持ちが強くなってしまった

それから二ヶ月後 こうしてまたその子に出会っても
僕の心臓はもう少しも揺れなかった
その子に近づこうともしなかった
逃げられたということは
その子は僕のことが嫌いだと
何とか気付き納得し
そしてすぐに諦めることができた
その子の成長のように
周りがみんな変わっていき
僕だけが一人残されて
変われずにいた
今日から大人になったのだから
少しは大人らしくしてみようと
とりあえず強引なことはしないと
考えるようになった
その子との再会でも
心臓が少しも揺れなかったのは
それだけ成長した
大人になったということか
とりあえず諦めると人間は
何だかとてもすっきりするのだ
それは決して散髪のせいだけではない

帰宅してからは平凡な
ありふれたこと

何となく印象に残る
十八歳の誕生日
明日からも
それでもいつもと全く変わらない
毎日が続く

耐えられぬ
沈黙埋める
愛想笑い
十分承知の
八方美人
歳月は人を変えると悟りたり告白できぬあの子の背中

まあそういうわけで
今日も終わります
雨が降るかと心配していたけど
どうやら明日に延びたらしい

とりあえず自分におめでとう

2003 6 7 21:43:58
プラス思考でCoya

CoyaNote2003055

目を閉じて
そして開いて

CoyaNote2003056

生きていると実感する時はいつですか
僕は人生の中で一番静かで穏やかな
こうやって仰向けになって
天井を見つめている時に
生きていると実感します
じっと天井を見つめていると
そのうちふわっと体が軽くなり
魂が空気と混ざり
自分の存在が
今確かにここにあると
痛いくらいに伝わってきて
そして少し怖くなります
そんな時こそ僕は
生きていると実感できるのです

CoyaNote2003057

フラフラと目的もなく
今日も迷走する

CoyaNote2003058

これほどまでに自分が嫌いになったこともあるまい

CoyaNote2003059

この部屋の中で
君が一番可愛い
一瞬でそれが分かった
それは当り前のこと
だって君は僕が好きになった女の子
いつでも君のことを想っていたい
同じ時間を共有したい
そんな君
まだ君だと知らずに
一目見て可愛いと思って
それがやはり君だった
すなわちそれで
僕は君のことが好きなことが
証明された

CoyaNote2003060

坊主にしてしまった
長かった髪を
まるで汚れきった自分のように
バリカンで切ってしまった
何もない頭
後悔してるのかな

CoyaNote2003061

鏡の中の自分は本当の自分ではない

CoyaNote2003062

誰も見たこともないような暗い森の奥へ
落ちているのか向かっているのか
気の遠くなるような時間も
やがては自分を元の場所へ運び込む

CoyaNote2003063

苦しみはいつからやってくるのか
どこからやってくるのか
何のためにやってくるのか
苦しむための人生なのか
人生は楽しむものなのか
楽しむための苦しみなのか

CoyaNote2003064

希望観測船「みらい」を
未熟の港から出した
絶望的な大海原へ
わずかの道具で挑む
目的地に辿り着ける可能性は
三十パーセント未満
大いなる波に
呑み込まれてしまうのか

CoyaNote2003065

結局のところ世の中とはただ一つの側面しかなく、それには善も悪も楽も苦もなく、あるいはそれらが全てであり、複雑に絡み合い、物体や真理を形成しているのであって、すなわち区別し、分けることなど不可能で、そしてこれより先にあるのはありとあらゆるもののある混沌としたページ。

2004年

CoyaNote2004001

前頁でなみなみならぬ決意表明をしたが、結局それが実現することはなかった。

当初の予定では、ここから先は、このノートには、受験で覚えるべき事項、日本史や世界史の流れを物語仕立てに書いて解釈しようとしたり、英単語や英熟語、英語構文を書いたり、あるいは英作文や、英語をまるで翻訳家のように日本語に訳してみたり、古文単語を書いたり、実際に自分で、古典文法で随筆を書いたり、あるいは地学の諸現象を空想科学少年のように夢見る華やかな装飾で書いたり、あるいは数学を、ファンタジーの中の出来事か、RPGの世界に置き換えてみたり、そういった、受験のためのノートになるはずだった。そのように、このノートに書けば、絶対に覚えられて、入試で役に立つだろうと思っていたわけだ。

しかし、実際にそうなることはなかった。受験の追い込みの時期になると、そのようなことを考えている時間も、そのようなことを書いている時間もなくなっていた。そんなことをしなくてもだいたいは覚えられたと思う。

このノートは前回の決意以来、今日卒業式を終えるまで一切開かれることなく、センター試験、その失敗、私立大学の入試、そしておまけのような国立大学の入試と確実に過ぎていった。なんとか大学に合格して、進路も決定し、もはやこのノートに書いて覚えなければいけない事項もない。特に数学は。

もしもこのノートに、そういった事項を書いて、それを必死に覚えていたら、センター試験や、その後の入試、そして進路まで変わっていただろうか。分からないけれど、次の頁からはいつも通りであろう事柄が書かれると思う。

CoyaNote2004002

思い出は捨て去るもの
いつまでも過去の遺物を持っていても仕方ない

CoyaNote2004003

やることが見つからないというのは何とも辛いことよ
空虚な気分になってしまう
何もやることがないのなら
ダラダラしてないで
いっそ寝てしまおう

CoyaNote2004004

振り返らなければならないことなんてない
今やらなければならないことは何だ
それをやらなければならないのだよ

CoyaNote2004005

君はあの時と較べてどうか
変わったのか 変わっていないのか
もしも変わったとすれば何が変わったのか
価値観か信念か
あるいは全てか
もしも変わっていないとすれば
それは成長していないということではなかろうか
人は変わるものか 変わるべきものか

CoyaNote2004006

一つ一つアイテムをそろえていく
まるでRPGの
主人公のように
そして次の段階は パーティー集めだ

CoyaNote2004007

何事にもすぐに飽きてしまう
やり始めたことは
最後まで一気にやり通さないと駄目だ
中断なんてしてしまったら
もう次の日にはやる気をなくしてしまう
何でこんなものに夢中になっていたんだろうと
空しく思えてしまう
いつものことだ
そうやっていくつものことを
飽きてしまい途中で投げ出してしまった
そんな自分がますます嫌いになってしまう

CoyaNote2004008

机の上にあるのは
電波時計
人類の科学技術を結集して作られた時計
誤差は一万年に一秒という精密さ
毎日正確な時刻を知らせてくれる
一分一秒も狂うことなく知らせてくれる
とても素晴らしい時計
だがどこか空しい寂しい気持ちが残る
なぜだろうか
自分で針を動かすことができないもどかしさ
電波を受信するまで時刻を教えてくれない
一分一秒も狂っていない正確な時刻は
ただその数字があるだけで
いつの間にか五分くらい進んでいて
実際はまだこんな時刻であるという安堵感を与えてくれない
とても冷酷なものである
時計が五分進んでいるという余裕には
どこか安堵感が生まれてくるというのに
電車に遅れそうな時や寝坊してしまった時に
でもまだ実際はこの時刻なんだと分かると
とても落ち着くものだ
でも電波時計はそんなことを許さない
客観的な現在という時刻を示すだけ
電車に遅れそうなときや寝坊してしまった時というのは
実際にそれが起こっているということだ
本当の時刻を知ってしまうのが怖い

CoyaNote2004009

人は恥をかくことで学ぶ
人は失敗することで学ぶ
とにかく自分から動かなければ何も始まらない
そしてその苦い経験を胸に刻み込んで
二度と同じ間違いも
似たような間違いもしてはならない
学ぶためには恥をかけ
学ぶためには失敗をしろ
ひるむな進めうろたえるな

CoyaNote2004010

多すぎる荷物を前にして
それでもなお何か足りない気がして
それがとても重要な気がして
結局何なのか分からない

上京前夜

明日から東京で暮らす
そのことがとても信じられない
明日の今頃 時計の針が再び夜を示す頃には
もはや東京にいるということが

生まれて初めて家をこの町を離れる
この片田舎を出て
日本の首都
政治・経済・文化・運命
ありとあらゆるものの中心地である
東京に暮らす
それは長年憧れていたことだろう
ずっと夢見ていたことだろう
大いに期待している
ここでは想像もできないことが
東京では簡単にできるだろう
起こるだろう
しかし逆にそれが不安になることもある
むしろ不安だらけである
東京は危険な場所だ
一歩踏み外せば本当に命を落としかねない
物事には必ず光と影があって
華やいだ街の裏には闇が潜んでいる
とても暗く深い闇が
その落とし穴にはまってしまわないかどうか
手ぐすねを引いて待ち構えている
多くの罠をかいくぐれるかどうか
もっと端的に言うと
果たしてやっていけるかどうか

田舎者である
世間知らずである
常識知らずである
社会の仕組みやルールについて理解できていない
一人では何もできない
恥をかくことを嫌い
消極的であり
前に進んでいけない
面倒なことはやらない
すぐになまける
体力がない
自分自身に劣等感を抱いている
こんな人間が
果たしてやっていけるのかどうか
すぐに罠にかかってしまうのではないか
上手い話 甘い誘いに引っかかって
騙されてしまうのではないだろうか
そんな不安でいっぱいである

とにかく
不安になっていても仕方ない
かといって期待ばかりもしてられない
とにかく落ち着いて冷静に
よく考えて
慎重に
自分の意志や意見を持って
キッパリと言う
断るものは断る
心をいつでも注意しておいて
警戒し
疑い批判的になり
鵜呑みにせず
過信せず
すぐに信じず
自分のことは自分でやって
その結果に責任を持ち
どうにかやっていくしかないだろう

流されてはいけない
調子に乗ってはいけない
しっかりと足を踏んばって
一度立ち止まって
自分自身でよく考えて
そして実行に移す

自分に甘えてはいけない
自分を律せよ
自律せよ
心に楔を打て
自分を動かし変えていけるのは
自分自身しかいない
無理はしない
逃げることも諦めることもする
とにかくやる
やってみる
少しずつ慣らしていく
そうやって慣れてきた時に
最大限注意を払う
そうすれば変わる
2004 3 27

CoyaNote2004011

そんなこんなで上京して、あっという間に二週間が経ってしまった。最初の頃に感じていた戸惑いや不安やらは、少しずつ消えていっているだろうよ。

CoyaNote2004012

刹那的に過ぎていく毎日の中で
立ち止まって書くこともできない

CoyaNote2004013

酔えないことって辛いよね
どれだけ麦酒を飲んでも
苦みだけが口に広がって
少しも気分が良くならず
高揚することも興奮することも
ましてや羽目を外すこともできずに
ひたすら周囲の騒ぎについていけずに
どうしても冷めた目で見てしまう
越えられない境界線
変えられない自分
酒の力を使うことができないと
こんなにも空しくなるのだろうか
まるで酒を原油のような
有毒で有害な液体だと思っているから
酒を全面的に信用してないから
金なんてものに執着しているから
変身できない
今日もこの夜を
酔わないままで過ごすのか

CoyaNote2004014

期待していたことと実際のものがかなり違った時に
人はたいてい残念がる
こんなはずじゃなかった
なんでこうなったのか
しかしそれは現実 まぎれもない現実
諦めてさっさと次のものに
心移りを作為的にしてしまいなさい
だいたいがその期待が
間違っていることが多いのだよ

CoyaNote2004015

自分の全く興味のないことに
敢えて挑んでみるのも
また新たな自分というものを発見できるきっかけになるから
やっぱり興味のないことをやりなさいと
そう言われても

自分の全く興味のないことはすなわち
自分のやりたくないことの方が多く
それに挑んでも
つまらないし辛いだけだし
長続きしないだろう

CoyaNote2004016

狭い視野はその分
倍率を高くして
くっきりはっきり鮮やかに見えるのではないだろうか

CoyaNote2004017

キレイにしようとすればするほど
汚れていってしまう
水臭く
生ゴミ臭く
そして黄色い臭さに
嫌気がする

CoyaNote2004018

眠気 睡魔
やる気をそぐもの
そして自分を嫌いにさせるもの

CoyaNote2004019

どれだけ不味いものも
腹の中に押し込んでしまえば
みんな同じ
だったらできるだけ安く手軽に
さっさと済ませてしまいたいと
思ってしまうものなのだよ

CoyaNote2004020

美味 不味 旨
悪食 卵
生ゴミ 玉葱
胡瓜 洗濯物 サラダ油
汚れ 汚れ 汚れ
クサイ クサイ クサイ
何もかもを真っ白にしてしまいたい

線と点と線

ここに存在している
たったそれだけのことでさえも
もはや二通りの道ができている
空間的な意味では
これまで歩んできた軌跡
ここという一点
これから歩んでいく進路
時間的な意味では
過去
現在という一点
未来
僕の後ろにある軌跡と過去という道は
もはや変えることはできず
ここと現在という一点を
僕は生きていて
僕の前にある進路と未来という道は
どうなるか分からない
進路と未来はここと現在によって軌跡と過去になる
その動きを止めることは誰にもできない

CoyaNote2004021

急にデジタル志向になって
いかなる汚れも許せなくなる
今までのものを一切捨てて
新しいものにしたくなる

CoyaNote2004022

「出身は…」
「高校は…」
「学部は…」
「名前は…」
これまで何度となく尋ねられた質問
まるで決まり文句のように尋ねられた質問
そのたびに毎度毎度
同じ答えを繰り返す
自己紹介というものは
自己が確立されていなければできない
自分でも自我でもない
自己だ
他者と間違いなく区別できる
自己というものを

履歴を変えることはできない
もはやアイデンティティーもできあがりつつある
自己はあるつもりだ
心臓の右隣にある
小さな紙に書かれた
一つ一つの事項を
そのまま客観的に述べればよい

自分を変えるのは
とても難しい
自己を書き直そうとすれば
そのまま心臓を傷つけてしまうかもしれない

自己ができあがる前に自分を変えて
存在せよ

第4冊ノートを終えて

珍しいことに、今このノートが終わったのは午前9時なのである。朝にノートを開くことなど今までなかった。

実を言うと、今日から大学の授業、いや講義が始まるのだ。そう、もう大学生なのである。中学3年生の春、あるいはもう少し前の、中学2年生の4月の中頃だっただろうか、その頃から衝動的に書き始めたノートが、高校生を通過して、まさか大学時代にまで続くとは、あの時想像できたであろうか。

つまらないことにこだわる人間だからか、本当は、大学生活を始める前にこのノートを終えて、新しいノートで新しく、その劇的に変化する生活を書きたかった。しかし、なかなかそうもいかずに、結局大学での講義が始まるまでに書き終えようということでまるで言い訳でもするようにしてようやくノートが終わった。

このノートは2002年12月から始まったので、1年と4ヶ月の日数がかかったものということになる。しかし、この4冊目のノートは今までとかなり事情が異なる。2003年の8月いや10月から2004年の3月まで、一度も開かれなかったのである。全ては大学受験のせいである。あまりにも忙しく過ぎる日々は、受験勉強での苦しみを書く余裕すら与えてくれなかった。

2003年は、今までで一番無色透明な、おもしろみも何もない年だった。全ては受験のための一年であった。そんな一年の断片を残せたかどうかは分からない。しかし、その一年のおかげで、これからとてつもなく大きな大学生活というものを手に入れた。これからは、大学生活での日々を書くことになるだろう。

2004年4月12日 プラス思考でCoya