第7冊ノート(2004年12月~2007年4月7日)

2004年

赤の他人か恋人か

人づきあいが下手で
いつもいつも孤立してしまう
表面上のつきあい
見せかけだけのつきあい
その場しのぎのつきあいをするぐらいなら
誰ともつきあわない方がいいと思ってしまう
そんな安易なつきあいや関係なんて
いらない
もっと深く濃厚に心から語り合えるような
そんなつきあいが
そんな関係が欲しかった
そんな関係こそが真の友情だと思っていた

その結果 誰とも話をしない一人ぼっちの人間であった
そのことを別になんとも思っていなかった
むしろそんな自分の姿を好んでいたようでもある
形だけの友達なんていない自分は素晴らしい存在であると

でもそれは結局
友達が 見せかけだろうが表面的であろうが友達がいないことへの
言い訳でしかない
どんな関係であろうと
友達はいないよりもいたほうがよいに決まっている
そんな当たり前のことにどうして今まで気付かなかったのだろうか

だから人間関係というものが
とても小さくてそして極端な形をしていた
すなわち自分以外の人間は
赤の他人か恋人かのどちらかしかないのだ
あらゆる人間をこのどちらかの枠組みにはめようとしていた
でもそんな人間関係はもうおしまい
赤の他人でも恋人でもない
友達という関係が必要だ

赤の他人でも恋人でもない
愛情などの見返りも求めない
友情でつながった人間関係

CoyaNote2004103

悦びをお金で買う

CoyaNote2004104

人々が絵を描かなくなって久しい
それは嘆かわしいことであるが
時代の風潮でもあり
仕方ないことなのかもしれない

二十一世紀に突入してしまった現代にとって
絵はもはや教科書に載るような
「過去の文化」になってしまったのだ
絵なんて古くさいジジくさいださい
年寄りがシュミで描くもの
今を楽しむ若者が描くものではない
あるいは
絵なんてガキが描くようなもの
お絵描き
今を楽しむ若者の文化というのは
もっとイージーでスタイリッシュでクールなもの
コンパやパーティーやミュージックやスキーやテニス
それらに明日への不安も何も抱かずに
何も感じずに
ただ快楽だけを求めてやる
決して一生懸命にならずに
ひたむきにまじめにコツコツなんてださい
もっと気楽にイージーに
そしてスタイリッシュでクールなもの
それが若者のやることだ
絵なんてガキが描くもの
油絵なんてただの油汚れ
キタナイキタナイ油汚れ
そんなキタナイ油汚れ
手を油で汚してキタナイださい
近づいてみたら、ただの油のカタマリでしかない
そんな汚いもの汚物なんかを
しかもヘタクソな汚物なんかを
描いているやつはダサイ
これからはアートの時代だよ
絵じゃないよアートだよキミ
分かるかい アートだよ アート
ケータイにすらカメラがつく時代に
とてもお手軽に写真が撮れる時代に
似もしない風景画なんて描いてなんの意味がある
これからのアートは
奇抜で独創的な
そして常にイージーでスタイリッシュでクールな
そんなものじゃないと
アートではない
とにかく油絵なんてもう時代遅れ
あんなキタナイ油ヨゴレなんて
描いたって意味がない
サウンドとヴィジュアルとノリの
ニューアート
ニューアート
油絵なんてガキが描くもの
(油)絵なんて年寄りが描くもの
ダイガクセイがやることじゃない
ダイガクセイは
アツイコンパ・楽しいパーティー
イージーでスタイリッシュなクールさ
絵なんてガキが描くもの

平熱を上げよう

若者は常に冷めている
それを「クール」なんて言葉で表現して
賛美してしまっている

普段が冷めているからこそ
なにか特別なイベントがあると
アツクなる
アツイコンパ
アツイスキー
アツイテニス
アツイ仲間達
アツイサークル
あれがアツイこれがアツイ

普段から常にアツクなっているのはダサイ
そんなのアツ苦しい
普段は常にクールに
そしてアツクなるのは時々でいい

そんなのでいいのか
普段からアツクならなくていいから
せめて平熱を上げよう
今の熱があまりにも低すぎる
もっと平熱を上げよう
平熱が上がれば
どんなことに対しても真剣になれる
一瞬だけアツクなって
そのあとはぐっと冷めてしまうような
空しさなんて
感じたくないんだ

CoyaNote2004105

はじめは全てが混沌としていた
曖昧であり掴みどころがなかった
無ではなかった 空であった
そこに一つ点を打った
たちまちに点は位置を持ち意味を持ち
この混沌とした空なる世界に秩序を与えた

点と点を結ぶと線になる
線と線をつなぐと面になる
面と面を合わせると立体になる

立体に名前が与えられるとモノになる
モノに不動の命令を与えると静物になる
   言葉を与えると人物になる
   霊魂が宿ると自然になる

モノには色がなければならない
全てのモノには色があるが
それは必ず一色である
微妙に異なる色に見えるのは
ただの錯覚である
光の部分はその色に明るみを持たせ
影と陰の部分は暗みを持たせる
全てのモノの色はそのようにできている
色はただ一つあとは明るいか暗いか

点と点を結ぶと線になる
線と線をつなぐと面になる
面と面を合わせると立体になる
立体に色を与えると
絵が描ける

CoyaNote2004106

一度きりの人生
一度きりの絵画
やり直しのきかない人生
やり直しのきかない絵画

失敗してしまった
白いけれど純白じゃない
汚されてしまった画用紙
それを破ってしまいたい
ビリビリに破ってしまいたい衝動に駆られる
少しの汚れも許せない

CoyaNote2004107

だめだと思っても
根気強く粘り強くやってみることだ
諦めが結局は
だめだということを本当にだめにしてしまうのだ

CoyaNote2004108

僕は今から変わります
はい 変わりました
もう前の僕のことなんて知りません
あるのは変わったあとの僕だけです

CoyaNote2004109

誰に対しても敬語を使っている君へ
年下でも同い年でも
男でも女でも
君はいつだって対等な位置で話をすることができない
自分を下にして
相手を見上げる形でしか話をしない

敬語を使っていればとりあえずは安心だ
自分には落ち度がない
無難だ

敬語はもはや君の標準語になっている

しかしだ

敬語は相手によって使い分けなければならない
使い分けるというのはつまり
相手を上か下かで区別していること
そして区別した相手にだけ敬語を使う
誰に対しても敬語を使っていては
結局は誰も尊敬していないことになる
みんなを尊敬しているなんて絶対ウソだ

2005年

CoyaNote2005001

わがままな奴の自分勝手な行動に
辟易している僕が
実は一番わがままなのかもしれない

CoyaNote2005002

ヘタクソな人間は
絵を描いてはいけません
みにくいだけですよ
虚しいだけですよ
汚いだけですよ
哀しいだけですよ
無意味なだけですよ
恥ずかしいだけですよ
もうきっぱりやめてしまいましょう
ヤメロヘタクソ

CoyaNote2005003

別に好かれてはいないが
かといって嫌われているわけでもない
そういう存在としての僕
このままの人格を保守するか
革新的な進展を目指すか
僕は迷わず前者を選ぶ

CoyaNote2005004

彼女には幸せが似合う
そして君にはフシアワセが似合う

CoyaNote2005005

平熱を上げよう

CoyaNote2005006

涙で涙で濡れてしまった
小さな小さな僕の幸せ

CoyaNote2005007

冗談には本気で反応しろ

CoyaNote2005008

君はもうダメだね
だってフランス語の復習をしたのかい
全然してないんだろ
ほらもうダメだね
おしまいさ

CoyaNote2005009

僕がいなくても世界は相も変わらず回り続け
       時間は止まることもなく流れ続け
       他の人は無関係に自分の人生を送る

だけど
僕がいないと

成り立たないことなんて一つもない
不必要な存在

いてもいなくてもどうでもいい

CoyaNote2005010

新しいことはいきなり始めよう
待っているだけではだめだ
よく考えている 準備しているだなんて
決断しないための言い訳にすぎない

CoyaNote2005011

欲しいものはたくさんある
一目見ただけで
あれもこれも欲しくなる
欲しいというよりも
自分だけの占有物にしたいという
気持ちに駆られる
自分だけでじっくりと
そのものの奥の奥
全てを見て触って動かして
自分だけのものにしたいという衝動

そんな物欲を
絵にしろ
あれも欲しいこれも欲しいを
あれも描きたいこれも描きたいにして
全て描け
描くためにはそのものをじっくりと観察して
全てを見て触って動かして
完全に理解しなければ
ちゃんと描けない
だが描けばそれで
僕の欲求は満たされる
絵が描けたことできっと十分である

CoyaNote2005012

ここにヘタクソな絵があります
鉛筆で描かれているのですが
描いた本人はデッサンだと思っているらしいですが
とてもそうとはいえないレベルのもの
ただのヘタクソな鉛筆の線
黒い炭素の粒子の汚れ
子供のラクガキ以下のもの

こんなみにくいものは
さっさと消してしまいましょう
ケシゴムで
ゴシゴシゴシ
ごしごしごし
誤死誤死誤死
はい きれいになりました
めでたし めでたし

CoyaNote2005013

過去は振り返らないようにしよう

CoyaNote2005014

目の前にある全てのものを
ぶちまけて
けちらかして
破壊してしまいたい衝動に駆られる
そんなことをしても何にもならない
空しいだけだということは分かっているのに

目の前にある嫌なことから
逃げてしまいたい
真っ向から挑もうとせずに
避けてしまいたい

諦めてしまいそうな自分に
負けたくはないんだけど

CoyaNote2005016

万年筆のインクの色を、青から再び黒に戻した。実に3年半ぶりの黒である。

なんとなく落ち着いたというか、見た目にやさしさがあるような気がする。やはり青は目立ちすぎる。

世の中の活字や印刷物など、ありとあらゆる文字のほとんどが黒い色をしている以上は、やはり青い文字というのは異物のように見えてしまうのだろうか。

なにはともあれ、これからは黒い字で書くのである。というか、どうもこのノートが、今までにないくらいのペースで書けない。これほどまでに書けなかったことはなかっただろうに。まったくどうしたものか。ペンのインクの色を変えるという、目に見える気分転換で、これからどうにかしていかないとならないのだが。

それにしても、今まで髪を染め抜いていた、いきがっている若者が、就職活動のためにやむなく髪の色を黒に戻したような気分である。

CoyaNote2005017

インクの色を黒から青へ
      青から黒へ

CoyaNote2005018

比率を失ったら僕は絵が描けない

特別企画 10代最後の1週間

さよなら10代。世界は自分を中心に回っていると思っていた小学生、自我が芽生えて荒んだ中学生、見えない圧力に抑え込まれた高校生、そして浮遊する自由に自分の正体を掴みきれないでいる大学生。あまりにも長く、重く、濃厚な10代。その10代があと1週間で終わろうとしている。未成年も、少年A時代ももう終わり。僕は20歳、大人にならなければならない。そのことに今、とても焦りを感じている。大人になりたくない、いつまでも未成年、少年Aのままでいたい。あるいは、10代のうちにやることにこそ意味があるのであって、20歳でやることになんらの価値も見出すことができないのかもしれない。

これからやることには全て「10代最後」という接頭語がつくであろう。その枕詞をもつあらゆることを、その二度とない日々を、救いようのない鬱状態の中で書き残しておきたい。

2005年5月31日火曜日

朝、前夜に決意した時刻に起きられず。ここのところいつもそうである。「目が覚めた時が起きる時」という標語を掲げているのに、実際には再び眠りの中に戻ってしまう。というよりも逃げてしまうといった方がよいかもしれない。最近、起きるのが少し恐い気がするのだ。起きると、そのまま今日という時間を動かし始めて、現実を生きなければならないのだ。それが僕には恐くてたまらないのだ。現実を生きることが恐い、現実を生きることに、なんらの意義も価値も、あるいはもっと単純な喜びも見出すことができない。だから僕は眠りの中へ逃げてしまうのかもしれない。

そしてそうやって現実から逃げているくせに、いざ残り時間がなくなって、遅刻しそうになると、今度はその反動のように、眠ってしまった自分を責めるのだ。どうしてさっき目が覚めたのに起きなかったのだ、どうして眠りの中に逃げてしまったのだ、と。恐がっているはずの現実を生きることは、またある種の、それなりの安定性をも与えてくれるのだろう。現実を生きないことに自己嫌悪を感じ、そのことで苛まれ、自分を責め続ける。

とるものもとらずに、大急ぎで家を飛び出して、駅へ走る。すぐ目の前で電車は発車してしまい、憂鬱で重い気分はさらにふくらむ。通過する急行電車を見る度に、各駅停車しか乗ることのできない事実に憤りを感じる。

やっと来た電車に乗り込む。ギュウギュウづめの満員電車。誰かの肩がぶつかる。吊り革を掴めず、急ブレーキに体のバランスを崩す。こういう時にかぎって、停止信号で電車は止まる。遅刻しそうでこっちはイライラしているのに、電車はピタリと止まってしまった。沈黙する車体は、僕にさらなる現実感をつきつける。

なんとか終点に到着し、吐き出されるように電車を降りるが、そこにあるのは、亀のようにのろまな人々の長い列。ノロノロとゆっくり歩くスピードに、イラ立ちをおさえられない。改札の順番を待っていると、乗り越し清算をしなかった乗客のせいで、改札がつまってしまう。一度決めた列を移動することはできず、改札が再び正常に動き出すまで、僕はさらに待たされることになる。一度階段を降りて、再び上らなければならない乗り換え。僕は正しい定期券を入れたはずなのに、改札の扉は閉じようとする。思わず扉を蹴ってしまいたいくらいの破壊衝動に駆られる。

満員のため、一本電車を見送らなければならなかった。ベルが鳴っているのに、駅員が大声で注意しているのに、駆け込み乗車をしてくる人々。自分がそうしていた時のことなど忘れて、僕はそういう連中にも不快感を露にしてしまう。

ターミナル駅に着いたら、今度は地下鉄に乗り換えるために深く潜らなければならない。そこへ行くための階段にも、人がつまっていていっこうに前へ進まない。トイレの排水管の中にいるような気分になってしまった。

地下鉄へはすべり込むようにして乗った。やはりギュウギュウづめの車内と、割高の定期代と、歩ける距離であるという事実にその地下鉄を利用していることに罪悪感と後ろめたさを感じてしまう。そして、それでも地下鉄を利用しているというのに、微妙に時間がかかるということに、なぜだか不幸せという形容をしてしまう。

再び地上へ出てくると、まぶしすぎる太陽に目がくらむ。やっと大学に辿りつけた安堵感よりも、また一日が始まってしまうという絶望感の方が大きい。

1限の授業からさっそく襲ってくる睡魔。それと闘うことは、とても辛く気分の悪くなることだ。そして結局闘いに負けて、僕は再び眠ってしまう。そして再び目覚めた時には、眠ったことを激しく後悔し、自己嫌悪に苦しむことはいうまでもない。

2限は講師が20分ほど遅れてきた。その時間を僕は、眠ることに費やしてしまった。貴重な20分。それを使ってやるべきことはたくさんあった。それをやれば、のちのちのこともスムーズに進むのだった。でも僕は、その20分を眠るという、自分が最も依存し、嫌っている行為に費やしてしまったのである。そのことだけでも、僕は吐き気を感じてしまう。

短い昼休み。子供じみた菓子パンと、大人ぶってるサンドウィッチを買って僕は足早で移動する。そして僕の任務を遂行する。買ったパンを自動販売機の缶のミルクティーで流し込む。胃の中に食べ物を押し込めて、とりあえず食べたことをアピールする。

そして3限だが、さっき眠らなければやるはずだったことをやったので、遅刻した。遅刻することにも罪悪感を持ってしまう。それでも授業をまともに聞くこともせずに、こりもせずに眠ってしまうのだ。せっかく高い授業料を払っているのに、こんなことではまったくのムダであるという事実にも、多少なりとも心を痛めるが、それでもこの授業を見下しているからなのか、遅刻や居眠りをしてしまう。

4限はそれでも、なんとか眠らずに過ごせた。しかし、予習をしていなかったので全く分からなかった。当初あれほどやる気のあった語学の授業なのに、もう予習をする気力もない。指名されないことだけを願っている卑怯な自分に、さらに心は痛む。授業がひと段落すると、これ以上先へ進まないことを祈ってしまう。そんな自分を諭すかのように、講師が語学を学ぶことの意義を語り、その言葉に思いを改めて、これからは真面目に予習しようと思っても、いざ授業が次の段階へ進むと、とたんにやる気をなくしてしまう。

授業が終わると、僕はさらに任務を遂行しようとする。しかし、思い通りの予定を立てることができず、しかも昨日しかできなかったことがあったことも忘れていて、全ての原因を眠ってしまっていた今朝の自分に押しつけて、その日最大の自己嫌悪に陥ってしまう。

その後はアルバイトだった。これも最近では心に引っかかっている悩みの種である。仕事が少なく、あまりお金にならないのだ。お金はもっとほしいくせに、仕事はこれ以上したくないという矛盾のせいで、もはやまったくやりがいを感じられない。中途半端な時間帯のために、きちんと夕食をとることができず、真空パックの栄養ゼリーでごまかす。

今日は予定よりも一つ仕事が減らされていた。早く帰れることで喜び半分、お金が減ることでの落胆半分。職場での自分の立場も確立できていないし、いつまでたっても昇給できないしで本当にいいことがない。

いざ勤務が始まると、人が来ない。もしかしたら仕事が一つ増えて、お金が増えるかもと期待していたら、60分以上遅れて来やがった。どうせ遅れてくるならもっと遅れて来いと思ってしまう。そして遅れて来たくせに、その害虫のような態度にますます不快感を募らせてしまう。

結局仕事は増えずに、僕は少ない今月分の給料を計算して、とぼとぼと帰った。

そしてその後は悲しいくらいの時間の浪費。

CoyaNote2005019

雨の季節に生まれた僕ら
傘はいつでも持っていよう
僕の涙で君が濡れてしまわないように

ほら雨粒のおかげで
あじさいがこんなにも色鮮やかに見えるよ
かたつむりが呑気に進んでいるよ
雨が降れば虹を期待できるんだ
そしてこの雨の向こうには
夏が待っているんだよ

CoyaNote2005020

一年前の七月十四日 僕はヒーローだった
僕は自分の行動に誇りを持つことができた
歳月はめぐりめぐって
それから一年後のちょうど七月十四日 僕はヒールになりさがっていた
僕がなにをしてもなにを言っても
必ず問題となり人間関係がこじれてしまう
どうしてだろうか
僕が人間的な成長をしていないからなのか
僕がいいかげんな奴だからなのか

CoyaNote2005021

合わせる顔がないんじゃなくて
会いたくないんだよ
もう僕なんて存在に
顔なんて こんなキモイ顔なんてもう
見たくないんだよ 彼女は

CoyaNote2005022

僕のノートには
愛しい人の名前が
僕のスケッチ帳には
愛しい人のデッサンが
あふれますように

CoyaNote2005023

カゴの中にうず高く積み上げられた
着古した衣料品
放置され続けて
埃をかぶり黄ばみ汚れてしまった
もはやこんなものはただのゴミ

これまた錆ついているハサミで
一つずつ切り裂いていく
ビリビリビリ
編み込まれた繊維を
切断するように
一度切り裂いてしまうと
衣料品という元の形は全くなくなる
見るも無惨な姿になる
袖の部分が切り取られたシャツ
まるで腕を切断されたようで痛々しい
シンメトリーに切り裂かれたズボン
片足で生きていく辛さ
股の部分をバッサリ切り刻まれた下着
残酷なシーンをイメージしてしまう
直線的に切り開かれた靴下
魚をおろしているような生臭さ
布を一つ一つ切り裂いている自分が
悲しくて悲しくて仕方がない
どんなに高級な衣料品でも
少しでもハサミで切り裂かれてしまえば
もはやただの布きれでしかないという事実に
涙が止まらない
憂鬱な夏の午後

CoyaNote2005024

ストレスのはけ口に(僕)なんていかがでしょうか

CoyaNote2005025

コミュニケーション・レス・ピープル

CoyaNote2005026

平熱を上げよう
何に対しても冷めた目で見てしまう
クールなのは分かるけど
もう少し心の温度を上げようよ
何に対しても激しい動きをするのが
暑苦しいのは分かるけど
平素がとても冷めていて
特別な時だけ異常なほどに興奮する
それも悪くないけれど
もう少し普段から熱狂してみようよ
先の見えないこんな時代
刹那的にもなってしまうけど
一瞬の儚さに酔いしれてみたくなるけれど
だけど
こんな冷めた時代だからこそ
冷え症を治そう
とりあえず少しのことにも感動してみよう
それを毎日続けてみよう
一気に放熱するんじゃなくて
少しずつ少しずつ熱をずっと帯びたまま
明るく元気にハツラツとした日々
僕の平熱を上げよう

CoyaNote2005027

コンビニで
そばを買った
お弁当を買った
ハサミを買った
コンパスを買った
三角定規を買った
分度器を買った

80円切手を買った
原稿用紙を買った

A4の書類を一枚コピーした

CoyaNote2005028

真っ白い上質紙
手垢で汚してしまった
純粋な少女を傷つけてしまったような
後ろめたさである
罪深さである

CoyaNote2005029

鼻の奥に痛みの腫瘍を抱えたまま
真夏だっていうのに僕は
もはやあらゆる気力もなく
まるで廃人のような日々である
この状況を打破するために
僕はリハビリとしてイラストを描く
写真はないけれど間接的に
愛しい気持ちを描けば
それは痛みを排除してくれる治療行為

CoyaNote2005030

確かな明日が来るとは限らないけれど

CoyaNote2005031

明日の空を晴れにしよう 昨日の雲をおいていこう
青い絵の具で君の心を一つ一つ染めていこう
涙の雨にサヨナラを 花柄の傘はおいていこう
お天道様と握手しよう

CoyaNote2005032

どこかの列島を思わせる(連想させる)ような形に
手で引きちぎられた牛乳パック
強引に引きちぎってギザギザになった輪郭線に
抵抗できない力によって引き裂かれた人々の
痛ましい姿を思い浮かべてしまう

CoyaNote2005033

傷心を抱えたまま夏は終わり
傷心を抱えたまま秋は始まる

寂しがり屋さん

いらっしゃいませ
本日は寂しさがお買い得です
愛苦しいものを見た後にやってくる
どうしようもないくらいの寂しさを売ってます

また本日は悲しさも安いです
過去の栄光ばかりを追いかけて
現在のみじめな姿を思うにつけて
浮かび上がってくる悲しさ売ってます

CoyaNote2005034

寂しさ
この寂しさを何と表現すればよいのだろうか
悲しく空しい

CoyaNote2005035

寂しがり屋のくせに独りになりたがる

CoyaNote2005036

僕が一番嫌いな「自分」を描く
見苦しい肌 つき出た鼻
細い目 ギザギザの髪
ありとあらゆるものが嫌い
その要素を一つ一つ
描いていく
美しく描こうなんて気持ちは
全くない
ただひたすら醜い部分を
描く
絵の中の僕はそれを必死で隠そうと
仮面をかぶっているが
鉛筆の線で一本一本
ナイフで仮面を削り取っていくように
本性を素顔を暴き出していく
さあさらけ出せ
そしてますます嫌いになれ
この自分自身という生命体を

CoyaNote2005037

僕の名は「あなたを愛するために百年前の孤島から時空を超えてやってきた言葉」
ビンにつめられ送られたメッセージ
いくつもの大海を泳ぎいくつもの時代を渡り
あなたのもとにやっと辿り着いた手紙
返事はいらない

CoyaNote2005038

愛情のインクで一本一本線を
真心を込めて描いていく
君の喜ぶ笑顔が見たいから

CoyaNote2005039

9月になったことが未だに信じられない
受け入れることができない
夏は終わらないものだと思っていた
ずっと7月、8月のあの暑さが
心の中で続いていた
9月になってもそのまま惰性で
夏の暑さを引きずってしまった
どこかで区切りをつけて
気持ちを切り替えていれば
すんなりと9月になれたものを
ダラダラとしたリズムで
僕はいつまでも夏のまま
一人取り残されてしまった
その間にも9月は着実に僕を蝕んでいって
気が付けばもう9月は終わってしまう
僕が認識できないままに
9月が終わってしまうのだ
そのことがとても寂しい 悲しい 辛い 怖い
このまま時間が流れていくことを信じられずに
受け入れることができないままに
世界が終わってしまうような気がする
僕は何もできないままに
時間だけが無為に歩いていく

生誕20年記念特別企画 ~振り返ろうこれまでの10年、考えようこれからの10年~

はしがき

僕は今年で20歳になってしまった。

10年というものを一つの時間の単位として、現在よりも過去のものを「むかし」、未来のものを「さき」と名づけてみる。僕は「二むかし前」に生まれたことになる。そこから「二さき後」を経てここに至る。

20年の中で、前半の10年間は平凡なものであったと思いたい。一ケタという年齢が意味するものは、新生児、幼児、児童といった名称の未熟さである。僕はただそれらを享受し、与えられた役割を演じていればよかった。

後半の10年間は、あまりにも濃厚で、重く、苦しく、痛々しく、長くもあり、短くもあり、そして繰り返す運命に翻弄されたものであったと言わざるをえない。所属した身分の名前を挙げただけでもそのことは明白である。小学生、中学生、高校生、大学生、10年間で4つもの身分に所属するということが、果たしてこれから先であるだろうか。

封ができない君への手紙

早くこの手紙を君へ渡したいのに
僕なんかが持っていても仕方ないのに
どうしても封ができない
まだ書き足りないことがある
もっと込めたい想いがある
この気持ちをつめよう
あの気持ちも入れよう
そんなことばかりで
いつまでたっても封ができない
一度封をしてしまったなら
もうそれ以上愛を込められない気がする

CoyaNote2005040

今日の好天は新しいスニーカーを履き始めるのにふさわしい

CoyaNote2005041

辞書は出しておいて
一応ファイティングポーズだけは見せる
すぐにダウンするけれど
ロープにしがみついて起き上がる

CoyaNote2005042

さあ青春のやり直しをしよう

CoyaNote2005043

こんな風に こんな感じで

CoyaNote2005044

友達という名の契約関係

CoyaNote2005045

饒舌になったあとの虚しさよ
普段無口なくせに
ここぞとばかりに喋ったものだから
使っていない口の筋肉が引きつってしまった
もう話すことも尽きてしまい
あとに残るのは
無意味なその場しのぎの言葉を大量に発したせいで
飽和してしまった空気と
口の筋肉の痛みだけである
僕のつまらない話につき合わされた
周りの人の苦痛を考えてみろ

ご静聴ありがとうございました

CoyaNote2005046

あまり興奮してはならない
気分が高揚して
あまりにも上へいってしまうと
落ちた時の衝撃が大きい
興奮した夜も
明けてしまえばきっと冷めて虚しくなって
堕落してしまう
骨折だけではすみそうにない

CoyaNote2005047

本当のことをいかに嘘っぽく語るか
出来事の骨格を決めたら
あとはもう口の滑るがままに
嘘で装飾していく
思い出したかのようにつけ加えることで
今その場で考えたという印象を与え
具体的な名前を出さないことで
知らないような振舞いをする

僕は役者? それともただのペテン師?
そして何がやりたいの?
どうなることを望んでいるの?

他人に対する配慮に欠けた
自己中心的な性格
それをすることがどうなるかという
予想なんて一切しないで
つまりは何も考えないで
幼稚な本能の赴くままに行動してしまう

思っていることを素直に言いたいのに
まったく逆のことを言ってしまう
無関心を装い 好奇心をむき出しにし
俗悪な人間になってしまう

後悔するくらいならやるな
もっと良識や品位をもて
決して昨日の自分を繰り返すな

僕は「僕が嫌いな僕」になりたくはない

異常な視覚

僕の視覚は異常

CoyaNote2005048

絵を 自分で描いた絵を切り刻んでしまった
台紙からただはがそうとしただけだった
カッターナイフできれいにはがそうとした
でも世俗的な糊のせいで
うまくはがせなくて
そのうちカッターが絵を破き始めて
一度そうなってしまったら
たとえ僅かな破れでも
もう台無しになってしまったような気がして
もうどうでもいいような気がして
そしてお決まりの
破壊衝動に駆られて
台紙から絵を一気に引っぱった
無惨に破れてしまった絵を
カッターでバラバラに切り刻んでしまった
美術作品から廃棄物へと化した紙片を
リサイクルペーパーボックスの中へと
捨ててきた
せめてこのゴミが生まれ変わって
少しでも社会の役に立ってくれればと

捨てた途端に激しい後悔に襲われる
自分の作品を 二度と戻らない作品を
失ってしまった

CoyaNote2005049

恋多き少年と 愛を知らない少女
もちつもたれつ そんな関係
恋に憧れる少女と 愛し方を忘れた少年
あと一歩は踏み出せないのか

CoyaNote2005050

大人になることを拒みいつまでも子供に甘んじている

汚い大人になんかなりたくない
いつまでも少年のように純粋でいたいなんて
言っているけれど
それは大人にならないための自分勝手な言い訳にすぎない

大人になるということを 成長するということを
あるいは年齢を重ねるという
生物として不可避なことさえも
拒み続ける

大人というものを全面的に否定している

汚い部分だけを取り出して
立派な部分から目をそらして
汚いカタカナ書きのオトナではなく
良識ある立派な漢字書きの大人に
ならなければならない
それは口先だけのこと そして実際には
子供のままどころかオトナにしかなってない
オトナでしかない

CoyaNote2005051

彼を支えているちっぽけなプライド

CoyaNote2005052

理想を描こう それに近づいていこう

CoyaNote2005053

「いきなり」大人になりなさい 誕生日を迎えたら
20歳であることに慣れも経験も関係ない
モラトリアムはもう終わり これからはオトナ
常識と責任と忍耐と柔軟さを
そしてほんのわずかな自由を

CoyaNote2005054

20歳になって見えてきたこと
成人になって骨身に染みて分かったこと
少年時代 あれほどまでに忌み嫌っていた
残酷で汚い卑怯な
カタカナ書きの「オトナ」ではなく
良識と品性を持つ
漢字書きの「大人」に
立派な「大人」にならなくてはならない
「オトナ」にはなりたくない
でも「大人」にはなりたい
「ガキ」の対極にある
もの静かで優しく
健気でそれでいてしたたかな
芯の太い 人生を悟る
そんな大人に

2006年

CoyaNote2006001

躰の芯までギシギシと冷やす
この寒さに
僕の指はちぎれそうにかじかんで
思わず誰かの頬に触れてみたくなる
君の真っ赤な頬に触れてみたくなる

お気に入りのファーつきフードを
すっぽりと顔から被って
僕はなんとなく気分がいい

乾燥した空気のせいで
僕の唇はもうガサガサ
皮がむけてとても痛々しい
君の接吻で潤いを与えて

そんな願望を抱いて
僕は独り雪路を急ぐ
何度も何度も深いため息をつく

氷点下の今夜だけ
僕はスモーカーになれる
ため息をつくたびにそれは真っ白な煙となって
夜の闇にプカリと浮かぶ
その白を見ているとなんだか少し救われる気もするよ

結局はみんな
ため息の色を見たいから
煙草なんてふかすんだ
ヤニとニコチンまじりのため息は
哀愁じみていて嫌いだ

CoyaNote2006002

ちぎれそうなほどかじかんだ指で
ありもしない煙草を持ち
皮のむけたガサガサの唇に
くゆらせる
吐き出すのはため息の煙

CoyaNote2006003

「これは”時間虫”といって
人の時間を食べてしまう害虫だ
食べられてしまった分の時間は
二度と戻らない
時間虫が時間を食べている間
その人は無意識状態に陥り
気が付いたらもう
とんでもない時刻になってしまっている」

時間虫の正体は
怠惰と緩慢と
そして無気力と
明日に希望を見出せない
心の闇である

CoyaNote2006004

奪われた恋
完全なる敗北感
二度と立ち上がれないくらいに打ちのめされて
ただ悲しくて寂しくて仕方ない
大いなる喪失感

CoyaNote2006005

告白したとたんに僕が好きになった人は
みんな僕の前からいなくなってしまう
好きだという気持ちを表に出すと
嫌われてしまう
一生片想いで後ろ姿を眺めて
ウジウジしていればいいんだよ

CoyaNote2006006

告白したとたんにいなくなってしまう好きな人
みんなみんな僕のことが嫌いなんだ
友達としてなら最低限つきあってもいいけど
恋人なんてとんでもない

CoyaNote2006007

僕は恋をしてはいけない男
一生片想いでなければいけない男
相思相愛になってはいけない男
好きになった人を
不幸にしてしまう男

CoyaNote2006008

近づけば遠ざかる
僕らは相反する者同士
でも互いに引き合うことはない
磁石のようにはいかないね

「友達」という強力な磁界を作り
それ以上近づけないよう
一定の距離が保たれていて
「友達」以上に近づくことはできない

ギリギリの境界線から
じっと見つめてることしかできない
手を伸ばして触れることもできない

CoyaNote2006009

僕の街にも雪が来た
君の街から連れて来た
真っ白な雪

優しさ愛しさもない
冷たく寂しい雪
触れてしまえば手がかじかんでしまう
凍えるこの痛みが
僕に生きる辛さを
教えてくれる

CoyaNote2006010

選択肢が迷いであるうちは駄目だ
どの道を進んでも結局失敗してしまうだろう

選択肢を消去法で決めてるうちは駄目だ
ネガティブなフィルターを通して残ったものは
何の味気も面白味もない
無難な余り物だ

そんなやり方で選択肢を決めていても
選ばなかったもう一方の選択肢に
未練を抱き執着し後悔してしまい
現状を受け入れられず逃げてばかり
決して満足や喜びやましてや幸せなんて
感じられない
自分を哀れむだけの
終わりなく意味のない
不毛な自傷行為

選択肢は可能性でありチャンスでなくてはならない
そしてそれは迷いながら決めたものでも
消去法により残って仕方なく決めさせられたものでもない
自分自身で覚悟して決めたものでなくてはならない
その結果も責任も
全てを受け入れ納得していくだけの覚悟
それができるかどうか

選択肢は自分自身で覚悟して決めるもの
一度決めたら未練も執着も後悔もない
黙ってそれのみに集中する

CoyaNote2006011

与えるだけが愛じゃない
一方的に尽くすだけの
献身的な奉仕だけが愛じゃない

恋人に大切なのは
分かち合うことだ
どちらかが上の立場というもののない
対等な
持ちつ持たれつの
互いに支え合う関係
それが理想の恋人の姿だ

今の君は
ただ与え続けているだけの君では
彼女とは恋人にはなれない
君はそれでいいと思っていても
彼女が君の隷属的な態度を好ましく思っていない
その尽くすだけの
献身的な奉仕をするだけの姿が
彼女には不満なのだろう

だから君が
もし彼女と恋人になりたいと願うなら
今すぐにその態度を改めるべきだ
極端なへりくだりは卑屈なだけだ
対等な立場でなければ
恋人にはなれない

とりあえずはじめの一歩として
彼女に過剰な敬語を使うのをやめよう
彼女のことをいくら尊敬していても
いや尊敬しているからこそ
対等な立場としての言葉遣いで接しよう

それから

彼女の意見にうなずき賛同するだけの
イエスマンも
彼女の言う通りに動く
マリオネットも
ましてや彼女を一時的に喜ばせるためだけの
お道化たピエロも
一切やめよう
これらの役を演じることが
彼女のためだと思っているかもしれないが
それは違う
彼女はそんな役を演じる君ではなく
素顔の君を見たがっているはずだ
自分の意見についてどう思うのか
率直に述べてくれる君を
自分の意思で行動する自我を持った君を
そしてお道化るだけで現実から目をそらすことなく
どんな辛く厳しい現実でも直視し考え立ち向かっていく
真剣な大人の君を
彼女は待っている

イエスマンでマリオネットでピエロの今の君は
自我を持たないただのガキだ
彼女は大人だから
ガキとは恋人になれないのだ
君が今すぐ大人になる必要がある

恋人とは
与えて一方的に尽くして献身的に奉仕するだけの
君主ではない
しっかりとした自我を持った二人が
お互いを尊重し
時にはゆずらずに主張し時には大幅に譲歩し
対等な立場で
与えるだけでも与えられるだけでもない
分かち合うこと
適度な距離を保ちながら
共に歩く二人のことである

さあ今すぐに
大人になりなさい
そして彼女と恋人になりなさい
これまでの彼女に対する接し方をやめて
対等な立場で
自我を持って彼女と話をしなさい
同い年の彼女となら
たやすくそれはできるはずだ
ためらいも遠慮も
威張ることや横柄さもない二人

CoyaNote2006012

常に腰を低くして
お辞儀し会釈し
あいさつを交わし
きちんとしたコミュニケーション
大人は難しい
大人は大変だ

CoyaNote2006013

企画書を持って
取引先への道を急ぐ
うまく契約に持っていけるか
交渉し一応の了承を得る
たとえそれが保留を含むものだとしても
帰り道はとてもすっきりした気分
足どりも軽やか
一枚の紙片である企画書が
これほどまでに重いとはね

CoyaNote2006014

一つのことに専念するのは
子供のやること
大人は複数のことを
抱え込んで
それを同時に進めて
一つ一つに適切な判断を下し
対処して
やりこなしていかなければならない

CoyaNote2006015

行動は早めに
少し待って慎重に

一体どうすればいいんだ

早めに行動すれば
早とちりになってしまうし
少し待っていたら
怠慢になってしまう

CoyaNote2006016

本当何やってるんだよ
人間のクズが
生きる資格もないね

CoyaNote2006017

ねえ「幸せの意味」は
言語学者が決めるものでも
哲学者や宗教家が決めるものでもない
君が決めるものだよ

CoyaNote2006018

使い古された日々

CoyaNote2006019

永遠の片想い
告白してしまえば
二度と会えなくなってしまうから
心の中にずっと留めておく感情
踏み出すことも近づくことも触れることも
できない
その場でずっと足踏みをくり返すだけ

CoyaNote2006020

しわがれた声で叫ぶ時
エコーのかかった声の向こうに
もう一人の自分の姿を見た
現実の僕とは全く別の
自由な存在としての人格

白い環

僕の右手にぐるぐると
円を描いて絡みつく
始まりも終わりもない 白い環
弾力性を持ち合わせ
ラバーの感触腕になじむ
着脱可能な伸縮自在の 白い環

アクセサリーでもない ファッションでもない
なにかの意志を示すサインでもない
流行でもない 実用的でもない

それでも僕はなぜだか
いつもいつでもはめている 白い環

もはや身体の一部
新たに加えられた人体の名称 白い環

身体に非対称性を与えることで
ある種の美を生み出すつもりか 白い環

はめている理由はないが
はずす理由もさして見当たらない 白い環

それでもいつかは
この白い環をはずす日が来るだろう

その時は迷いや戸惑いや焦燥感も一緒に脱ぎ捨てた
全く新しい右腕になっているだろう

CoyaNote2006021

疑いもしなかった僕の道に
今揺さぶりをかける大きな衝動
少しずつ崩れていく自信や希望
明るみになっていく無力な自分
残されたものは
結局何もすることのできない僕

CoyaNote2006022

月明かりに照らされて
文字を一つ一つしたためる
漆黒の夜の
どっぷりとしたインクをペン先にくっつけて
一つ一つ

CoyaNote2006023

眠れないくらい興奮するよ日曜日 眠くて憂鬱 冷めてしまうよ月曜日
Red HotなSunday Cool BlueなMonday
今日が終わってしまったら
熱が冷めてしまうなんて

CoyaNote2006024

僕の名前を呼ぶ者はいない
僕は肩書で呼ばれる
僕は役職で呼ばれる

すなわち僕という存在価値は
肩書や役職
機能としてでしかありえず
自分の意志を持ち
自分の考えで行動する
血の通った生身の人間としては
認められていない

僕は人間として生きているよりも
機能として作用しなければならない
目的のためだけの利害関係
用が済んだら全く不要となり
それ以上の接触は一切なくなる

それはある意味でやりやすいのでは
たとえ機能としてでさえも
そこに存在価値を見出すことができれば
とりあえず明日が来ることに意味ができる
確固たる自己も自我も持ちえていない僕にとって
肩書や役職だけが
自分を語る唯一のものとなる

それとしか認識されていないことに
絶望なんてしてはならないんだよ

CoyaNote2006025

僕のこんなものでよければ
いつでもいくつでも君にあげるよ

主導権は僕が持っていいのかい
優柔不断だから
上手くいくか分からないけど

急いでない 少し時間がかかりそうだけど
君が教えてくれた未来の読み方
ぎこちなく指でなぞってみるよ

形をキレイにそろえるよ
ふぞろないなままじゃほら
まるで今までの僕のようだ
君の小さな手が
握れるちょうどよい大きさに

僕の行動が君にとって少しでも
役に立つものならば
それはそれで僕にとって嬉しいことだから
今日の僕はどうだったろう

「ありがとう」の言葉が
なんでだろうこんなに嬉しいなんて

CoyaNote2006026

つまりは午後9時から1時間
ベンチに座って
「誰か僕を愛して下さい」と
プラカードを持って待ち続けること

CoyaNote2006027

絶対破れると分かっていても
僕はその糊をはがさずにはいられない
全てのものを美しく完璧な姿で
求めてしまう
多少の傷や欠点を許せるほど
妥協できるほど
心が大きくない

CoyaNote2006028

指に付着した赤が
血ならなめてしまおう
絵の具ならキャンバスに塗りたくろう
ケチャップならオムレツをつくろう

CoyaNote2006029

散らかす人がいれば
片付ける人がいる
汚す人がいれば
キレイにする人がいる

世の中はそうやってバランスを保ってる

残念ながら僕は
散らかす人でも汚す人でもない
一生そんな役は回ってこない
いつもいつも損ばかりしている

CoyaNote2006030

描きたいものはたくさんある
でもそれに伴うさまざまな困難や
いろいろな痛みを受け入れるだけの
覚悟も実力も今の僕にはない

CoyaNote2006031

失敗から学べばいいんだよ

CoyaNote2006032

ちょっとくらい悲しいことがあったって
泣いたりわめいたり悩んだりしてちゃだめさ

ちょっとくらい嬉しいことがあったって
叫んだり浮かれたりはしゃいだりしてちゃだめさ

立ち直れないくらい悲しいことがあったって
泣いたりわめいたり悩んだりしてちゃだめさ

飛び上がるくらい嬉しいことがあったって
叫んだり浮かれたりはしゃいだりしてちゃだめさ

時間が全て洗い流してくれる
悲しみも喜びも
あれほどまでに激しく濃厚だった感情も
いつかなにもなかったかのように
うすらいでいってしまうものだよ

CoyaNote2006033

僕は君のカウンセラー
傷つき弱り果てた君の心を
癒して治してあげることだけが
僕の仕事

じっくりと話を聞いて
それに対して一つ一つ返答をして
前向きな一つの結論と
解決策を提示して
君が元気を取り戻して
無事に社会復帰できたら
僕の仕事はそこで終わり

傷つき弱り果てたら
癒し治してあげる
それだけの関係
それ以上のものは
何も望んではいけない
何も求めてはいけない

カウンセラーが「患者」に対して
恋愛感情を抱くのは
許されないことである
僕と君とはいつまでも
カウンセラーと「患者」という関係でなければ
いけなかった
それなのに僕はそれ以上のものを
望んでしまった 求めてしまった
君を愛してしまった
恋人という関係になりたいと思ってしまった

カウンセラーとしてのタブーを犯してしまった僕は
罰として
一生君に会えなくなってしまった
もう僕は二度と君に会うことは許されない
全ては僕が悪い

CoyaNote2006034

とりあえず描こう
まずは手を動かそう

そこから始まることがある
分かるものもあるだろう

あれこれ うだうだ 悩んでないで
頭で考えていたことなんて
実際にそうであったためしがない

頭で考えていた想像力は
手で描かれる創造力を超えられない

CoyaNote2006035

どうしよう 絶望しか浮かんでこない
考えれば考えるほど
思いつめれば思いつめるほど
悩みは深く深みに沈み込んでいってしまう

立ち直るには相当の力が必要だ
時間も労力もかかる
今のところ希望の光は見えてこない

CoyaNote2006036

君の心の中に小さな種を蒔いた
果たしてそれが芽を出すか
そして見事に花を咲かすことができるのか
水も栄養分も僕の方からは与えることはできない
この状況では
それはとても難しいことで
ほとんど不可能と言ってもよいだろう
残念ながら

CoyaNote2006037

優しさの種一粒蒔いて芽を待とう
君の心に恋の花は咲くだろうか

でもきっと小さな根や茎は断ち切られてしまうのだろう

CoyaNote2006038

時間が全て忘れさせてくれる
どれだけ沸騰し煮えたぎっていたコーヒーも
冷たい風にさらされれば
やがて熱が冷めていってしまうように

あれほどまでの愛情が恋心が
その反動でおぞましいまでの憎しみと恨みに変わった
そうならないためにも忘れるのが一番である

CoyaNote2006039

自分一人では何もできない
頭の片隅で思い描いている
こうしたいああしたいといった
ちっぽけな願望を
実行に移すことができない
いつも他人に相談をして
話をするだけして
アドヴァイスをもらっても
一つ一つそれを否定して
迷い続ける
決断をすることは決してない
決断をすることが怖い
失敗をした時のショックに耐えられない

指示を命令を与えて
僕をどこかへ導いてほしい

CoyaNote2006040

描けない
何も描けない
もう駄目だ
もう何を描いても
心に響いてこない
もはやどうにもならなくなってしまったのか
だめだだめだ
もうだめだ

働き盛り

企業戦士は笑う
少しの苦みを含ませて

企業戦士は朝早く起きる
昨日の疲れを負傷した体を
強引な力で無理矢理に動かす
冷たい水で顔を洗えばとりあえず
意識だけは覚醒する

企業戦士は下着を着る
白い無味乾燥としたTシャツ
肌に直接触れるものだから
品質にはとりわけこだわる
激しい戦闘中にかく汗をすぐに吸収し
作業に支障をきたさないようにする
そして痛めつけるような切りつけるような
残酷な上司の仕打ちから
体を守る防弾チョッキとなる

企業戦士はワイシャツを着る
白い無味乾燥としたワイシャツには
カミソリのように鋭い切れ味の襟がついている
首を絞めて窒息させようと苦しめる世間の手を
攻撃するため
ワイシャツの襟は防御と攻撃双方の役割を担う
とても重要な武器
そのため日頃からメンテナンスが不可欠
シワひとつも許されない
常にピンと張ったのりのきいた状態が求められる

企業戦士はスラックスをはく
黒い烏のようなスラックス
つやもてりも輝きもない
ただ暗いだけの二本の脚
戦場を駆け回るために
脚の負担を最小限にとどめる
もちろん外部の攻撃から
下半身を守ることも重要
ポケットの中に一つハンカチに見せかけた
隠し凶器をしのばせておく

企業戦士はベルトを締める
日頃のストレスがつまって
パンパンに膨れた腹を引き締めるため
腹部から込み上げてくる
やり場のない不満や愚痴や怒りや悲しみを
押さえつけ弾圧するため
窮場をしのぎきるだけの
底力を出すため
多少無理をしなければならない時は
さらにベルトを締める
キリキリと腹を圧迫するための革の帯
苦しさを紛らわせるために
無理をする
痛みで苦しみを忘れさせる
精神的な鎮痛剤
彼を縛る
契約という名のベルト
責任という名のベルト
逃げることはできない

企業戦士はネクタイを締める
会社に飼われているイヌの証
首輪とリードで彼はどこにも行けない
自分の意志とは関係なく
上司の思うがままに動かされ
振り回される
抵抗しようと足を踏ん張れば
自然に首が絞められて自分が苦しむことになる
抵抗や反逆には死を
しかも自分で自分を苦しめるという
合理的なシステムで
無駄なコストをかけずに
不要な使えない道具を切り捨てるやり方

ネクタイを外すことは
飼い犬をやめること
すなわち野良犬になることだ
野良犬の生活は厳しい
食べる物も確保できず
寝る場所すらない
心が休まる時間などない
最低限安定した生活を送りたければ
ネクタイを締めるしかない
飼い慣らされるしかない

企業戦士はジャケットを羽織る
スラックスと同色の烏のように黒い色
暗闇に紛れ隠密行動をするための
保護色
そして名刺や携帯電話やスケジュール帳やボールペンや
あるいは各種サプリメントなどのメディカルフードを
ポケットに装備する
これこそが企業戦士の主な武器
手にとって戦う
やるかやられるか 弱肉強食の世界
かすり傷や打撲なんて気にしていられない
流れ出る血をぬぐうヒマもない
朝早くから夜遅くまで
馬車馬のように猛烈に働かなければならない
戦わなければならない
今が働き盛りの企業戦士
ジャケットは暑さや寒さ雨や風などから
身を守る防御服
特に冬の厳しい寒さには
トレンチコートをその上から羽織る
完全武装の企業戦士

企業戦士は腕時計をはめる
時間の鎖につながれた手錠
作戦本部と企業戦士をつなぐ通信機器
連絡が来たら、すぐに応答しなければならない
一分、一秒の遅刻ですら許されない
常に予定時刻を意識しなければならない
遅刻には厳重な罰が下される
肉体的には仕事量の増加
精神的には残業の強制
金銭的には減給
ありとあらゆる負担で圧力で強迫観念で
企業戦士をキリキリと締めつける
カチカチという硬質で正確な針音は
企業戦士に機械と化すことをせかすアラーム

企業戦士は眼鏡をかける
黒い縁の度の強い眼鏡
視界をはっきりさせ敵との距離を測り
敵のデーターをはじき出すスコープ
煙幕や毒ガスなどの気体から
眼を守る保護グラス
そして働くのに必要な視覚情報以外を
見させないようにするための目隠し
眼鏡に映る風景は
上司によって都合よく編集され捏造された
偽りのシーン
戦闘意欲を削ぐような有毒な情報を
全てカットするフィルター
眼鏡を外してみても
視力が悪くてぼんやりとしてしまう
本当の世界をはっきりと見ることはもうできない
もはや眼鏡なしでは戦えない働けない生きていけない

企業戦士は革靴を履く
戦地を駆け回るための
しっかりと踏みしめるためのワークブーツ
長時間走り続けても
足が疲れないようなデザイン
トラばさみなどの数々のトラップから
足を守るための安全靴
そして時には
敵を蹴り飛ばし踏みつけて
攻撃力を強めるための凶器となる

企業戦士はブリーフケースを持つ
ジャケットのポケットに入りきらない大きい武器や
壊れやすく重要な武器を入れるための鞄
特に書類は命よりも重要な武器
この紙きれ一枚のために
企業戦士の人生は振り回される
この紙きれ一枚のために
企業戦士は命を削って働く戦う
そして時にブリーフケースは
敵からの攻撃から身を守るための楯ともなる

企業戦士は電車に乗る
作戦本部に行くのにも
敵地へ乗り込むのにも
満員電車でいつも座れやしない
ギュウギュウに押されつめ込まれた車内で
身動きもとれず足元もフラフラとしながら
なんとか自我を保つように吊り革に必死にしがみつき
情けなく無様な体勢のまま
次の駅で乗客が降りるのをジッと耐え
しかし次の駅でさらに乗客が増え
さらなる圧力が腹部を中心に
企業戦士を締めあげる
もはや息も絶え絶えで
窒息寸前までなって
すんでのところで電車を降りる
というよりも吐き出されるように
ポイ捨てされるように車外へ放り出される

ようやく作戦本部に辿り着いた企業戦士は
これから始まる苦しいだけの仕事に
憂鬱な気分になりながら
重い足どりで階段を一歩一歩上り
そして扉の前で
一度大きく深呼吸いやため息をつき
今日もなんとかがんばろうと
出っぱった腹に力を入れ
空元気を出し
気合を入れて
作戦本部の扉を開ける

中に入ると企業戦士は
マニュアル通りのあいさつをする
たいていは無視されるのだが
それでもあいさつをせずにはいられない
それがここでのルールだから

次に企業戦士は
タイムカードをガチャンと押して
自分のアリバイを記録する
これだけが自分が怠惰なく働いていることを
証明できる唯一のもの
働き始めの頃は
何度もミスをしては
その度に上司に怒られ
厳罰を受けていた
働き盛りの今となっては
そのようなミスは犯さない
同じ轍は踏まない
失敗から学ぶ
企業戦士が身につけた数少ないスキル
そしてもう一つコピーのとり方
これも最初は分からないことだらけだったが
今では手慣れたもの
拡大、縮小から両面、分割、集約
小冊子作成まで
まるで自分の手のように使いこなせる

企業戦士は働く
賃金が発生する仕事にはやる気が出る
それほど苦痛には感じない
それほど長くも感じない
それなりの達成感や充実感すらある
問題はその後に手をこまねいて待っている
賃金の発生しない仕事
すなわちサービス残業だ
これは苦しくて辛いだけの作業だ
これがあるから労働が憂鬱になる
働くことに絶望を感じてしまう
しかもこのサービス残業は
通常の業務と同じくらいの時間がかかる
しかし賃金は出ない
そのおかげで企業戦士の時給は
規定の半分になってしまう

サービス残業は別に義務ではない
勤務条件や契約に入っているわけではない
だからやらなくてもよい
時間が来たらさっさと帰ってもよい
だが現実はそうもいかない
周りの人がまだ仕事をしているのに
自分だけが帰るわけにもいかない
そういうことを許さない空気が
この作戦本部の中には充満している
そして何より
サービス残業をしなければ終わらないほど
企業戦士にはたくさんの仕事が押しつけられている
要領が悪く不器用な企業戦士は
時間内で仕事を終えられず
その結果としていつも残って働かなければならないのだ
パソコンの前に座り
ジッとモニターをにらみながら
いつまでも完成しない書類に苦しめられる
キーボードを打つ度に
激痛が指先に走る
指先の骨が削れていく音がする
腰を痛め肩がこり喉が渇き
全身を疲れが襲ってもまだ終わらない
日付が変わる頃になってようやく
帰ることが許される

そして終電に乗るために
バタバタと急ぎ足で駅に向かう
帰りの電車の中では
まるで打ちのめされたボクサーのように
ぐったりとしながらガタゴトと揺れる
今日一日の仕事がやっと終わったちっぽけな喜びと
また明日も朝早く起きなければならない苦痛で
胃がキリキリと痛む
途中の駅で乗り換える
今度は深い深い地下鉄に乗らなければならないので
またドタドタと急ぎ足で走る
地下の深く深くへ
まるで落ちていくように深く潜る
この電車に間に合わなければ
次の電車まで二十分も待たなければならない
一刻でも早く帰りたい気持ちで
疲れた体にムチを打って
息を切らしながら急ぐ
何とか間に合ったり 時にはなかったりして
企業戦士はやっと家に帰る
時刻はもう深夜一時
疲れの染み込んだ体を引きずって
布団の上に倒れ込む
あらゆる思考を停止して
とにかく疲労回復にだけ集中する
しかしストレスでなかなか眠れない
早く眠らなければならないと焦れば焦るほど
苦しくなる
ギュッと固くつむっていた眼がだんだん痛くなってくる

企業戦士は今日も働く
絶望感に打ちひしがれて
何らの喜びも見出せないまま
企業戦士は今が働き盛り
多少の無理ならなんとかできる
今が働き盛り

2007年

CoyaNote2007001

世界中の罪や苦労は
全部僕に押しつけて
あなたはどうか幸せになって下さい

僕のことなんて気にしてくれなくて結構です

所詮住む世界が違ったのです
出会うべくもない二人だったのです

異国の人同士だったんですよ

僕なんて存在と関わってもろくなことがない
損をするだけですよ

あなたはどうか大空をはばたいていって下さい
僕はどん底の深くまで落ちていくだけです

CoyaNote2007002

インクの色をまた変えた
今度は黒からブルーブラックという色に
しかし正直青との違いがいまひとつ明確でない
なんとも微妙な色である

そんなことはどうでもよい
現状を認識しよう

このノートを書き始めたのは2004年12月
そして今は2007年2月
2年以上の時間が経っている
大学時代の日々を書き連ねるはずが
その中心となる2、3年生の時期のものが
すっぽりと抜けている
決して書くべきことがなかったわけではない
数多くのことがあって
今なんかよりずっとだ
それでもそんな貴重な二度とない日々を
書く事を怠った
そのおかげでいっこうにページが進まない
いつになったらノートが終わるというのだろう

もう書けなくなってしまったのだろうか
もう思うこと感じるものがなくなってしまったのだろうか
それならそれで諦めがつく
しかしそうでもない
つまり一番中途半端なのだ
諦めるなら諦める
続けるなら続ける
どちらか決めもせず
なにもしないまま
ただ時間だけを
無為にしてしまっている

こんなことでいいはずがない
どっちかに決めろ
中途半端が一番悪い
なにもしないのが一番悪い

書き始めたのだから
せめてこのノートだけでも
最後まで終わらせろ

どうせこのままダラダラと続けていても
ろくなことがないんだから
いっそうやめてしまえ

本当になにをやっているのだ
自分でも分からない
無気力 無感動
からっぽなのだ
空しいだけなのだ

この状態を脱するのはとても難しい

しかし現状を打破しないことには
先に進めない

CoyaNote2007003

もふもふ
もさもさ
びろ~ん
ぷかぷか
ぱこぱこ
かぱぁ~
ぱくぱく
むしゃむしゃ
ぺろ~

もふもふの天使
もふもふ~ もふもふ~
もふもふもふもふ~
もふもふ~ もふもふ~
もふもふ 毛布みたいなぬくもり
もさもさ~
もさもさ ふさふさ~
ふさふさふさわしい

ぱこぱこ~ ぱこぱこ~
貝を小石でぱこぱこぱかぁ
ぱくぱく~ むしゃむしゃ
ぱくぱくむしゃむしゃ武者震い

ぷかぷか~ ぷかぷか~
水の上をぷかぷか~

びろびろ~
びろびろ~
びろびろ~ お腹の皮がびろ~ん
びろびろビロードみたいにびろ~ん
もふもふ~ もふもふ~
もふもふもふもふ~

CoyaNote2007004

形が整えられ大きさのそろった紙の束に
美を見出して下さい

美を学ぶ者が美にこだわらなくてどうします
美を追究する者が形にこだわらなくてどうします

CoyaNote2007005

声を大にして叫びたいこともあるのに
決して吐き出さず
無理矢理喉の奥に押し込める
腹の中で膨れ上がった不満は
胃をキリキリと締めつけ
最終的にガンとなり
全身を蝕む

CoyaNote2007006

何をしている 何をしている
何がしたい 何がしたい
どうしようもない どうしようもない

ため息 ため息

CoyaNote2007007

ウジ虫よ
そんなに彼女に会いたいか
なら会わせてやるよ
夢の中でな
ほらどうだ
これで満足か
理想的な状況で設定してやったんだ
求めるものは全てあるだろう
所詮夢の中だけどな
いくら夢の中で願いが叶っても
それは現実のものではない
空虚な出来事だ

ウジ虫にはこれくらいで十分だ
現実で願いが叶うなんて
厚かましい
おこがましい
ぜいたくすぎる
ワガママすぎる
夢の中で我慢しろ
所詮ウジ虫なんだから

ウジ虫に幸せは不要
生きる希望も活力も失くして
毎日を無駄に過ごして
日々呼吸をするだけの
ウジ虫なのだから
生きている意味がないよ
消えてしまえ
ウジ虫は嫌いだ

CoyaNote2007008

活きていない
呼吸をするだけの生命体
もはや人間ではない
下等生物
生命を維持するための
最低限の栄養だけを摂取して
あとはただひたすら
眠るだけ
なんのために生まれてきたのか
その理由を考えることもなし
ただ貴重な二度と戻らない日々を
残酷に殺していくだけ

CoyaNote2007009

これじゃ生きている意味がないよ
なんでだか自分でもよくその理由が分からない
でも少しだけ言えることは
粘っこい不安が僕の体にまとわりついていて
それが僕を動かなくさせているのではないかと思う
残念ながらその不安は
簡単に拭いとれるものではなく
むしろその不安に正面から立ち向かい
悪戦苦闘して乗り越え克服しない限り
決して消えない
今の僕にその不安と闘う力はない
もう独りきりでは立ち上がることすら
できなくなってしまった

CoyaNote2007010

骨折をした
痛みは自覚をしていた
きっと骨に異常があるだろうと
実際に骨折と診断されて
やはりというか恐れていもたものが
明るみになってしまった感じで
もうため息しか出てこない

絶望のどん底につき落されても
さらにその下があるのではないかと
常にマイナス思考になってしまう
哀れな男

CoyaNote2007011

感傷に浸っている暇もない
さっさと次に進もう

CoyaNote2007012

かわいそうでしょ この生命体
そう思うならぜひもっと憐れみをかけてやって下さい

いやそんなものは必要ありませんよ

この物体に憐れみなんて必要ありません

誰にも何も告げずに
一人ぼっちで
孤独に

CoyaNote2007013

全身をけだるさが襲う
脳はまだぼんやりとしていて
はっきりと作動していない
目の焦点は合わず
チカチカと点滅を繰り返している

上半身は殻から出ている
しかし下半身はまだ殻の中
しっかりと根をはっていて
動こうとはしない

偽善的で空虚なことは分かっていても
それでもなお殻の中は温かい
この中からぬけ出すことはとても難しい

やがてまたダウンしてしまう

後悔し自己嫌悪に陥ることがわかっていても
それでもなお眠りの中に逃げてしまう
嫌な現実を一瞬でも忘れるため

病名は何だ
鬱病かそれとも

カワイソウナヒト

骨折をした
左足の甲の骨にヒビが入った
体重をかけると筋肉が引き裂かれるような
鋭い痛みが走る

あの日弥生の月が幕を開けた朝
早起きをして初めて訪れる見慣れぬ町を歩き
一回帰宅した時にはなんでもなかった
夜もう一回外出しようと
家を出て階段を下りた時
左足に鋭い痛みを感じた
ねっとりとした嫌な痛みだった

その夜終電を逃して歩いて帰る時には
痛みは更に増していった
歩くたびに左足に規則的な痛みが走る
完全に左足を引きずるような歩き方になってしまった
安物のできそこないの壊れた人形みたいな歩き方

ちょっと足をひねっただけだろうと
軽く考えていたのに
2日経っても痛みは消えず
むしろ日に日に大きくなっていった

5日目に医者に行くと
とてもあっさりと簡潔に骨折と診断された
医者は冷静に分析をした
しかしこちらはまるで死刑宣告をされたようなショックだった

まるで流れ作業のような手慣れた事務手続きの後
松葉杖が支給された
まるっきり負傷者に成りきってしまった
初めての松葉杖に扱いが慣れず
何度もバランスを崩し倒れそうになった
ちょっと歩くだけですぐ息があがってしまう
病院から家までの道のりが
狂いそうなほど長く感じられた
途中から嵐になった
まるでこれからの運命を予告するように

それから治療の日々が始まった
患部に湿布を貼って
骨がくっつくのをひたすら待つだけの日々
マイナスからゼロへ戻るために犠牲にする時間
何もできない ひたすら時間が流れるのを
見送ることしかできない

左足を地面につくことができないから
全ての負担は右足が背負うこととなった
室内はひょこひょこと片足をついて
まるでヒキガエルみたいに飛びはねて移動する
そして頭を思い切り強くぶつけた
頭を抱えて悶絶し
しばらく動けなかった
哀れで惨めで悲しくて
何をやっているのだろう

寝ている時も急に左足が痛み出すことがあった
骨がピリピリと痛み
それはある種かゆみのような不快さで
そのまま筋肉を切り裂くような感じだった

殆ど家に引き籠もっているから
外見がどうでもよくなってきた
毎日同じ汚くてダサいジャージを着続けた
ヒゲも剃らなくなり
髪はボサボサで
鏡を見るたびに画面に映る男の
あまりものみすぼらしさに
自嘲的な笑いが出た
そして唾を吐きかけて殴りたくなった
最後には悲しくなった

なんて貧相で
精気を失った
死んだような目をしているんだ

一度だけどうしても行かなくてはならない
用があって
仕方なしに遠出した
松葉杖で歩道を歩き
駅で切符を買って電車に乗るのは
本当に大変だった
体力がないからすぐに息切れしてしまう
腕の力でこのデブで太った醜い体を
前へ押し進めて行かなければならなかった
ドシンドシンというぐずでのろまな歩みで
翌日両腕が筋肉痛になった

ガシャンガシャンと派手な金属音を立てて
一定のリズムで松葉杖をついて歩く
まるでオールを漕ぐように
肉体というボートを目的地へ運ぶ
二又の鉄をタイミングよく動かさないと
上手に前へは進めない
歩くという原始的な動作が
これほどまでに困難だったこともない
ぎこちない足取りで
決まった動作をただ繰り返すだけで
まるでロボットみたいだ

そのままロボットにでもなってしまえばよかったんだ
自分の思想や信条や意志や
ましてや価値観なんて一切持たずに
ただ相手の意見を鵜呑みして
頷くだけのイエスマンになってしまえ
自分のくだらない価値観なんて
全て捨ててしまえたらよかったのに
相手の言う通りに行動し
相手の思うがままに操られる
まるでデータをインプットするみたいに
相手の価値観をそっくりそのまま受け入れることができたなら

ロボットニンゲンニアイノテヲ

時々もう二度と両足で歩けなくなるんじゃないかという恐怖を感じることもあった
ずっと片足で歩き続ける
左足は動かず右足だけ動いて
その結果左足を軸にして
グルグルと円を描くだけ
その場から一歩も動けず
永遠に足踏みを繰り返す

まるで現状そのもの

松葉杖がとれてからも
しばらくは左足をつくことが
恐くてできなかった
またあの痛みが走るのではないかと恐れて
足首に力が入って
なんともぎこちない歩き方をしてしまった
松葉杖をついている間に
両足での歩き方を忘れてしまった

しばらく歩いているうちに
ようやく元の歩き方を思い出した
もう足の痛みはない
両足で地面を踏みしめて
しっかりと歩くことができる
今までとはスピードが格段に違う

両足でしっかりと歩けるということが
健康であるということが
どれほど大切かということが
文字通り骨身に染みてヒビが入るくらい
痛感した
健康は本当に大切である
これからは気をつけよう

臨時ニュース―1年振りに彼女に会った―

番組の途中ですがここで臨時ニュースをお伝えします

松葉杖をついて用を済ませるために
仕方なしに外出した
心臓破りの坂を登っていると
それらしき人を見かけた
まさかと思っていたがもう一度よく見ると
やはり彼女だった
松葉杖をついているということを利用して
追いぬかれて
後姿を見つめるようにした

1年振りだというのにまるっきり変わっていない
そのやり方 その逃げ腰
自分の方から声をかけることなどできない臆病さ

そのままやり過ごそうとしたら
彼女の方から声をかけてきた
こっちはまるで気がついていなかったかのような
ぎこちない仕草で反応した

1年振りに会う彼女は
あまり変わっていないようだった
一時期は茶髪にしていたこともあったが
今は就職活動中なのか
元の黒い髪に戻っていた
そう 初めて会って好きになった時のように
髪を分けて
少し高い鼻と白い素肌で
まるで人形のようにすました顔をしていた

「久し振りだね 足どうしたの 大丈夫?」
「骨折」
「元気ないね」
「足を怪我してるんだから元気はないよ」
彼女はまるで変わらない口ぶりで言ってくる
こっちも相変わらずのそっけない態度をとる

ものの一分も満たない短いやりとりの後
彼女は人混みの中に紛れてしまった
彼女に言いたいことはたくさんあった
久し振りに会えたのだ
彼女に近づく絶好のチャンスだった
そのためのカードも持ち合わせていた
なにより彼女の方から声をかけてきたのだ
それが松葉杖をついていかにも怪我人ふうにしていることへの
憐れみであったとしても
少しでも見込みはあると思うことはできた
1年振りに会う彼女は
初めて会って好きになった時と同じように
相変わらず可愛かった

それなのに近づこうとはしなかった
いくらでもできたのに
自分から逃げるようにそのチャンスを放棄してしまった
もう彼女のことは好きではないのか
かつてあれほどまでに好きになって
恋に苦しんだほどの彼女が
もうどうでもよくなってしまったのか
時間の流れは残酷でどんなに激しい感情でも
まるでなにもなかったかのように洗い流してしまう

後で彼女を追いかけた時には当然ながらもういなかった

弥生の月は骨折で殆どを無為にしてしまった
あまりにも単調で無意味で
悲しくなるような時間の浪費
自分は一体何をやっているのだろうと何度も苦悩した
もう二度と戻らない
取り返しのつかない貴重な時間を
どうしてこうも簡単に失くしてしまうのだろう
なんでこんな時期に骨折なんてしまったんだ
本当に疲れた

CoyaNote2007014

どうもさっきから
足の裏が汚れているような気がするのだが
砂埃がついてジャリジャリしている
きっと気のせいだよね
ちょっと潔癖症すぎるよ
あまり神経質になるなよ
少しくらい汚れている方が
丁度よいことだってあるよ
所詮ずっと清潔なままを
保っておくことなんて
不可能に近いことなんだから

CoyaNote2007015

人間のクズのレントゲン写真
針金みたいにだらしない骨が
情けなく写っている
肉や繊維でいくら外見だけ繕っても
結局は見透かされてしまう

なんて貧相な骨なんだ

寂しい

寂しい 寂しい 君がいなくて寂しい
君に会えなくて寂しい

たとえそれが偶然で奇跡的なことであったとしても
君と僕が同じ組織に属していたということは
変わりのない事実なんだし
その中で過ごした時間は
一年という短いものだったけど
とても楽しかった

でも

ある日突然君はいなくなって
そして別の組織へと移ってしまった
僕が君と会える機会は悉くなくなった
それを客観的視点で判断すれば
君は僕から逃げたということになるだろう
僕なんて存在に嫌気がさしたんだ

寂しい 寂しい
君が別の組織の中で
僕がいた時よりもはるかに楽しんでいるのを
まざまざと見せつけられて寂しい
君が楽しんでいる時間の中に
僕がいられなくて寂しい
それは仕方ないことだけど
なにをするのも君の自由だし
僕にはそれをどうすることもできないけど
君が僕といた時には見せなかったような
大胆で意外な一面を
別の組織の中で見せていて寂しい
僕といる時はきっとつまらなかったのだろう
勝手に一人だけ楽しんでいた自分が寂しい

寂しい 寂しい
君がもう僕のことを忘れてしまっていて寂しい
君が僕なんて存在と関わってしまったことをすごく後悔していて寂しい
君にとって僕は消してしまいたい過去となっていて寂しい

寂しい 寂しい
君があまりにも変わってしまって寂しい
僕といた時はそんなんじゃなかったのに
別の組織に移ったとたんに
大きく変わりまるで生き生きと輝いて
人生そのものを楽しんでいるようだ

寂しい 寂しい
君はぜひともその組織の中で
大いに楽しんでくれ
僕はその姿を見て
一人で勝手に寂しがっているだけの
救いようのない男だから
気にしないで 寂しい 寂しい

悪いけれど何も起こらないよ

悪いけれど何も起こらないよ
何かが起こるような予感はするけれど
予感だけで終わるよ
決して実現はしないよ

数字の規則性や
繰り返される歴史なんてものに
期待をしてもムダだよ
何かが起こりそうな兆候を
過去を顧みてそれと比較しても
何の意味もないよ
それはただの偶然

そんな予感に希望を抱いて
前向きでいるよりも
最初から全てに絶望して
否定的に悲観的にいる方が
後で傷つくこともないし
余計な期待なんかあっても
何の役にも立たないよ
時間のムダっていうやつだ
非合理的だしね

悪いけれど何も起こらないよ

CoyaNote2007016

わけも分からず石を投げろ
可愛らしいヌイグルミなんて切り刻んでしまえ

とにかく悲しみや寂しさを
隠さずに全てさらけ出して
一つも残さずに味わい尽くして
全身で絶望しろ

CoyaNote2007017

喧騒から遠く離れて
時間の流れの違う片田舎で過ごす
昨年までとは全く異なる
怠惰で欠伸の出そうな日々
もはやあらゆることに興味を失くしている
どうでもいいや
自分には関係ない
もう参加したくない
疲れるし意味がないよ
何が彼をそこまで引き止めていたのだろうか
義務 責任 希望 野心
今となっては考えられないくらいがんばっていた
もういいだろう
これまでのことは区切りをつけてこれでおしまい
新しいステージへ

CoyaNote2007018

ひたすら労働の苦しみだけを味わって
その後に待っている喜びや御褒美には
一切ありつけない
君の痛みは報われない

正しい怒り

世の中はどうしようもない人間で溢れている
自分勝手で我儘で
他人のことなんてお構いなし
自分さえよければそれでいい

相手の気持ちなんて考えず
一方的に自分の言いたいことを
垂れ流し
こちらの言い分なんてまるで聞く耳を持たない

自分の堕落した悦楽のみを貪り
自分の考え方を押しつけるだけ
妥協したり我慢してみたりといった
献身的な自己犠牲の精神なんて
存在しない
少しでも自分の思い通りにならないと
すぐに拗ねて駄々をこねる
そして心の貧しさが透けて見えるような
口汚い言葉で罵声を浴びせる
傍若無人 厚顔無恥

もうそろそろ正しい怒りを示そう
このまま好き勝手にさせておくわけにはいかない
これは決して理不尽なものでも感情的なものでもない
所謂「逆切れ」などという低俗なものとは異なる

傍若無人で厚顔無恥な例を引き合いにして
相対化させて
自分のことを正当化するつもりもない

正しい怒りを示す時なのだ

もうこれからは我慢したり妥協したりする必要はない
黙り込んだまま泣き寝入りなどしてたまるものか

言いたいことははっきりと口にする
強引に呑み込んで腹の中に溜めてはならない
正しい怒りを確かに示す
いつまでも何もしないで受け身のままだと思ったら
大間違いだ

多少強引とも思えるような行動も
時には必要だ
力で捩伏せる

正しい怒りを言葉で行動で示し
導いていく
正しく怒ろう 恐れを捨てて

第7冊ノートを終えて

やっとこのノートを終えることができた。それが今の偽らざる心境だ。本当に時間がかかってしまった。それと同時に、このノートを終えるのにかかった時間の流れを、とても短いものと感じてしまう。

前回のノートを終えたのが2004年12月。まだ10代、大学1年生の初々しい、そして今では考えられないくらい若い自分がいた。最後に書いた「同い年」などは、今読み返すととても同じ人間が書いたものとは思えないほどだ。あまりこの言葉は使いたくないのだが、あの頃は純粋で、まっすぐで、大学生活は明るいものと信じてやまなかった。

そしてこのノートを書き始めたのも、同じく2004年12月。それから時間は2005年、2006年を飛び越えて、今が2007年4月である。大学2年、3年を通過して、もうすぐ4年生の講義が始まってしまう。実に2年5ヶ月もの長い期間を、このノートは過ごしてしまったのである。これはもはや、大学生活の半分以上、いや殆どの期間と言ってよい。それほどまでに長い期間、大学生活の核となるような2年生、3年生の日々を、このノートに書き記すことができなかった。書くことはたくさんあった。それなりにいろいろな経験もした。しかしそれらの日々が、このノートに刻まれることはなかった。大学時代という二度と戻らない、そしてあれほどまでに待ち望んだはずの時代の、貴重な記録は失われてしまったのである。本当に何をやっていたのだろう。大学生活を無駄にしてしまったような、時間を殺してしまったような後ろめたい気持ち、罪悪感、後悔の念でいっぱいである。

純粋でまっすぐな10代最後からスタートしたノートは、ハタチになる前の痛みや苦しみ、恐怖、なってしまった後の焦り、悩みや負の感情が次第に増えていき、愚痴が出て、しまいには精神病のような記述まで書かれ、すっかり疲れ果て、日々に希望を見出せず、脱力感、倦怠感、無気力、無感動な廃人同然の哀れな男としてフィニッシュとなった。今ここにあるのは、残りカスのようなクズである。そういった、希望が絶望へと、高みからどん底へと堕ちていく様が、一つのノートの中で描かれている。ペンの色が青から黒、そしてブルーブラックへと三回も変わったこと、そして大いなる心境の変化からも、それははっきりと見ることができる。

まだまだ書き足らなくて、ついにこちら側にも来てしまった。もはや体裁などどうでもよい。ラインを守らなくて字が大きくなり、そして今までペンと鉛筆だけだった筆記具が、最後の方でとうとうボールペンや筆ペン、サインペン、そしてあろうことか蛍光マーカーまで登場してしまった。もはやノートとしての秩序は完全に崩壊してしまった。あるのは混沌とした、おさえきれないような破壊衝動である。

いずれにしても、このノートはある種のピーク、過渡期だったと言える。これよりもひどいものを、もう作ってはいけない。これよりも長い時間がかかってはいけない。このノートのように、愚痴を書き連ねただけで、何のおもしろみもない言葉を、これからは書いてはならない。書くことはたくさんあるはずだ。それをなんとしても書こうという努力を怠ってはいけない。

本当に時間がかかってしまった。もっと早く、それこそ数ヶ月で終わらせる予定だった。しかし最初の方で何かが狂ってしまった。言葉が思うように出てこなくて、字が大きくなり、そこで破綻してしまい、続けることができなくなってしまったのだ。一度狂い出してしまうと、何もかもが上手くいかなくなる。最初のうちは小さかったつまずきが、段々と大きくなっていき、気付いた時にはもう取り返しがつかない状態になってしまっていた。大学2年、3年生の日々を、最も中心的な日々を、その中でのことを、しっかりと記録できずに、ろくでもないものしか残っていないのが、本当に悔しい。やり直したい、時間を取り返したいと、どうしようもないことばかり思ってしまう。

何度も、このノートは終わらないんじゃないだろうかと思った。それでも、書くことをやめずにいたのは、まだどこかで、ほんの少しだけでも諦めていないからなのだろう。そんなちっぽけで、見えないくらいの小さな気持ちを、なんとか大きくして、「正しい怒り」にしなくてはならない。

本当にノートが終わってよかった。

2007年4月7日 プラス思考でCoya